宿根カスミソウの二度切り栽培における計画出荷技術

はじめに

熊本県では宿根カスミソウが盛んに栽培されており、現在生産量が全国1位の品目です。宿根カスミソウ栽培では、年内に一番花を収穫し、その後、電照処理や高温管理(蒸し込み)を行い、5月の母の日需要に向けて二番花を収穫する二度切り栽培が広く行われています。そこで、宿根カスミソウの母の日出荷に向けた、二度切り栽培技術のポイントをご紹介します。

切り戻し作業

一番花終了後、株を地際から5~10センチ程度まで切り戻し、枝葉を除去し、主茎だけの状態にします(写真1)。切り戻しの時期は、4月下旬以降出荷の場合、表1の通りとなります。
蒸し込み開始までに、病害虫の防除と除草作業を行いましょう。12月ごろのハウス内は、アザミウマ等の害虫やうどんこ病の発生が考えられます。特に、ハウス内に雑草があると、虫や病原菌が生き残り、春先の大発生につながります。ハウス内が病害虫の越冬地とならないよう、必ず防除を行いましょう。
かん水も重要です。一番花の採花中は水を切っているため根が傷んでいる状態です。一度に大量の水を与えると根腐れの原因となってしまうため、切り戻し1週間前から少量多回数かん水を行いましょう。

写真1 切り戻し後の株

蒸し込み(トンネル被覆)

切り戻し後は、生育促進のためトンネル被覆を行います。外張り+内張り+トンネルの3重被覆を行うことで温度を高め、生育を進めます(図1、写真2、写真3)。トンネルは、フラワーネット用の支柱の上に被せ、トンネルの内側に水滴が付く程度まで多湿になるよう管理を行います。トンネル内は特に2月以降は高温になりやすく、この際、乾燥していると葉に焼け症状が出てしまいます。そのため、トンネル内は常に湿気がある状態にしておきます。トンネルの外の湿度も大事なので、軽く通路散水を行うなどして、ハウス全体の湿度を保ちましょう。暖房がある場合は、夜間の気温が5℃となるよう加温しましょう。
萌芽(ほうが)した芽が15㎝程度まで伸びたら、日中温度25℃~30℃を目安にトンネルを少しずつ開け徐々にトンネル内の換気を行い、気温に慣らします。急激な温度変化は葉焼けの原因となるため、天候をみながらトンネルを除去します。トンネル除去後も、引き続きハウス内には湿度が必要です。株の蒸散も盛んになるため、ほ場によっては乾きやすくなるので、株の状態をみながら、地温を下げないよう午前中にかん水を行いましょう。

図1 3重被覆の状態
写真2 トンネル被覆
写真3 トンネル被覆の内側

電照

宿根カスミソウは長日植物であるため、電照をすることで花芽分化を促進することができ、生育を早める効果があります。電照は、22時~2時までの4時間、暗期中断で行い、電球は白熱球を使用します。電照開始は、蒸し込み開始と合わせて行います。栽培終了時まで電照すると、節間長が伸びすぎて草姿が悪くなるため、中晩生品種で草丈40㎝、早生品種で草丈20㎝、または日が長くなる3月中旬を目安に終了します。

芽整理

二番花は多くの芽が吹いてきます。経営内の労働力に合わせて、芽が多すぎる場合は芽整理しましょう。芽が多すぎると、採花作業が煩雑になり、手が回らなくなります。また、無駄な芽が多いと咲き揃いの遅れ、ボリューム不足の原因となり、品質低下へと繋がります。

ハウスの換気

草丈5060㎝(3月上旬頃)から徐々に換気を開始、ハウス内気温25℃を目標に行います。冷たい風が直接株に当たらないよう注意しましょう。発蕾後、ハウス内が高温多湿状態であると、花首の間延びへと繋がります。ハウスサイドだけでなく、妻面も開けるなど、十分な換気を行いましょう。

最後に

宿根カスミソウは、年間を通し安定して需要のある品目ですが、特にイベントのある時期では需要が高く、計画的出荷が望まれます。生育段階に合わせた温度管理を行うことで、狙った時期に高品質の花きを出荷しましょう。

 

県央広域本部 農林部 農業普及・振興課

詳細はこちら
PDF:宿根カスミソウの二度切り栽培における計画出荷技術