はじめに
熊本県は、宿根カスミソウの作付面積・出荷量が全国1位であり、主に熊本地域、菊池地域、宇城地域、天草地域が産地で、主要品種「アルタイル※」を中心に栽培されています。
本県での宿根カスミソウの定植は、早いところで7月下旬より始まりますが、近年の温暖化の影響により、定植後の活着不良による生育不良や短茎開花による切り花品質の低下が問題となっています。
そこで今回は、高温期の栽培管理のポイントと、令和7年度に宇城地域で実施した遮熱・遮光資材を用いた実証試験の結果を紹介します。
※ 花持ちが良く、ボリューム感に定評のある品種。
高温期の栽培管理のポイント
①寒冷紗(かんれいしゃ)被覆の実施
高温期の定植では、植物体の温度及び地温を下げ、活着を促進させることが重要になります。そこで、定植の1週間~10日前に寒冷紗等(遮光率45%程度)を用い遮光を行い、ハウス内の気温の低下に努めましょう。注意点として、遮光が長引くと株の徒長や、生育遅延、側枝の発生不良につながるため、活着後(定植後1週間程度)は早めに寒冷紗を除去するか、遮光率の低い寒冷紗等※2に張り替えましょう。
※2 現地では青色の防風ネット(遮光率約30%)を使用する事例があります。(写真1)
写真1 防風ネット②タイベックマルチの活用
地温を下げるには、タイベックマルチの活用も効果的です。タイベックマルチは優れた遮熱性、通気性、透湿性により地温上昇を抑え、蒸れを防ぐことで、根が正常に生育する環境を保つことが出来ます。また、光反射特性により、アザミウマ類・アブラムシ類に対する防除効果も明らかになっています。ただし、通常の白黒マルチと比べ、乾燥しやすいため、かん水は通常よりも多めに行いましょう。また、タイベックマルチを用いると地温が低下することにより、2番花が遅れる可能性があるので注意しましょう(写真2)。
写真2 タイベックマルチ③土壌消毒・排水対策の徹底
高温期定植作型では、高地温かつ過湿による根痛みが発生しやすいため、萎凋(いちょう)細菌病や疫病等の土壌病害が多く見られます。そのため、クロルピクリン剤による土壌くん蒸や太陽光消毒など土壌消毒を徹底しましょう。
また、過湿状態が続くと高温と重なり根に強いストレスがかかるため、排水性の確保が不可欠です。明きょの設置による雨水排除、高畝による根域の過湿防止などが効果的で、土壌環境が整えられ、スムーズな活着につながります。
④ポット苗の利用
篤農家の中には、高温期の定植においてポット苗(または、ピンチポット苗)を活用している事例があります。ポット苗とは、種苗会社が自社農場においてセル苗をポリポットに移植し、2週間程度育苗したもので、セル苗と比べ初期生育が優れているため、ボリュームのある切花を生産することができます。ただし、セル苗より高価であるため、経営状況に応じて導入を検討しましょう(写真3)。
写真3 ピンチポット苗定植時(定植前から定植後1ヶ月)に遮熱・遮光資材を用いた高温対策の実証試験について
宇城地域では、令和7年度に定植時の遮熱・遮光資材の被覆による効果及び遮光率が生育に及ぼす影響について検証する実証試験を行いました。
試験では、8月21日に定植した品種「ベールスターロング」を対象に、遮光率45%及び55%の遮熱・遮光資材(商品名:ら~くらくスーパーホワイト)2種類を定植1週間前から9月20日まで被覆し、生育及び気温・地温の比較を行いました(写真4)。また、気温・地温に関しては、宇城地域で一般的に使われている遮光率40%の遮光資材とも比較を行いました。
その結果、平均気温に関しては、3区間で大きな差は見られませんでしたが、日最高気温では遮光率45%及び55%の遮熱・遮光資材を被覆した区が遮光率40%の遮光資材した区より0.6~1.3℃低く推移しました(図1)。また、平均地温に関しても3区間で大きな差は見られませんでしたが、日最高地温は遮光率45%及び55%区が遮光率40%区より0.5~0.8℃低く推移しました(図2)。
写真4 遮熱資材設置の様子
図1 日平均気温および日最高気温グラフ(8/15~9/20)
図2 日平均地温および日最高地温グラフ(8/15~9/15)
※9/15以降:機材不良によりデータ取得不可
図3 草丈グラフ(10株の平均)生育面では、遮光率45%区が55%区よりも草丈の伸長が良好で、10月7日調査では2cm程度高く(図3)、達観調査でも、遮光率45%区が55%より開花揃いと枝の横張りが良くなりました。(写真5、6)。
このことから、遮光率55%では、生育に影響を及ぼすことが判明し、今回の8月定植の作型においては、遮光率55%より遮光率45%の遮熱・遮光資材が適切であることが分かりました。
写真5 収穫初期の遮光率45%区
写真6 収穫初期の遮光率55%区最後に
高温期の定植では、定植前の根圏環境の地温や排水性といった環境条件を整えることが、安定した活着につながり、その後の生育が良好になります。遮光資材などを活用しながら、しっかりと活着を確保することに努めましょう。
県央広域本部 宇城地域振興局 農業普及・振興課
宿根カスミソウの高温期の栽培管理について (PDFファイル)