高冷地大豆の管理(中耕・培土)

はじめに

大豆の安定生産を行うためには、初期の管理はもちろんのこと、中期の管理も大切です。今回は中期の管理として「中耕・培土」について紹介します。

中耕・培土とは

大豆の作付けにおける中耕・培土は、大豆の畝間を耕す「中耕」と、中耕された土を株元へ被せる「培土」に分かれていますが、一般的にこの二つの作業は一工程で同時に行います。中耕は除草効果、培土は土寄せを目的としており、それに付随して、他にも様々な効果が得られます。

写真1 中耕・培土の様子

中耕・培土の効果

⓵除草効果
大豆が開花期頃になると畝間が大豆の葉で覆われるため、雑草の生育を抑制しますが、初期生育時は雑草の生育が旺盛になります。雑草の発生で大豆の生育が抑制されたり、機械収穫時に雑草が絡まり、故障の原因につながります。また、収穫時の雑草の水分が大豆の粒に付着して、汚粒の発生原因にもなります。中耕によって畝間雑草を除去し、畝間を大豆の葉が覆う時期まで抑制することができれば汚粒を未然に防ぐことができます。

 

⓶不定根の発現
培土を行うと土を被った主茎から根が発生します。この根のことを不定根といいます。不定根が発生することで養分の吸収効率が高まるほか、根の張りが良くなります。また、大豆の根に寄生して、窒素を固定し、大豆の生育の手助けをする根粒菌の定着や、活動が活発になるほか、様々な土壌微生物の活動も盛んになるため地力窒素の発現が高まるなどの効果があります。根粒菌が行う窒素固定のうち、80~90%が大豆に使われると言われており、根粒菌の活動が収量増加に大きく影響します。

 

⓷倒伏防止
培土を行うことで株元が土壌で支えられ、また、前述した不定根により根の張りが向上するため倒伏防止につながります。大豆は倒伏すると収穫機械による作業効率が低下するほか、刈取り位置が低くなるため、機械収穫時に土を巻き込み、汚粒の発生につながるため、これらを防ぐことができます。

写真2 汚粒(左)と整粒(右)

中耕・培土のタイミング

中耕・培土は栽培期間中に2回行うのが一般的です。1回目は大豆が1~2葉期(播種後20~30日)に子葉を覆うように培土します。2回目は5~7葉期(播種後30~40日)に第1葉節が土に埋まるように培土をします。
高冷地では前回の「高冷地大豆の初期管理(播種・除草)」でも記載した通り、適期播種時期が6月上中旬となるため1回目は6月中下旬、2回目は7月上中旬となります。
しかしながら、適期に作業が行われないと中耕・培土の効果が上手く発揮されないことがあります。例えば、中耕・培土の時期が早すぎると節間の伸長が抑制されると言われます。逆に遅すぎてしまうと茎が木化し、不定根の発生が少なくなるため、作業時期には十分注意が必要です。

図1 培土の時期と高さ

中耕・培土は畝間かん水に役立つ

大豆は畑で栽培される作物であるため、水に弱く、湿害による影響を受けやすいというイメージを持たれる方も多いと思います。しかし、大豆で安定生産を行うために必要なものも「水」なのです。
写真3のように大豆には紫色の花が咲きますが、開花期に雨が降らず、水分不足になると早期に花が落花してしまいます。すると、莢(さや)や子実が形成されず、着莢(ちゃくきょう)数が減少するので最終的には収量が減少します。また、莢が形成されないと、子実に蓄えられるはずだった栄養分が、莢や子実が形成されないことで行き場を失います。すると、株体に栄養分が留まり、茎や葉が枯れず、青立ちの発生につながると言われています。青立ちになった大豆を収穫すると、株体の水分で大豆が汚れてしまい、汚粒となって品質低下につながります。
中耕・培土を行うことで畝間に溝ができ、かん水しやすくなるというメリットもあります。開花期以降に晴天が続き、圃場の表面が白く乾いた状態になり、日中の葉の反転が50%以上見られるようになったら、かん水を行う必要があります。

写真3 大豆の花

おわりに

培土の高さが高すぎると、最下着莢位置(地面から一番下の莢までの位置)が低くなり、機械収穫時の収穫ロスや走行性が低下したり、収穫時に土を絡んでしまい、汚粒が発生するなどの原因となります。適切な管理を行い、品質の向上に努めましょう。
中耕・培土は大豆の生育環境を向上させ、増収につながる大切な作業ですので、適切な管理を心がけて作業を行いましょう。

写真4 最下着莢位置が低い大豆

県北広域本部 阿蘇地域振興局  農業普及・振興課

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高冷地大豆の管理