こだわっとる農

水稲・WCS・サトイモ・ピーマン(屋根掛け、露地)

山都町 下矢部東部に大きく根を張る〝いちょう〟になる

農事組合法人 いちょう

藤川理事、渡辺理事、川上理事、西田理事
小野理事、中畠理事、山村監事、下田組合長

農事組合法人いちょうの発足

山都町は、九州のほぼ中央に位置し、阿蘇南外輪山と標高1,600m以上の山々が連なる九州脊梁山地に囲まれ、希少性の高いブナ、クヌギ等の原生林や、一級河川である緑川と五ヶ瀬川の源流域を有する自然豊かな地域です。その東側に位置する下矢部東部地区は10の集落からなり、30代の兼業農家がいるものの、農業者の平均年齢は66.4歳、専業農家は3~4人程度。 高齢化に比例して耕作放棄地が拡大し、イノシシ、シカによる農作物被害も多発するなど農地の管理や地域の衰退に危機感が高まっていました。どうにかして歯止めをかけたいという強い思いから、下田昭美組合長をはじめ20人の有志が立ち上がり、「地域の農業者・農地の集約」「地域農業の維持」「農地の保全」「集落の活力維持」をビジョンに掲げて、令和3年2月に農事組合法人いちょう(以下、(農)いちょう)が発足しました。この法人の名称とロゴは、同地区の中心に位置する旧下矢部東部小学校にそびえ立つシンボルツリーの銀杏が由来になっています。

下田代表理事組合長

ピーマン栽培を経営の軸に

地域のビジョンを達成するためには、収益性を高め、(農)いちょうが地域に存在し続ける必要があります。そこで、水稲やWCSに加えて、地域にあった高単価作物として、ピーマン、サトイモ、ネギの栽培に取り組むことになりました。
その中心として取り組んでいるのがピーマン栽培。これまで誰もピーマン栽培の経験がない中で、1年目となる昨年は悪戦苦闘の連続。慣れない作業スケジュールに追われ続けた印象で、予定していた収穫量には程遠いものでした。また、これまでの市況で堅調な単価から選択した品目でありながら、近年稀にみる低単価だったことにも悩まされました。
それでも、ピーマン栽培の責任者を任される中畠由博理事を中心にJAのピーマン部会講習会への積極的な参加、農業普及・振興課からの指導を受けながら、改善を着実に行っています。栽培2年目となった今年は、生育も良く事業で導入した屋根掛けハウス16aと露地20aの合計36aを栽培。まだ、収穫シーズン中ながら、既に昨年1年を上回る収穫量と売り上げを計上しています。また、収穫から選果まで地域からの雇用も多く生み出し、集落の活性化にも貢献しています。

中畠理事
ピーマン選果風景

地域おこし協力隊の力を借りて

1番の課題は、人手不足。猫の手を借りたいというのは、中山間に位置する集落営農組織では共通の大きな課題です。そこで活用したのが「地域おこし協力隊」の制度。山都町を通じて法人の運営や栽培管理を担ってくれる人材を募集しました。そこに応募してきたのが、七條史弥さん。福岡県からご家族と一緒に、下矢部東部地区に着任されました。農業を学びたいという本人の熱い想いに加えて、これまで一般企業で働いた経験を法人経営に遺憾なく発揮してくれています。着任半年足らずですが、栽培管理作業のスケジュール調整から農作業に至るまで、積極的なその仕事ぶりは今や(農)いちょうに欠かせない存在であり、もはや専属の従業員そのものです。しかし、山都町役場の嘱託職員である地域おこし協力隊としての任期は最大3年間。任期終了後には正式に従業員として迎え入れるべく法人経営を安定化させるのが目標であり、強いモチベーションとなっています。

七條さん

さまざまなチャレンジ、情報の収集は積極的に!

「農業の担い手」が不足する中で、効率的な営農は法人経営の重要な課題となっています。その解決手段の一つとして、(農)いちょうではスマート農業への関心も高く持っています。中山間地における農地の深刻な作業である畦畔の草刈りについては、ラジコン草刈り機の実演会に参加してその実用性を検討しました。また、水稲についてはドローン防除を取り入れ、法人が所有する水田に限らず、下矢部東部地区で合計7haの防除を地元の業者に委託し、地域の稲作における作業の軽減を実現しました。
また、直接販売や契約販売への営業努力も行っています。米とサトイモは初年度から直接販売の実績を作ることができ、ピーマンについては、今年度から単価を決めた契約販売を始めることができました。なお、体験農園によるピーマン収穫も開始する予定です。

ラジコン草刈機実演会

これからの下矢部東部地区と(農)いちょう

発足当初は、地域の人からも半信半疑だった…と言っても過言ではない(農)いちょうの役割。一年の活動を通して大きく変わりつつあります。それは、8人の役員を中心に地域の農地を守る、新たな挑戦を続ける、といった姿を集落のみなさんが目の当たりにしてきたからに他なりません。「農地を(農)いちょうに預けたい」、「農作業の一部分を(農)いちょうに任せたい」という声が多く上がるようになってきました。下矢部東部にしっかりと根付く“いちょう”になってみせます。

農事組合法人 いちょう

◯主要品目の栽培面積
水稲 50a
WCS 160a
サトイモ 30a
ピーマン 16a(屋根掛け)
〃   20a(露地)

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