1.2020年産の落葉果樹に対する低温遭遇時間は、2月28日時点(甲佐町アメダス値)で976時間と過去10年平均と比べて極めて少なくなりました(図1)。そのため、2020年産「新高」では、低温遭遇時間の不足が要因と考えられる不発芽や花蕾の減少、開花の遅延等が発生しました(写真1、2)。
秋冬期の低温遭遇時間の不足がナシ「新高」の開花に及ぼす影響
研究のねらい
2019年から2020年にかけて、観測史上最も暖かい冬となり、本県のナシ「新高」では低温遭遇時間が不足し、開花時の発芽不良(不発芽や花蕾数の減少)や開花の遅延が発生しました。そこで、「新高」における低温遭遇時間の不足が開花に及ぼす影響を明らかにしましたので紹介します。
研究の成果



2.不発芽は、全側枝齢で発生し、特に1年生枝(腋花芽)では発生割合が79%と極めて高く、次いで2年生枝で高くなりました。3年生以上では、1~2年生枝に比べて発生割合が低くなっています。また、1花叢当たりの開花数は、全側枝齢とも花蕾が減少した花叢の割合が高くなりました(図2)。
3.「新高」の開花期は、通常3月下旬から4月上旬ですが、2020年産は約半数の花叢で開花が遅延しました。開花の遅延は、全側枝齢でみられ、特に1~2年生の若い側枝でその割合が高くなりました(図3)。


普及上の留意点等
1.低温積算時間は、熊本県甲佐のアメダスデータを用い、10月1日から翌年2月28日までの-6~7.2℃の時別温度を積算しました。
2.発芽不良や開花の遅延を軽減するためには、3年生以上の結果枝を主体に利用します。1年生枝は、斜め誘引による短果枝育成後に利用します。
お問い合わせ先
農業研究センター 果樹研究所 落葉果樹研究室
【TEL】0964–32–1723
落葉果樹類
カキ「太秋」は、せん定時に陰芽由来結果母枝を多く残すことで翌年の雌花が確保できる
ニホンナシの幼果の果梗裂傷被害は2月下旬の水和硫黄剤散布で軽減できる
ナシ「秋麗」の裂果は新梢(しんしょう)停止後の降雨で発生が助長される
ナシ「甘太」の本摘果時における着果程度と収量性
ナシ「新高」の矮小花および遅れ花への受粉が着果及び果実品質に及ぼす影響
クリ「美玖里(みくり)」は幼木期に結果母枝を切り返すと収量が増加する
白一重袋を被袋したナシ「甘太」は収穫後にポリ個装することで日持ち性が向上する
果皮色が濃く外観が優れるカキ「麗玉(れいぎょく)」の特性
施設栽培カキ「太秋」は10月上旬のビニル被覆により12月出荷が可能である
(No.885(令和元年(2019 年)5 月)分類コード 02-10)ナシ「秋麗」は5℃〜10℃で貯蔵すると1か月程度、15℃では2週間程度品質が保持できる
(No.883(令和元年(2019 年)5 月)分類コード 01-10)ナシ「甘太」の白一重袋の被袋時期が果実品質ならびに日持ち性に及ぼす影響
(No.884(令和元年(2019 年)5 月)分類コード 01-10)エテホン散布によるナシ「あきづき」の熟期促進とコルク状果肉障害の軽減効果
(No.841(平成 30 年 5 月)分類コード 02-10)モモ新品種「さくひめ」の特性と県内における導入可能地域の推定
(No.840(平成 30 年 5 月)分類コード 01-10)クリ「ぽろたん」の果実腐敗の主要因は黒色実腐病である
(No.842(平成 30 年 5 月)分類コード 04-10)クリ「美玖里」における雌花の着生が多い優良な結果母枝の資質
(No.801(平成 29 年 5 月)分類コード 01-10)クリ「ぽろたん」におけるネスジキノカワガの虫糞を指標とした防除適期
(No.802(平成 29 年 5 月)分類コード 04-10)ナシ「秋麗」の除芽による摘果作業労力軽減技術
(No. 710(平成29年5月) 分類コード 02-10)平坦地における収穫ネットを活用したクリ収穫作業の省力化
(No.803(平成 29 年 5 月)分類コード 02-10)摘蕾および早期摘果によるナシ「あきづき」果実のコルク状果肉障害発生軽減
(No. 794 (平成 29 年 5 月)分類コード 02-10)ナシのモザイク症状の被害は展葉初期から新梢伸長期までの2回の薬剤散布で軽減できる
(No.705 (平成28年5月) 分類コード 04-10)ナシのモザイク症状に対して被害抑制効果の高い薬剤
(No.755(平成28年5月)分類コード04-10)ナシ「甘太(かんた)」に適した果実袋の選定
(No.753(平成 28 年 5 月)分類コード 02-10)カキ「太秋」の袋掛けによる雲形状汚損発生軽減効果
(No.754(平成 28 年 5 月)分類コード 02-10)クリ毬果に対するネスジキノカワガ被害の品種間差
(No.759(平成28年5月)分類コード04-10)