阿蘇「コシヒカリ」の黒ボク土における作付前土壌の可給態窒素量に応じた窒素施肥法

農業研究センター 高原農業究所

研究のねらい

阿蘇地域の主力品種「コシヒカリ」は特別栽培米として高い評価を得ていますが、さらなる食味向上が求められています。しかしながら、阿蘇の土壌は火山灰を母材とする黒ボク土のため、地力窒素が供給されやすく、玄米タンパク質含有率が高くなりやすい問題点があります。
そこで、近年開発された可給態窒素(土壌からゆっくりと作物に供給される窒素)の簡易測定技術を活用し、特別栽培米の耕種基準を守りながら、作付前土壌の可給態窒素量に応じた施肥を行うことで目標とする「収量450kg/10a以上」「玄米タンパク質含有率7%以下」を両立できる栽培技術を確立しましたので紹介します。

研究の成果

阿蘇「コシヒカリ」の特別栽培(標準施肥量は、基肥窒素4.0kg/10a、穂肥窒素1.5kg/10a)の条件において、作付前土壌の可給態窒素量に応じた窒素施肥の影響は以下のとおりです。
1. 作付前の土壌の可給態窒素の量に関係無く、穂肥を施用しないことで、玄米タンパク質含有率は7%以下となります(図1)
2. 可給態窒素量が18mg/100g乾土程度以上の場合、基肥施用のみで穂肥を施用しなくても450kg/10a以上の収量を得ることができます(図2)。
3. 可給態窒素量が18mg/100g乾土程度未満の場合は、基肥窒素を標準よりも多い5.5kg/10aとすることで穂肥省略による収量の低下を抑えることができます(図3)。

図1 作付前土壌の可給態窒素量と玄米タンパク質含有率との関係
図2 作付前土壌の可給態窒素量と精玄米重との関係
図3 可給態窒素量が18mg/100g乾土未満のほ場における施肥法と収量との関係
注1)同一英文字間には多重比較(Tukey法)の結果、5%水準で有意差が無いことを示す

普及上の留意点等

1. 高原農業研究所内水田(阿蘇市一の宮町:標高543m)及び阿蘇市山田の現地ほ場で、5月中旬~下旬に移植した試験結果です。
2. 肥料は基肥にくみあい苦土・有機入り化成0335(窒素10-リン酸13-カリ3:窒素有機率50%)、穂肥にくみあい苦土有機入り化成0446(窒素10-リン酸4-カリ4:窒素有機率10%)を使用しました。
3. 土壌の可給態窒素量は、農研機構が発表した水田土壌可給態窒素の簡易・迅速評価マニュアルの絶乾土水振とう抽出法(迅速評価法)で測定しました。
4. ほ場の減水深など、土壌の可給態窒素量以外の要因で収量が変動する場合があること、また、迅速評価法は測定値にややブレがあることに留意する必要があります。

主食用米