令和4年の気象庁のデータによると、阿蘇乙姫の6月から9月の最高気温の平均は30℃を超え、7月では32.5℃を記録しました。令和4年に当課が行った試験データでは、ハウス内の最高気温が35℃を超える日もあり、梅雨明け以降高温であることが分かります(図1、表1)。
高温時のハウス内温度を見える化するため、当課では、サーモカメラを使用してハウス内温度の測定を行いました(写真1)。
写真1を見ると、直接光があたる通路やハウス本体のパイプ、支柱は赤色を示し高温となっている一方で、植物体は青色を示し温度が低くなっていることが分かりました。その要因は、植物体の蒸散による作用であると考えられます。
夏秋野菜(トマト)の 栽培管理について
はじめに
阿蘇地域では、標高約400m~600mの地域において冷涼な気候を生かした夏秋トマトの栽培が行われています。栽培品種は「りんか409」で、4月頃から定植、6月頃から収穫が始まります。
トマトの開花や結実には20~25℃の温度が最も適しており、30℃以上の高温が続くと呼吸消耗による花柱の衰弱や花粉発芽の低下等により受粉が不完全となり落花を誘発します。また、35℃以上の高温では着色が阻害されるなど、高温により多くの影響を受けるとされています。
冷涼な気候である阿蘇地域でも近年は温暖化の影響を受け、気温が上昇傾向にあります。そこで、高温期のハウス内の温度管理と脇芽整理のポイントについて、当課が行った試験データと併せて紹介します。
ハウス内の温度管理
ハウス内の温度について
遮光について
トマトは高温により多くの影響を受けるため、高温対策として遮光資材が利用されています。当課においても、令和3年度に遮光率の異なる資材を常時展張して高温対策試験を行いました。使用した全ての遮光資材において昇温抑制効果と光の透過率の低下がみられましたが、収量は遮光を行わない慣行区が一番高い結果となりました。
もともとトマトは陽性植物であり、豊富な日射量を必要とします(光飽和点は7万ルックス)。日照が不足すると茎葉が徒長し、花器の異常をきたし開花、結実の不良により落花を誘発することが多くなります。この試験では、ハウス内の日射量が少ないものほど収量が低い結果となりました(表2)。
このため、遮光は、昇温抑制効果により作業性向上につながる一方、収量低下も生じやすくなりますので注意が必要です。
脇芽の整理
果実に直射日光が当たると、果面の温度が高くなることによる日焼け果の発生(写真2)や、果皮の硬化あるいは急激な吸水による裂果の発生等が起こりやすくなります。サーモカメラでの写真でも、直射日光の当たっている果実表面が高温になっていることが分かりました(写真3)。
前述のとおり、遮光資材の常時展張による対策では日射量の減少により収量に影響を及ぼす可能性があります。そこで、管内の一部では、通常は管理作業の中で除去する果房下の脇芽を伸長させ、葉が1~2枚展開したところで摘心して陰をつくり、果実への直射日光を防ぐ方法が取り入れられています。
最後に
今年も高温下での栽培となることが予想されます。ハウス内温度と日射量に留意して、安定した夏秋トマト栽培を行いましょう。
県北広域本部 阿蘇地域振興局 農業普及・振興課
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