夏秋トマトのセル苗直接定植栽培技術の改良
研究のねらい
高原地域の夏秋トマト栽培では、近年、育苗の省力化やコストの低減等を目的とした3葉期セル苗の直接定植が行われていますが、慣行のポット苗での定植に比べて生育初期の過繁茂や、収穫開始の遅れによる減収が生じていました。そこで、セル苗直接定植栽培時における初期の生育抑制を目的に、定植時の苗齢を引き延ばした場合の生育および収量について明らかにしたので紹介します。
研究の成果
1.セル苗を育苗期に9葉齢まで引き延ばして定植すると、一般的な3葉期に定植するものに比べて初期の生育が抑えられました(図1)。
2.同じ日に定植すると育苗期間が長いものほど収穫開始日は早く、3葉期セル苗定植に比べて9葉期セル苗定植は19日、ポット苗定植は21~26日早くなりました(表1)。また、それに伴い7月までの初期収量はポット苗定植>9葉齢セル苗定植>3葉齢セル苗定植となりました(図2)。
3.3葉期セル苗定植では、ポット苗定植と比べて可販果率が低下し可販果収量も23~24%減少したのに対し、9葉期セル苗定植では、ポット苗と比べて可販果率の低下は見られず可販果収量も1~11%の減少に留まりました(表1、図2)。
普及上の留意点等
1. 供試品種は、穂木「りんか409」(サカタのタネ)、台木 「グリーンセーブ」(タキイ種苗)を使用し、育苗ポットは12㎝、セルトレイは、3葉期セル苗には128穴、9葉期セル苗には50穴を用いました。
2.本成果は、省力化のためにセル苗直接定植を行う場合に活用できます。なお、夏秋トマト栽培においてはポット苗での定植が生育、収量ともに安定します。
3.セル苗の育苗においては葉色の低下に注意し、葉が黄化した際は液肥による追肥を行ってください。
お問い合わせ先
熊本県農業研究センター 高原農業研究所 【TEL】0967-22-1212
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