トルコギキョウ栽培における冬季の病害虫防除

はじめに

トルコギキョウは花の色や形のバリエーションが豊富で、日持ちも良いため長く観賞できることから、冠婚葬祭から家庭用まで、様々な場面で使われています。熊本県のトルコギキョウ栽培面積は全国1位であり、年間通して全国に出荷されています。
出荷期間の長いトルコギキョウですが、栽培期間も長くなるため病害虫の対策が重要です。今回は12月以降の栽培管理における病害虫防除の考え方について紹介します。

病害虫の発生の原理

病害虫の発生には病害虫(主因)の有無、植物の状態(素因)、栽培環境(誘因)が関わっており、この3要因が揃うことで多発生します(図1)。逆に、いずれか一つでも要因を取り除くことで、病害虫の発生を少なく抑えることができます。

図1 病害虫発生の3要素

冬季に注意が必要な病害虫発生の要因

12月以降は外気温が下がり、ハウスを終日閉め込むようになります。ハウスを閉め込むことで①ハウス内の温湿度上昇、②二酸化炭素濃度低下に伴う光合成量低下による生育の抑制等といった環境要因の悪化が懸念されます。特にトルコギキョウでは①による病害虫発生のまん延に注意が必要です(写真1,2)。

写真1 トルコギキョウ斑点病
写真2 コナジラミ類

冬季の防除の考え方

1)湿度管理による物理的防除
冬季の施設栽培では多湿を好む病害が多いことから、湿度の管理が病害抑制におけるポイントの一つになります。多湿を防ぐための方法には大きく分けて①換気による水蒸気量制御、②暖房機等による結露制御、の二通りがあります。

①水蒸気量を減らす
最も効果的な湿度を抑える方法は換気です。外気の乾燥した空気と入れ替えることで、水蒸気の多い空気を減らすことができます。しかし、冬季に換気をするとハウス内温度が下がるため、長時間の換気は作物の生育に悪影響となります。そのような場合は早朝に内張の肩面や谷間を少し開けるだけでも一定の除湿効果が得られます。

②結露を防ぐ
病害予防に着目した湿度管理においては、結露を生じさせないことも重要で、結露により生じた水滴で植物が濡れると病害の発生を助長することになります(図2)。結露を防ぐ方法としては早期に暖房機を回し、気温を上げることで飽和水蒸気量が多くなり、結露しにくくなります。また、循環扇で空気を循環させることで結露が生じやすい部分(内張など)での発生を抑えることもできます。

図2 結露の仕組み

2)効果的な化学的防除
病害虫防除においては、発生してから防除するのに比べ、発生前に予防的防除を行うことで防除効率を高めることができます。
斑点病の防除に関する試験では薬剤の種類で効果に差はあるものの、初発の確認前の薬剤散布による防除効果が高いとされています。また、初発後も7日間隔で予防的散布を行うことで防除効果を高め、商品価値に影響するとされる上位6対葉への防除効果も高まります(図3)。
害虫の防除においても、特に微小害虫(コナジラミ類やアザミウマ類)は発生を目視で確認した時はすでに発生が広がっていることが考えられます。4月以降に微小害虫による被害が発生するほ場において発生推移を調査したところ、2月上旬から発生が確認されました(図4)。外気温が低い2月でも、ハウス内では密度が高まる可能性があるため、薬剤による防除効果を高めるためにも、粘着トラップによる早期確認や予防的防除に取り組み、早期に密度を抑えることを意識しましょう。
また、県内のトルコギキョウ栽培では温暖な気候を利用し「二度切り栽培」をすることができます。その際、フラワーネットとビニールを活用したトンネル蒸し込みを行いますが、この時トンネル内は高温・多湿の状態になり、株の生育を促進しますが病害虫の発生も助長します。トンネルをする前には必ず殺菌剤、殺虫剤を散布し発生を予防します。

図3 薬剤散布が斑点病防除効果に与える影響
(R4生産環境研究所)
図4 冬季のコナジラミ類の発生推移

最後に

花き生産において栽培期間の長くなる作型では栽培に係るコストも大きい分、病害虫により出荷できなくなると経営への影響も大きくなります。まずはほ場内で病害虫を発生させない環境を整えつつ、こまめに見回り早期防除に努めましょう。

天草広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

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