はじめに
雑草対策は、大豆の収量・品質を安定させるために必要不可欠です。雑草が多発することで、初期の生育不良や作業効率の低下、収量・品質の低下が生じます。そこで今回は、「雑草抑制を意識した大豆づくり」について紹介します。
1.なぜ、雑草対策が重要?
大豆は栽培の初期に雑草が多発すると、生育が抑制され収量が減少します。その影響は雑草の発生が早いほど、また、雑草発生量が多いほど大きくなります。その他にも、雑草種子の収穫物への混入や、雑草茎葉の破砕液による汚粒の発生は著しい品質低下につながります。
また、近年、特に問題になっている難防除雑草の帰化アサガオ類は、つる性で生育が旺盛なため、大豆に巻き付いて生育を妨げるほか、コンバイン収穫時に機械に巻き付き、作業効率の低下や機械の損傷などを招きます。
2.雑草対策のポイント
雑草害を低減するための一番のポイントは、雑草の初発を抑制した状態で、できるだけ早く大豆の生育を確保し、雑草との生育競争に圧勝することです。大豆優勢の栽培環境を作り出すためには、大豆の茎葉が畝間を覆う開花期まで雑草を抑制し続けることが重要で、そのためには、次のような対策を講じる必要があります。
①排水対策の実施
大豆は湿害に弱い作物です。特に播種(はしゅ)時期の過湿は発芽や初期生育を強く阻害します。排水対策には、「額縁明渠(きょ)」、「暗渠」のほか、「サブソイラー」なども有効で、これらを組み合わせるとさらに効果的です。額縁明渠は作業が容易で、一般的に利用されている排水対策のひとつですが、ただ掘るだけでは意味がありません。排水溝に流れ込んだ水がほ場外に排水されるように、溝を落水口までつなげましょう。
②最終耕起後は速やかに播種する
多くの雑草は、耕起した直後から地表近くの種子が動き出し、数日のうちに出芽し始めます。耕起を行ってから大豆を播種するまでの期間が長くなるほど、雑草の発生が進むため、直前の耕起からできるだけ早く播種することを心掛けてください。しかしながら、作業を急ぐあまりに耕起が十分に行われず、砕土率が低いと出芽率や除草剤の効果が低くなることもあるので、注意が必要です。
③除草剤の適切な使用
初期の雑草を抑制するために、播種直後の土壌処理剤は確実に行いましょう。土壌が乾燥しすぎていたり、逆に散布後に大雨に見舞われた場合は効果が劣ることもあるので、注意が必要です。状況に応じて選択性茎葉処理剤の播種後全面散布や非選択性除草剤の播種前全面散布・畝間散布、あるいは次項の中耕・培土を早めに実施する等の対応を試みてください。
④中耕・培土の適期実施
中期の管理として、中耕・培土による除草が効果的です。土壌を撹拌することで、畝間の雑草を除去できるほか、作溝による排水性の向上や株の倒伏防止など、様々な効果をもたらします。
中耕・培土は、適期に実施することが重要です。作業が遅れると雑草が繁茂し、除草効果や機械作業効率の低下を招きます。基本的に中耕・培土は2度行いますが、特に1度目の作業を遅延させないことが重要です。1度目は、大豆の本葉が3葉期(播種後30日頃)に子葉を覆うように培土し、2度目は5葉期(播種後40日頃~)に第一葉節が土に埋まるように培土してください。
3.残存する雑草種子の低減
①田畑輪換の実施
雑草には、水田雑草と畑地雑草が存在します。田畑輪換を繰り返すことで、水田状態では畑地雑草、畑状態では水田雑草の発生が抑制されます。田畑輪換を効果的に行い、雑草を抑えましょう。
②休耕期の耕起
大豆の播種までに最低2回は耕起を行いましょう。雑草が開花・結実する前の耕起がポイントで、ほ場内の雑草量を大幅に低減できます。特に、水田作ができない畑ほ場では欠かせない作業です。
③畦畔(けいはん)管理
畦畔管理を怠ると、畦畔の雑草がほ場内に侵入し、やがて繁茂します。特に、帰化アサガオ類は、一度侵入すると処理が難しいため、注意が必要です。畦畔管理をこまめに行い、雑草種子のほ場内への侵入を防ぎましょう。
④手取り除草が有効な場面
帰化アサガオ類等の難防除雑草については、初期段階の対策が重要です。栽培地への侵入を少しでも確認した場合は、畦畔も含めて手取り除草で徹底的に排除しましょう(焼却ゴミとして処分)。もし、栽培後期までに排除できなかった場合も異種混入や汚粒の発生につながるので、可能な限り手取り除去を行いましょう。
4.まとめ
今回紹介した雑草対策は、同時に大豆の生育量確保のためにも欠かせない技術です。毎年の雑草対策により、ほ場内の雑草は減少します。種子を増やさない・持ち込まないように徹底した管理を行い、大豆の安定生産を目指しましょう。
県南広域本部 球磨地域振興局 農業普及・振興課
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雑草抑制を意識した大豆づくり