天草地域のきゅうり(写真1)は、年間延べ22haにわたり周年栽培されるとともに、その多くが年2作の体系で栽培されています(表1)。
また、当地域では生産・販売体系が確立していることから、新規就農者の新規導入品目として推奨しています。今回、様々な作型がある中で、「促成栽培」の管理方法について、天草地域での取り組み事例を交えながらご紹介します
促成きゅうりの栽培管理方法について
はじめに
促成栽培の管理方法
(1)温度管理
天草地域の促成栽培は、11月~12月にかけて定植し、翌年の5月まで収穫を行います。この作型は、生育期間の大部分が低温期にあたり、厳寒期の草勢維持が重要となってきます。収穫初期の12月から2月下旬にかけては低温寡日照となるため、生育適温を確保するための温度管理が重要です(表2)。
2)整枝方法
天草地域では、「摘芯栽培(図1)」が主体ですが、整枝や摘葉に熟練の技術を要し、生産者の技術力の差が収量に大きく影響します。そこで、管理作業が比較的単純で、新規就農者でも取り組みやすい「更新つる下ろし栽培(図1)」の導入が始まっています。
このため、令和2年度に「更新つる下ろし」の仕立て本数の違いによる労働生産性について検討しましたので紹介します(表3)。
※図1:「天草地域 新規就農者向けキュウリ栽培マニュアル」より引用
収量は、6本仕立区が9.4t/10a、4本仕立区が9.8t/10aとなり、大きな差は見られませんでした(図2)。一方、生育初期(定植、手灌水(かんすい)、主枝誘引、芽摘みなどの整枝作業)における10a当りの労働時間は、4本仕立区が50.3時間/人、6本仕立区は33.3時間/人と6本仕立区の方が短い結果となりました。ただし、子づるが同一間隔(10cm)に配置された後は、4本仕立区と6本仕立区で作業時間に大きな差はみられませんでした(データ未掲載)。
以上の結果から、栽培に必要な苗の本数も含めて考慮すると、6本仕立ての方が優れていると考えられました。しかし、4本仕立てにおいては側枝の揃いが良く、厳寒期の草勢維持につながることが想定されるため、今後も検討する必要があると考えます。
(3)病害虫対策
天草地域で主流となっている品種「ニーナZ」や「まりん」(ともに(株)埼玉原種育成会)は、うどんこ病・褐斑病・べと病の複合耐病性を有しています。しかし、厳寒期は高湿度に遭遇する時間が長くなるため、斑点細菌病など他の病害発生が問題となります。そのため、ハウス内の換気に併せて循環扇や暖房機の送風機能の活用、化学農薬の予防散布を徹底します。
また春先以降は、気温上昇に伴って、コナジラミ類やアザミウマ類等の害虫の発生が増加します。特に、ミナミキイロアザミウマによって媒介される黄化えそ病は、生育不良による収量低下を招いてしまいます。害虫対策は、「ハウスに入れない、増やさない、出さない」が基本です。防虫ネットの設置や天敵防除を徹底するとともに、栽培終了後は速やかに、ハウス内を密閉処理することで次作に害虫をつなげないことが重要です。
最後に
促成栽培は栽培期間が長く、前半は低温、後半は高温期を経過する作型です。そのため、厳寒期の草勢維持と、病害虫の防除対策が重要となります。適切な管理により、目標とする収量を確保していきましょう。
天草広域本部 農林水産部 農業普及・振興課
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