トルコギキョウ育苗における種子冷蔵処理と育苗時の温度および底面給水水位の影響

農業研究センター農産園芸研究所花き研究室

研究のねらい

トルコギキョウ自家育苗では、発芽や生育の遅れ、転び苗による生育不良(図1、2)が発生しています。そこで、対策技術の構築を目的に種子冷蔵処理、育苗時の温度および底面給水水位の影響を明らかにしました。

図1 転び苗
(左:転び苗、右:正常苗、試験3)
図2 転び苗による生育不良(試験3)

研究の成果

1.種子冷蔵処理は発芽日数と生育に影響を及ぼします。
※発芽日数は、育苗開始から子葉展開を確認したときまでの日数です。
(1)発芽日数は、種子冷蔵処理ありが処理なしよりも3日程度短く、種子冷蔵の温度10℃が8℃より0.5日短くなります(図3a)。
(2)生育は、種子冷蔵処理ありが処理なしよりも早く、種子冷蔵の温度10℃と8℃では差が小さいです(データ省略)。

2.育苗時の温度は、発芽日数と生育に影響を及ぼします。
(1)発芽日数は明期30℃が22℃よりも3.2日程度短くなります(図3b)。
(2)生育は明期30℃が22℃より早くなります(データ省略)。

図3 発芽日数および発芽率に及ぼす影響

3.底面給水の水位は発芽日数に及ぼす影響は小さく(図3c)、生育不良を引き起こす転び苗の発生と生育に影響を及ぼします。
(1)転び苗の発生率は、育苗13日目までは水位による差は小さく、その後は水位0.5cmが水位3cmよりも低く、発生程度は品種間で0%~45%と差があります(図4、図5)。

図4 底面給水水位が転び苗発生率に及ぼす影響(試験3)
図5 転び苗に及ぼす品種間差の影響(試験4)

(2)生育は、水位3cmが水位0.5cmより早くなります(表1、図6)。

図6 育苗55日目の苗の様子
(左:水位0.5cm、右:水位3cm)

成果活用面・留意点

1.トルコギキョウの自家育苗における生産安定技術の構築に活用できます。

2.試験1の試験条件
(1)種子冷蔵処理:暗黒下で35日間
(2)冷房育苗における温度設定 8~18時:28℃、18時~8時:18
(3)育苗期間:2020年6月26日~8月19日(54日)
(4)灌水:水位2cmでの底面給水
(5)容器:288穴のセルトレイ
(6)床土:MKK花用セル培土(南九州化学工業株式会社)

3.試験2の試験条件
(1)種子冷蔵処理:暗黒下で10℃日間
(2)場所:人工気象室(13時間日長、PPFD2000μmol・m-2s-1
(3)育苗期間:201811月6日~1226日(50日)
(4)灌水:水位1cmでの底面給水
(5)容器:288穴のセルトレイ
(6)床土:MKK花用セル培土(南九州化学工業株式会社)

4.試験3の試験条件
種子冷蔵処理:暗黒下で1035日間、その他の管理は試験1と同様

5.試験4の試験条件
種子冷蔵処理:暗黒下で1035日間、灌水は水位3cmでの底面給水、その他の管理は試験1と同様

 

No.970(令和4年(2022 年)6月)分類コード 02-05
970_トルコギキョウ育苗における種子冷蔵処理と育苗時の温度および底面給水水位の影響

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