最高温湿度指数が72を超えると、乳用牛の採食時間は 有意に低下する

畜産研究所大家畜研究室

1 研究のねらい

近年、スマート農業機器の普及により、生産者自身が牛の行動時間をモニタリングセンサーで確認できるようになってきました。また、畜産現場では、暑熱ストレスの一つの指標として温湿度指数(以下THI)が利用されています。しかし、THIと牛の行動との詳細な関係性は明らになっておりません。
そこで、THIと牛の行動の関係を解明し、暑熱ストレス指標としてのTHIの有効性の検証および適切な暑熱対策開始時期を明らかにしましたので、その結果について紹介します。

行動モニタリングセンサーを装着した牛

2 成果

(1)最高THIが、牛が暑熱ストレスを感じるとされる72を超える暑熱期では、暑熱期終了後と比較して採食時間、横臥(反芻および非活動)時間が有意に低下しました。一方、起立(反芻および非活動)時間は増加しました(表1)。

(2)最高THI72を超える暑熱期においては、1頭あたりの乳量は低下する傾向にありました。以上のことから、最高THI72は暑熱ストレスの影響を測る指標として適切であることが確認されました。

(3)最高THI72を指標として、県内の気象庁観測地点の過去5年の暑熱期開始日を試算すると、年によって違いはあるものの、熊本では5月上旬、人吉では4月下旬から暑熱期が始まることが明らかになりました。

3 留意点

(1)最高THIは、当センター酪農牛舎内に設置した温湿度計データから次式により算出しました。最高THI=1.8×最高気温+32)-{(0.550.0055×平均湿度)×(1.8×最高気温-26.8)}

(2)県下各地ではそれぞれ気象条件が異なることから、各地域でTHIを計測し、暑熱対策開始時期を把握する必要があります。

 

No.1022(令和5年(2023年)6月)分類コード 08-13
最高温湿度指数が72 を超えると、乳用牛の 採食時間は 有意に低下する