アスパラガスの高温対策

はじめに

令和6年産のアスパラガス生産は、夏場の記録的な猛暑によって、親株の茎葉に焼けや痛みなどの障害や、風通しが悪い蒸れた状態で病害虫が多発することで光合成能力が低下し、夏芽の収量・品質低下が見られました。気象庁の6月24日に発表された3カ月予報によると、令和7年の夏も平年と比べ気温が高い見込みです。
そこで、今後の夏芽の安定生産に向けて、本県の主流である雨よけ栽培の高温期における基本的な対策について紹介します。

換気

高温対策の基本は、ハウスの換気です。一般的に、ハウス内温度を下げるためには、上層部に滞留している熱気を外へ出す必要があります。よって、ハウスのサイドや屋根(肩や谷)、妻面をできる限り開放することで、ハウス内の気温上昇を抑えることが重要です。そこで、親株最上部の10cm程度上までハウスビニルを巻き上げ、換気を行います。
また、ハウスのサイドや屋根の全面開放が可能なフルオープンハウスの導入も、ハウス内の気温上昇を抑えることが期待できます。

写真1 サイドや屋根、妻面の開放
図1 換気前(左)と換気後(右)の熱気のイメージ
(「熊本県 農畜産業の高温適応対策」より一部改)

栽培管理

親株が蒸れないように、摘心や整枝を行うことによって、通気性の良い環境を作る必要があります。
摘心のポイントは、ハウスの開放できる高さより10cm程度低い位置で摘心することです。そして、摘心後に摘心位置より高く上位側枝が生育した場合は切除します。下位側枝は、株元から5060cmの高さまで刈り取ることで、株元の採光・通風が良くなります。
また、夏芽の収穫期に中位側枝が込み合ってきたら、畝間の通路の手前から奥までが見通せる程度に、整枝を行います。整枝は、一度に行うと草勢低下につながるので、少量多回数で行うことが重要です。
なお、摘心や整枝の作業は、病害の発生を予防するため、晴天日の午前中に行い、切り口の早期乾燥を心掛けます。

図2 通気性の良い環境のイメージ

かん水管理

高温期は、換気のためハウスを開放していることから、茎葉からの蒸散量や土壌からの蒸発量等が多くなり、非常に多くの水分を必要とします。また、土壌水分は乾燥と湿潤を繰り返すよりも、やや湿潤状態(目安:畝下10cm程度の土壌を握りしめてやや固まる程度)を維持する方が根域の吸水ストレスの低減につながります。
そのため、数日おきにたっぷりかん水するのではなく、土壌水分状態を確認しながら、少量多回数を意識して基本的には毎日かん水を行います。かん水の時間帯は、夕方以降が地温低下に効果的です。
なお、日中はパイプやホース、チューブ内に残った水が高温になっている場合がありますので、水温が下がっていることを確認してからかん水をします。

被覆資材の利用

被覆資材には、タイプ別に遮光資材と遮熱資材があります。遮光資材は、ハウス内に入る太陽光の総量を減らす(反射または吸収)ことで温度上昇を防ぎ、遮光ネットや塗布材等があります。
ただし、資材の遮光率が高すぎると光合成能力が低下するため、目安として遮光率30%以下の資材を利用します。また、長年天井ビニールを使用している場合は、汚れで遮光率が高くなっている場合があるので、天井ビニールの遮光率を考慮した上で、資材を選択します。
気温が下がる秋口ごろ(目安:日中の最高気温が30℃以下)にはネットを除去し、日射量を確保するように努めます。
一方、遮熱資材とは、太陽光の中でも植物が光合成に利用する可視光線をハウスに取り込みながら、高熱を伴う赤外線(熱線)を選択的に減らし(反射または吸収)、温度上昇を防ぐ資材のことです。遮熱資材にはネットや塗布材がありますが、一般的に高価である場合が多いので、コスト面も考慮して導入します。

図3 光の波長
図4 遮熱資材の光透

(「熊本県 農畜産業の高温適応対策」より引用)

おわりに

高温期における夏芽の安定生産のためには、換気、栽培管理、かん水管理といった基本的な対策が重要です。資材の導入は、基本的な対策を実施したうえで行いましょう。

県北広域本部 鹿本地域振興局 農業普及・振興課

アスパラガスの高温対策 (PDFファイル)

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