熊本県のイチゴ栽培では、多くの品種が栽培されています。その中でも熊本県育成品種「ゆうべに」90.5ha、農研機構育成品種「恋みのり」46.1ha(それぞれ令和4年産共販実績)が主要品種です。厳しい寒さとなるこれからの季節において、品種に応じた適切な温度・栽培管理を行い、草勢を維持することが重要です(表1、図1)。そこで、今回は熊本県において栽培面積の多い、「ゆうべに」「恋みのり」の厳寒期の栽培管理について紹介します。
いちご厳寒期の栽培管理について
はじめに


1.ハウス内温度管理について
11月下旬から2月上旬にかけての温度管理の目安を表2に示しています。「ゆうべに」では、11月に高温管理すると小玉果となり、可販果収量が減少するため、特に日中の高温に注意します。「恋みのり」は葉の展開が他品種に比べて遅い傾向があるため、適正な温度管理を行うとともに、夜温の確保に努めてください。

2.電照について
電照は草勢を考慮して行います。新葉の展開速度(7~10日に1枚)や葉柄の伸長状況を確認し、生育に応じ電照時間を調整します(表3、4)。電照の効果は処理開始1週間後に現れるため、生育を常に観察しながら適切な草高となるよう電照時間の調整を行います(写真1)。

電照の効果により、果梗枝が上向きに伸びる。電照の効果の有無や処理時間の目安になる


3.摘花(果)について
株の生育状況により成り、疲れ防止や果実品質維持、がく枯れ対策として、摘花(果)を徹底します(写真2)。摘花(果)は草勢や花房間葉数に応じて行います。加えて、光合成産物の無駄な転流を防ぐため、収穫の終了した果梗枝はそのまま残しておかず、速やかに除去してください(写真3)。

着花(果)数が多いため、小さい果実やすそ花(果)を取り除く

光合成産物の無駄な転流を防ぐため収穫後の果梗枝を取り除く
最後に
イチゴの安定した収量の確保には厳寒期の草勢維持が重要です。今回紹介した栽培管理は、目安となる管理基準を紹介しています。ご自身のイチゴの生育に合わせて適切な管理をすることを心がけてください。
また、阿蘇地域では、年明け以降も安定した出荷ができるように、苗の鉢受け時期の違いが収量に与える影響と株の成り疲れ軽減対策として摘花(果)の効果について調査しています。今後も引き続き生産者の方々が安定した収量を確保できるように支援して参ります。
※図表は「ゆうべに」土耕栽培管理指針(改訂版)(熊本県)より参照
イチゴ品種「恋みのり」土耕栽培・高設栽培管理指針(JAグループ熊本)より参照
県北広域本部 阿蘇地域振興局 農業普及・振興課
イチゴ厳寒期の栽培管理について(PDFファイル)
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