着果負担や急激な気温・湿度の変化で株に負担がかかってしまうと、草勢が弱くなり、小さい花や短花柱花(花柱(雌しべ)が雄しべよりも短い状態の花)になりやすくなります(図1)。
草勢をコントロールするには、適切な温度管理や摘葉・摘果が重要です。
ナスの厳寒期の栽培管理について~草勢を落とさないための3つのポイント~
はじめに
宇城地域におけるナス栽培では「PC筑陽」が栽培されています。「PC筑陽」は単為結果性で交配作業が省力化できますが、開花した花はすべて着果肥大し、株に負担がかかります。草勢がおとなしい品種のため、「PC筑陽」の特性に合わせた管理が必要であり、特に厳寒期の栽培管理が重要です。
厳しい冷え込みが訪れる前に、厳寒期の草勢管理についてのポイントをご紹介します。
草勢が落ちてしまうと・・・
ポイント1:気温の維持
ナスの生育適温は22~30℃と比較的高く、17℃以下で生育が鈍り、8℃以下になると茎葉に被害を受けてしまいます。10月中旬頃からハウス保温を開始し、地温が下がる11月中旬頃までにはマルチ被覆を行います。
ハウス内の温度は、午前は28~30℃、午後は25~28℃、夜間は13~14℃を目安に温度管を行いましょう。
厳寒期では、午前中は日の出前からゆるやかな早期加温によって急激な温度上昇を避けましょう。
地温の確保も重要となり、灌水(かんすい)時の水温が17℃以下になると生育障害を及ぼす可能性があるため、特に注意を払いましょう。
ポイント2:草勢コントロール
草勢の強弱を判断するには、図2のようにバランスシートを用いると容易に判断できます。縦軸は開花中の1番花の花房直下の茎周、横軸は1番花の上の1葉(1芽切り戻しの時に残す葉)の葉長とします。
上の方に行くほど草勢が強く、下の方に行くほど弱くなります。また、右に行くほど栄養成長に、左に行くほど生殖成長に傾きます。
特に厳寒期は、できる限り真ん中の範囲(図2の黄色に着色した範囲)に点が収まるよう、バランスの取れた管理を心がけましょう。
◯摘葉
採光のため、古葉や内向きの不要な葉を摘葉しましょう。ただし、過度の摘葉は草勢低下を招きます。1回の摘葉は1枝当たり1~2枚にとどめ、こまめに作業を行うように気を付けましょう。
また、「PC筑陽」は品種特性により小葉であることから、葉面積確保のため摘葉は遅めに行うようにしましょう。
◯摘心
草勢が弱ってからの摘心は側枝の動きが悪くなってしまいます。収量を確保するためにも、摘心は12月末をめどに8~9節程度で早めに行いましょう。
ポイント3:着果負担軽減
「PC筑陽」は単為結果性により着果数が多くなりやすく、草勢の強弱に波ができやすい品種です。着果負担を軽くすることで、草勢維持と可販果収量増加を見込むことができます。
◯1芽取りの徹底
草勢を保ち、収穫量の波が大きくならないようにするため、「1芽取り」を徹底します。
1度に整枝を行うと着果に波ができてしまうので、作業はこまめに行うことが大切です。
1芽取りのやり方は以下の通りです。
①1次側枝の1番花が開花する頃に花の上1葉残し(図3のAの位置)で摘心する。
※小葉の場合は2・3葉残す。
②1番花の直下の脇芽(図3のBの脇芽)をかき取る。
③1番果の収穫の際に下芽(図3のDの芽)を一つ残して切り戻し(図3のCの位置)をする。
◯収穫サイズ
収穫サイズは草勢維持に大きく影響します。特に着果負担がかかりやすい厳寒期は注意しましょう。基本的にはM~L中心に収穫を行い、厳寒期はM中心での収穫に努めましょう。草勢低下時は大きいサイズ(2Lサイズ以上)での収穫は必ず避けましょう。
さいごに
令和4年度は前年度に引き続き、ラニーニャ現象の継続に伴い厳しい冷え込みとなることが予想されます。ハウス内の温度を保てないと、ナスの草勢は弱くなり、収量に波ができてしまいます。厳寒期も適切な栽培管理に努め草勢を維持し、安定した収量を目指しましょう。
県央広域本部 宇城地域振興局 農業普及・振興課
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