春先の茶園管理について

はじめに

良質な一番茶を摘採するために重要なのが春先の茶園管理です。一年間の管理の集大成となる一番茶収穫ですので、適切な管理を行いましょう。

春肥・芽出肥

春肥・芽出肥は、一番茶のうま味等の品質に関与するといわれています。
春肥は2回に分け、1回目は2月までに有機質肥料を主体としたもの、2回目は3月中にアンモニア態窒素の速効性肥料か、速効性肥料が入った複合肥料を利用しましょう。
葉色の向上のために、春肥1回目の施用前に、硫酸苦土等の資材を施用しましょう。
芽出肥は一番茶萌芽期に硫安などの速効性肥料を施用します。2回に分施するのも効果的です。
一番茶の2.5葉期頃までは窒素成分の施用による品質向上効果が見込めます。土壌に水分が無いと肥料散布しても効果がありませんので、雨前に肥料散布する等、天候を考慮してください。液肥施用も効果的です。
近年ではドリンク茶でも窒素成分が価格に反映される場合があります。一番茶生育中に窒素成分が切れないようにしましょう。

凍霜害対策

茶の気象災害で最も被害が大きいのは凍霜害です。茶芽の生育ステージが進むにつれて、耐凍性は低くなり、一葉期以降はマイナス2℃となります。被害を受けた場合、被害の程度によって異なりますが、摘採期の遅れ、収量や芽ぞろいにも影響します。また、昨年のように、暖冬で生育が早まると凍霜害に遭う可能性が高まります。
主な対策として防霜ファンを用いた送風法とスプリンクラーを用いた散水氷結法があります。

写真1.霜害茶園

送風法

防霜ファンは一般的に萌芽期の2~3週間前より運転させます。運転させる前には以下のことを確認し、霜が降りた時に間違いなく稼働するようにしましょう。

 

◯通電と制御盤の確認
通電しているのか、制御盤が稼働するのか、早めに確認しておきましょう。
◯ファンの回転等の確認
ファンの回転、首振りの角度、支柱の傾きが正常であり、茶園全体にまんべんなく送風されているか、確認しましょう。
◯温度センサーの確認
氷水を入れた容器にセンサーの先端を入れ、制御盤の設定を0℃にしてファンが稼働するか確認しましょう。
センサーの設定温度は一般には、萌芽2週間前で3℃、萌芽後から1葉期で5℃、2~3葉期で7℃に設定します。

写真2.防霜ファンの温度センサー

散水氷結法

散水開始は茶株面気温が2~3℃に低下した時点とし、散水終了は朝日が出て気温が上昇し、茶株面の氷が溶け始め、散水した水が凍らずに葉面から落下する時です。運転させる前には以下のことを確認しましょう。

 

◯散水状況の確認
配水管の破損、ヘッドの目詰まり等を確認し、均一に散水がされているかを確認しましょう。

写真3.氷結茶園とスプリンクラー

病害虫防除

一番茶萌芽前の防除はクワシロカイガラムシと赤焼病等の病害虫が対象になりますが、特に重要な害虫であるカンザワハダニを紹介します。

カンザワハダニ

去年の秋は発生の多い茶園が散見されています。発生が多かった茶園では、発生状況をよく観察して防除してください。暖冬だと越冬密度が高まり、多発生する恐れがあります。
この時期の防除の良否が、年間の発生量を左右します。防除適期は、産卵が活発となる平均気温が10℃を超す頃(3月上旬頃)です。
葉裏にしっかりかかるように400L/10a散布しましょう。
薬剤の選定については表2を参考にしてください。なお、農薬の散布にあたっては、ラベルで使用基準を確認し、防除衣等を着用する等安全に配慮してください。

写真4.カンザワハダニ

春整枝・化粧ならし

温暖地では一番茶の萌芽時期が早く、芽ぞろいが優れる秋整枝を行いますが、寒冷地や高冷地では、寒害による芽潰れを減らすために萌芽の1か月前頃に春整枝を行います。
春整枝においては、近年では秋に予備整枝として、本来想定した整枝面よりやや高く整枝し、春に本整枝を行うやり方が普及しています。
秋整枝を実施した後に、遅れ芽が発生した場合や、冬春期の強風(春一番等)によって整枝面が乱れた場合は、春整枝と同時期に、冬芽を切らない高さ(秋整枝位置から5㎜高い)の位置で整枝を行います。これを「再整枝」や「化粧ならし」と呼びます。
春整枝・化粧ならしを行う場合は、一番茶への古葉や木茎などの混入を少なくするため、往復するなど丁寧に行いましょう。

県南広域本部 球磨城地域振興局 農業普及・振興課

詳細はこちら
春先の茶園管理について