【Tue】

Vitamin Table 〜第22回 にらのおはなし〜

寒さ厳しい季節、いかがお過ごしでしょうか。今月は、生命力が強く、体を温め内臓の働きを活発にしてくれるスタミナ野菜、にら(韮)について紐解きます。

にらの歴史

ユリ科ネギ属のにらは、中国西部原産。北はモンゴル、南はマレーシア、ベトナムまでアジア地域で古くから栽培され、原産国中国では3000年前から。日本に伝わったのも、古く9~10世紀頃といわれ、古事記や日本書記、本草和名にも記されています。

栽培は…

歴史古い野菜ですが栽培が本格化したのは明治以降。1945年以降、食の多様化により消費が急増しました。暑さにも寒さにも強い緑黄色野菜ですが、施設栽培が進み、1年を通して出回りますが、旬は冬から春にかけてといわれています。

野菜だけど薬効が高い…

にらはねぎと同様、体を温め解毒の力があるといわれ、冷え性改善や胃腸の調子を整える等漢方生薬として利用されることもあります。また「精」を養うものとして、疲れたときなどに食されます。にらの種もすりつぶして漢方生薬として不妊症の治療や頻尿、夜尿症に使われているのだそうです。

こんな薬効とパワーあるにらの産地へ…

同じ株から年に何回も収穫できるにら。全国では高知・栃木・茨城・宮崎など有数な産地ですが、熊本の生産高は平均10位くらいを推移しているそうです。県内の生産量の約4分の1、年間300t近く生産する甲佐町へ…。町の特産品として地元の認知度も高まりつつあり「ニラ侍」というキャラクターもいるほどです。

白旗地区で18年近く栽培に取り組まれるニラ部会長の本田新さん、美和さんご夫妻をお訪ねし、甲佐町でのにらの歴史や栽培のご苦労など伺いました。
甲佐町はかつてメロン栽培が盛んな地域でしたが、市場価格や栽培・作業負担が大きいこと等から生産量が徐々に減少、一方にらは作業負担も軽く価格も安定、減反政策等もあり昭和50年代数軒で栽培が始まったのだそうです。先進地宮崎県西都市へ研修に出かけたりしながら学び、徐々に広がったといわれます。需要の急激な伸びは、「博多もつ鍋」ブームの到来によるものも大きいとも…。
生命力が強いにらは、葉を切ると切り株からすぐに新たな芽が伸び、夏場は25日ほどで、冬場は35日から40日ほどで成長し再び収穫できるようになるのだそうです。
市場で高値がつく時期は夏場(暑さによる品質低下→数量減少、葉野菜品薄時期)と冬場(低温で収穫サイクルが遅い→数量減少)なのだそうですが、ほぼ通年安定した価格で入手できるでしょう…と。
昨年の熊本地震では地盤沈下や亀裂、隆起したりと、ハウスが倒れるまではいかなかったものの骨組みは歪み、同じハウスの中でも均一に育たなくなっていると、地震被害のことを伺いながらハウスへご案内いただきました。圃場に足を踏み入れると、青々してボリュームある葉が一面に…。にら独特の香り成分に元気とパワーをいただいた取材でした。

にらの栄養と機能性

〇体内でビタミンAに変わるβカロテン、ビタミンB群、葉酸、C、E、Kを豊富に含んでいるのでこれらの相乗作用でガン予防やアンチエイジング、風邪予防や疲労回復、肌荒れ解消など健康効果を発揮します。

〇香り成分、硫化アリルの1種アリシンは、ビタミンB1の吸収を高め疲労回復やスタミナ強化に繋がります。

〇セレンは、コラーゲン生成に必要なビタミンCの働きを助け、抗酸化ビタミンやアリシンとともに体内の過酸化脂質の生成を抑えてガン予防にもはたらく成分です。

保存と選び方

〇葉が肉厚でしなやかな弾力があるもの、軸が丸くしっかりしたものを選びましょう。

〇乾燥しないようにラップで包んだり、購入時の袋に入れて、冷蔵庫で立てて保存。

洗って水けをふき、使う大きさに切って保存袋に入れて冷凍しておくのも生産者さんのおすすめです。

お伝えしてきたように様々な薬効が高い「にら」…。これから立春まで一年で一番寒い時期が続きます。体を温め体を強くしてくれる健康野菜のパワーで、寒さを乗り切り、元気に過ごしませんか。

ぱぱっと簡単レシピ

にらと卵のみそ汁

<材料2人分>
にら 1/2
卵 2
だし汁 2カップ
みそ 大さじ2

 <作り方>
⑴ニラは5cm長さに切る。
⑵鍋にだし汁を煮立て、火を止めてみそを溶き入れる。
⑶⑴を加えて再び火にかけ、煮立ったら溶き卵を細く流し入れ、ひと煮する。

にらのコロッケ

<材料2人分:4個分
にら 1
合ひき肉 50g
サラダ油 大さじ1/2
塩 小さじ1/2
こしょう 少々
じゃがいも 中2
キャベツ 4
レモン 適宜
薄力粉・溶き卵・パン粉 各適量
揚げ油 適量
ソース 適宜

<作り方>
⑴にらは約1㎝くらいの小口切りにする。フライパンにサラダ油を入れ合ひき肉を炒め、にらも加えてさっと炒め、塩こしょうをしておく。
⑵じゃがいもは皮をむいて一口大に切り、茹でて、熱いうちにつぶす。
に⑴を混ぜ、4等分にしてまとめる。
⑷薄力粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけ、揚げ油でカリッと揚げる。
⑸キャベツのせん切り、レモンと一緒に器に盛り好みのソースを添える。

このページをシェアする
  • Vitamin Table

Vitamin Table

持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

カテゴリ

アーカイブ