球磨地域における水稲「ヒノヒカリ」、「にこまる」の安定栽培のための好適出穂期

研究のねらい

球磨地域で良食味米として作付けされている「ヒノヒカリ」、「にこまる」は6月上旬に移植最盛期を迎えますが、近年、登熟期間の高温による「ヒノヒカリ」の品質低下が問題となっています。一方で、高温登熟耐性を有する「にこまる」は、登熟期間が低温の年には充実不足になることが問題視されています。そこで、「ヒノヒカリ」および「にこまる」の生育調査の結果を基に、2品種の安定栽培が可能な好適出穂期を明らかにしました。

 

研究の成果

1. 「ヒノヒカリ」は出穂後20日間の平均気温が約25℃を超えると検査等級が低下します(図1)。

図1 「ヒノヒカリ」における出穂後20日間の平均気温と検査等級の関係(1989~2016年)
注)検査等級は、1等(1,2,3)、2等(4,5,6)、3等(7,8,9)及び規格外(10)で表す。

2. 「にこまる」は出穂後20日間の平均気温が24℃以下となると、登熟期間が長くなります(図2)。

図2 「にこまる」における出穂後20日間の平均気温と登熟日数の関係
注)2002~2007年、2012~2016年の11年間のデータ**は1%水準で有意であることを示す。

3. 「ヒノヒカリ」中苗を615日前後に移植した場合、平年の出穂期は822日となります。825日以前に出穂した場合の出穂後20日間の平均気温は25℃以上となるため、高温により「ヒノヒカリ」の検査等級が低下する可能性が高くなります(図3)。

図3 球磨地域における出穂後20日間の平均気温及び24℃以下年の出現率
注)気象データは1989年~2016年の28年間

4. 以上より、球磨地域における「ヒノヒカリ」「にこまる」の安定した栽培のための好適出穂期は、出穂後20日間の平均気温が25℃となる825日を基点として、「にこまる」は825日以前、「ヒノヒカリ」は825日以降となります。

普及上の留意点等

1. 熊本県農業研究センター球磨農業研究所(球磨郡あさぎり町)での試験結果です。

2. 「ヒノヒカリ」は平成元年から平成28年の作況調査、「にこまる」は平成14年から平成28年の奨励品種決定調査のデータです。

3. 気象データは気象庁アメダス(地点:あさぎり町上、標高166m)を使用しました。標高の高い地域ではより低温になるため注意してください。

お問い合わせ先(担当者所属)

熊本県農業研究センター アグリシステム総合研究所生産情報システム研究室

TEL】0965-52-0372

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