落葉果樹(ナシ・クリ)の整枝・せん定 ~次年度産に向けて最も重要な作業です!~

はじめに

秋も深まり落葉が進むなか、次年産に向けたせん定作業が始まります。果樹の栽培管理において、「整枝・せん定」は重要な作業であり、連年安定生産、高品質果実生産に影響してきます。また、落葉果樹は品種が多く、品種ごとに結果習性(結果枝タイプ・結果母枝タイプ)が異なります。しっかりと結果習性を理解したうえで、せん定を行ってください。
また、せん定作業は刃物の使用、高所での作業など危険も伴います。安全確認を怠らないように作業を進めてください。
今回は、ナシ・クリの整枝・せん定のポイントについて紹介します。

せん定の前に…

せん定作業に入る前に、落葉の処理をお勧めします。特にナシでは、黒星病、炭そ病で悩まれている方も多いかと思います。これら病原菌は落葉に付着しており、そのまま放置すると園地内で残留・越冬し、翌年春の伝染源となります。
処理方法としては、園外への持ち出し・焼却・埋土などがあります。発生が多いと感じる園では、園内の菌密度を下げるために落葉処理を行いましょう。
また、園地内を見渡した時、日が差し込まず、暗い状態になってはいませんか?日が差しこまないほど枝葉が茂った園では風通しが悪く、農薬等もかかりにくいことから、病害虫の温床となり、果実品質の低下を招きます。適宜、縮・間伐を行い、永久樹の樹冠を広げるようにしましょう。

ナシの整枝・せん定

(1)ナシの結果習性
ナシは結果枝タイプ(モモ、スモモ、ウメ等)であり、本年伸びた枝に花芽を付け、翌春開花・結実します。また、品種によって結果枝の種類が異なり、長果枝主体と短果枝主体に分けられます。それぞれの品種にあった側枝を育成・確保しましょう(表1)。

(2)せん定・整枝
今回は3本主枝を基本に理想的な側枝配置を図示しました(図1)。樹冠内部から外周部にかけて新梢(しんしょう)の質が均一であることが理想です。基本的に果樹は基部優勢が働きます(主幹部に近い枝ほど強くなり、遠ざかるほど枝は弱くなります)。特に主枝先端は弱りやすいので、樹勢を強く保ち、新梢を均一化するためにも、主枝先端付近に側枝や予備枝を多く配置し、養水分を樹冠外周部に多く引き上げられるよう意識してせん定します。逆に、主幹部付近については、強勢な新梢や側枝は使わず、主枝先端側からの返し枝で対応しましょう。特に棚下から発生している枝(赤い破線部分)は強くなりすぎる傾向があるため使用は控えましょう。

図1 3本主枝の基本樹形と理想的な側枝の配置

クリの整枝・せん定

(1)クリの結果習性
クリは結果母枝タイプ(カキ、ブドウ、カンキツ類など)であり、本年伸びた枝が結果母枝となり、翌春、その枝から伸びた枝に花芽を付け開花・結実します。結果母枝タイプは先端を切り返すと花芽の減少(収量の減少)に繋がるので、基本的に間引きせん定(枝の途中で切らず、枝の発生位置から切る)で対応します。

(2)せん定・整枝
クリは果樹の中でも特に日照を要求します。せん定を怠ると、枝は光を求めて上へ伸び、樹高が高くなりがちです。樹高が高いと、作業性の低下や農作業事故の危険性、また台風被害も出やすくなります。そのため、できるだけ樹高を下げて、樹幹内部まで日照が届くような樹形にせん定で調整します(図2)。高木となった樹をせん定する場合は、数年かけて下枝を育てながら徐々に低樹高の樹に変えていきます(図3)。品種ごとの特性とせん定で残す結果母枝数の目安は表2のとおりです。それぞれの品種の特性にあった充実した結果母枝(図4)を残すようなせん定を行いましょう。
なお、クリはノコとせん定バサミで時間をかけて完璧な樹づくりを目指すより、ノコで大まかなせん定を行うだけでも、十分効果的です。まずはノコせん定で園を一回りし、時間に余裕があるようであれば、せん定バサミで細密せん定を行いましょう。

図2 クリの基本的なせん定法(熊本の果樹2022.12月号より)
図3 高木になった樹の低樹高化(熊本の果樹2022.12月号より)
図4 充実した結果母枝

県南広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

落葉果樹(ナシ・クリ)の整枝・せん定~次年度産に向けて最も重要な作業です!~ (PDFファイル)