大豆は畑作物であり、特に出芽期から生育初期は湿害に弱い作物です。作付けほ場を水系単位で団地化し、地域全体の乾田化を図りましょう。また、額縁明きょや弾丸暗きょ、心土破砕、畝立て等の対策の組み合わせにより、地下水位が40~50㎝より低くなるようにしましょう。地下水位が地表から30㎝より高くなると、過湿になり、酸素不足による発芽不良となり、種子が腐敗する等、生育不良が起こりやすくなります。
明きょ・暗きょのいずれにおいても、排水溝を落水口にしっかり繋げるよう注意してください。(図1)
は種前の排水対策をできるだけ早めに行うことで、降雨後もほ場に入りやすくなり、適期は種が可能となります。
高冷地大豆の初期管理(は種・除草)
はじめに
大豆の収量・品質を安定させるためには、初期生育の確保が重要です。そのためには、次のような対策が大切になります。
排水対策
土づくりと施肥
大豆は肥沃な土壌ほど増収するため、栽培初年度は収量が良く、2年目、3年目になると地力低下等により連作障害が出ます。そのため、2年を限度にブロックローテーションを行うことが理想的ですが、難しい場合は堆肥や稲わら、麦わら等を投入し、地力回復に努めましょう。堆肥は1~2t/10aをは種1か月前までに施用し、深耕します。完熟堆肥でもは種1週間前までに施用しましょう。
また、大豆には根粒菌が着生し、大豆が吸収する窒素の約60%を根粒菌による窒素固定が占めます。しかし、根粒菌が着くまでは他の作物と同じなので、元肥や苦土石灰は必ず施用しましょう。
元肥では、リン酸とカリが特に重要で、莢の伸長や子実の肥大にはリン酸の効果が大きく、カリも欠乏すると下位葉に不正系の黄斑を生じ、葉が裏側に湾曲したり、萎縮したりするなどの症状が現れます。根粒菌にとってもリン酸は必要であるため、十分施肥するよう心がけましょう。
適正土壌pHは6.0~6.5で、根粒菌の活動を活発にする上でも酸度の矯正は重要です。ほ場に合わせて、8kg/10a程度の石灰を施用しましょう。
耕うん
土塊が大きく空隙が多い方が根の張りや根粒菌の着生が多くなるため、土壌の通気性が重要です。表面に土塊があると除草剤の効果が低下する他、種子の水分吸収阻害や発芽不良が起こるため、表層は細かく、下層は粗くなるように耕うんしましょう。
種子の調湿と消毒
は種直後の降雨で急激に水分を吸収し、過湿が続くと発芽率が著しく低下します。そのため、あらかじめ種子水分を15%程度に高めておくことで、降雨にあっても発芽率の低下は小さくなります。調湿の方法は、網袋に入れた種子を湿った布で包み、ビニール袋で密閉したり、お風呂場や育苗器等の湿度の高い場所に置いたりする等で15%程度になります。なお、調湿処理後はすぐには種しましょう。
紫斑病予防や鳥害防止により、発芽・苗立ちの安定確保を図るため、キヒゲンやクルーザーマックス等、地域の耕種基準に沿ったものを用いて種子消毒を行いましょう。(写真1)使用する際は、使用方法をよく読み、容量を遵守して使用してください。
は種期と栽植密度
本県における主力品種「フクユタカ」のは種適期は、山間高冷地域では6月上旬~6月中旬です。これよりも極端に早いと、過繁茂や蔓化して倒伏に繋がります。逆に、遅いと生育量が不足し、減収したり、登熟が間に合わず収穫できなくなったりします。
なお、平坦地域及び山麓準平坦地域では6月下旬~7月中旬がは種適期になります。
は種量は、適期は種であれば3~4kg、遅まきになる場合は4~5kgに増やしましょう。
栽植密度は、畦幅70~80㎝、株間15~30㎝で、乗用管理機等を用いて中間作業を行う場合は管理機等に合わせて畦幅を変えてください。(表1、写真2)
は種時には土壌の湿度に注意しましょう。
は種後に強い降雨があり、クラスト(地表の土壌粒子が分散し、細かい粒子となって地表面に膜状に広がった土膜のこと)を形成すると、出芽の障害となります。出芽不良になり、蒔き直しも考えられるため、強い降雨が予想される場合はは種を避けましょう。
生育初期の除草
雑草抑制には大豆の出芽・苗立ちの確保が第一です。大豆は比較的、葉の繁茂が早いため、生育初期の雑草発生を抑えることで防除できます。しかし、前作で雑草が多かった場合は雑草の種子が落ちていることが考えられるため、①耕起前の茎葉処理除草剤散布、②は種後の土壌処理除草剤散布を行い、防除しましょう。
おわりに
次回は中耕・培土についてです。早めのほ場準備と初期管理をしっかり行い、良い大豆生産を行いましょう。
県北広域本部 阿蘇地域振興局 農業普及・振興課
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高冷地大豆の初期管理(は種・除草)