こだわっとる農

ブドウ・温州ミカン

山鹿市 信頼ある美味しいブドウづくりへのこだわり

社方 武路さん(社方園)

はじめに

私が住む山鹿市三玉地区久原は、石を含んだ水はけの良い土壌と、「くまもと名水100選」にも選ばれている「一ツ目水源」を活用した歴史あるブドウ産地です。我が家では、父が50年前頃からブドウ栽培を始め、地域のリーダーとして九州ブドウ愛好会の会長を務めるなど、山鹿ブドウの産地化を図ってきました。
私も、父のその姿をみながら、県立農大を卒業後就農し、品種、管理方法などを改善しながらブドウ栽培面積を拡大し、直売を主体とした経営を行っています。

ブドウ栽培へのこだわり

品種、栽培技術の改善

苗木の植え付け

以前は、「巨峰」を主体とした長梢(ちょうしょう)仕立て栽培でしたが、ジベレリン、短梢(たんしょう)仕立てなどの栽培技術を導入し、「シャインマスカット」や「クイーンニーナ」などおいしく食べやすい人気の品種に更新してきました。
これらの品種、栽培技術の導入には、九州ブドウ愛好会における九州各県の優良農家での研修や山梨県や岡山県のブドウ先進地からの品種情報を入手しながら、売れるブドウ品種の栽培に取り組みました。また、販売期間をできるだけ長くするため、加温栽培、無加温栽培を導入し、7月から9月まで安定した販売ができるよう品種と組み合わせた栽培を行っています。特に品種更新では、高樹齢になると結果母枝の生育、果実肥大・品質にばらつきが出るため、早めの更新を行っています。

管理作業の省力化への取り組み

ブドウ栽培は、摘蕾(てきらい)、摘粒、摘房などの着果管理や枝梢管理など細かな管理作業に多大の労力を要します。そのため、これらの管理作業を省力化できないか、いろいろ試行錯誤しながら、無駄な作業をなくすよう取り組んでいます。花房整形の省力化や早めの摘房、また摘心により開花を揃えることで無種子化のためのジベレリン処理が一斉にでき、無駄な管理作業をなくすことができています。特に、シャインマスカットなど強い品種は新梢(しんしょう)管理に多大の労力を要しますが、早めの摘心等で副梢管理労力を減らすことができています。
このような取組みで省力化が図れるとともに、初期肥大を促進でき、品質向上にもつながっています。

シャインマスカット結果状況(加温6月)

果実袋を掛けないブドウ栽培

加温栽培、無加温栽培では、新たな取組みとして無袋栽培を行っています。袋をかけないことで、糖度が高くなるとともに、成熟度合いの把握により適期の収穫ができ、品質のばらつきがない果実を、お客様に提供できています。
以上のように、「いかにおいしいブドウづくりをするか」を常に頭の中において、そのために何ができるか、何をしなければいけないかを考えながら、少しずつ管理方法を改善しています。

無袋、傘掛けでの栽培(7月)

直販を主体とした出荷・販売

以前は市場出荷が主体でしたが、消費者に直接届けることができる直販を拡大して、現在は8割を直販や契約販売が占めています。ブドウ園の横に直売所を増設し、今年は72日より販売を開始しました。例年、多くの皆さんが楽しみにされている「ぶどう祭in社方園」は、今年も昨年に引き続きコロナウイルス感染防止の観点から中止としましたが、ダイレクトメール便や口コミで、多くの皆様に来て頂いています。
直販、契約販売においては、信頼ある果実を販売することが重要で、そのためにも、前述した管理作業への取り組みで、品質のバラツキのないおいしい果実を生産することが最も大事です。

今年増設した直売所
直売所(箱詰め)
今年増設した直売所

地域での取り組み

どこの地域にも見られるように、私の地域でも生産農家の高齢化や後継者不足で農地の遊休化が進んでおり、ブドウや柿などの果樹も遊休園が点在するようになってきました。このような状況の中で、自宅周辺の遊休園において昨年30a新植しました。地域の農地の保全と併せて、若木への更新、需要に見合う生産量の拡大などを図っています。
915日は「マスカットの日」で、この日に併せて、地元小学校の給食にブドウを提供し、ブドウのおいしさと「山鹿ブドウ」を知ってもらうために行っています。

ブドウ栽培研修の受け入れ

現在、県の指導農業士として、農業普及・振興課からの研修生を受け入れています。また、最近、地元でもブドウ栽培に興味をもち、経営の一環として取り組みたいと、研修を希望される生産者も増えています。ブドウ生産の全体のレベルがアップすることが、おいしいブドウづくり、引いては山鹿産ブドウの消費拡大に繋がるので、研修を快く受けいれ、管理技術や研修後の情報交換など細かな点まで惜しみなく教えています。県立農大生の実習等も受け入れています。

今後は

以前から、ミカン栽培はブドウ栽培との労力分散の点で経営の柱としてきましたが、ブドウの加温栽培面積の増加に伴い、十分な管理ができないので、将来的にはミカン栽培を縮小しながら、ブドウ栽培・販売に力を入れていきたいと考えています。

社方 武路さん(社方園)

 

〇経営概要
◆ブドウ2ha
【栽培方法】加温栽培75a、無加温栽培35a、トンネル栽培60a、未結果樹30a
【品種】「シャインマスカット」1.4ha、「クイーンニーナ」0.4 ha、他「ピオーネ」「ベリーA」等。
◆温州ミカン2ha

 

〇労働構成
本人・妻・父・母(繁忙期には雇用を入れている)

 

〇出荷・販売直売、契約販売、市場出荷(主体は直販)

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