こだわっとる農

水稲、飼料稲、高菜、カボチャ

天草市五和町手野地区 地域営農法人の人材確保と育成 ~「(農)芹生の郷ての」の取り組み~

農事組合法人 芹生の郷(せりふのさと) ての

はじめに

天草市五和町手野地区は、旧五和町の西部に位置し、南北に内野川が流れ、その支流に沿った平地と、標高の低い中山間地に集落や農地が点在しており、川沿いの平坦地ではイチゴやトマト、葉たばこ、中山間地の傾斜地では、温州ミカン、デコポン、晩柑などが栽培されています。

手野地区の2020年度の総農家戸数は126戸で、この10年間で54戸が減少し、経営耕地面積は115ha10年前に比べると約30%減少しています。

このように農家の高齢化が進むなかで、耕作が困難となった農地を集積し、農業の担い手へ貸し出す体制づくりが課題でした。平成28年度には「手野地区営農改善組合」が設立され、県の農地集積加速化事業に取り組まれました。農地集積計画を検討し、将来の農地について何度も協議する中で、将来の手野地区の農地を守る担い手として、法人設立が検討され、平成30年4月に「(農)芹生の郷ての」が設立されました。

経営理念(現在の農地が荒廃することを避け、地域の農地を守る法人を目指す)

①これから農業が置かれる変化に対応できるように、地域に根差した法人を目指すこと、②水稲を基礎としつつ、生産コストや労力等を鑑みて、最も土地に合った作物を生産すること、③次世代の育成や関係機関と連携し、地域の存続に寄与し経営できる法人とすることを経営理念としています。

地元からの人材発掘

設立当初は、水稲100a、高収益作物として、高菜約90a、抑制カボチャ約20aの作付を行いましたが、地域の農地は地主による耕作面積が全体の約半数を占めており、うちたばこ耕作者の2戸の作付面積が約10haもあり、法人の農地は分散し耕作面積も少ない状況でした。また、法人の運営についても一部の会員がボランティア的に協力しながらの運営となっていました。更に、協力している作業員は平均年齢が72歳と高齢で、比較的近い将来に労働力不足になることは避けられない状況にありましたが、常時雇用しようにも給与の支払いが困難なことや機械設備がないことが課題でした。

 

適当な人材を探している中で、偶然、手野地区の実家に柳原氏が帰郷し、新たな職を探されていることから雇用の話が進み、法人での常時雇用する給与の支払についての検討を始めました。

雇用の確保と人材育成

柳原氏は年齢が50歳を超えており、国の農業次世代人材投資資金の活用ができません。しかし、天草市では独自の新規就農支援制度が創設されており、天草市新規就農者給付金(準備型)を活用し柳原氏の雇用を行いました。給付金制度は独立・自営就農等を目指す方への支援が目的のため、法人の作業を行いながら、法人副組合長のキュウリ栽培ハウスにて施設栽培で技術習得をされています。また、農業機械の導入については、補助事業を活用し最小限の機械を導入されましたが、不足する機械は組合員が所有する機械を利用するようにしています。

柳原氏を雇用後、コロナ禍による広島菜の契約打ち切りがありましたが、高菜の栽培が軌道にのり、経常利益も順調に伸びました。また、経験を重ねるごとに作業効率が向上し、特に高菜の作付作業は、初年度と比較して2倍以上に効率化が図られました。また、柳原氏は法人が集積した農地だけでなく地域内の担い手(管理者)として認識されています。

柳原 修 氏

(紹介:天草広域本部農業普及・振興課)

<プロフィール>
農事組合法人 芹生の郷(せりふのさと) ての

◯経営概要
理事5名、監事2名、運営委員(営農部、女性部、総務経理部、機械・オペレーター部

◯水稲1.6ha、飼料稲2.75ha、高菜90a、カボチャ50a

◯主な労働力
常時雇用1名 他、理事、組合員

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