【Sat】

Vitamin Table 〜第30回 柿のおはなし〜

暦の上では「処暑」。暑さがおさまる頃という意味の「処暑」ですが、まだまだ暑さは続いています。そろそろ夏の疲れが出やすい頃でもあります。いかがお過ごしでしょうか。
今回は「柿色」という独特な日本の色で表現される、やさしい甘みの秋の果物…9月から11月にかけて旬の「柿」について、紐解きたいと思います。

中国が原産で、奈良県では大和朝廷の時代から栽培されていたとの記録が残されているくらい、古来より日本人に親しまれてきた果実のひとつです。果実としてだけでなく、皮、柿の葉の若葉なども食用とされてきました。
また家具の木材として、さらに柿渋も、防腐剤、防虫剤として染物、塗り物などに使われてきました。柿渋には、繊維を強くする効果があり、衣服以外にも漁業で使う網にも利用されていたという…日本人の生活に欠かせない植物です。

柿の品種

大きく分けて「甘柿」と「渋柿」に分類でき、受粉に関係なく渋が抜ける「完全甘柿」、受粉で種ができることにより渋が抜ける「不完全甘柿」、受粉しなくても結実する単為結果で渋抜きが必要な「渋柿」です。その渋柿は種が入ってもゴマができず渋いままの「完全渋柿」、種が入ると種のごく周辺だけ渋みが抜ける「不完全渋柿」に分類されます。そしてその品種の数は世界で千種にも上るといわれ、日本では数十種、地域の名前がついた地方品種も多く存在します。代表的な品種を表にしてみると表1のとおりです。

表1 代表的な柿の分類

全国の柿の産地は…

平成27年産のデータによると、1位和歌山県、2位奈良県、3位福岡県ということですが、熊本県が推奨する品種「太秋」は、なんと熊本県が1位で、全国の栽培面積の約40%を占めているのだそうです。

熊本の柿事情を知りたくてココへ!

お邪魔したのは宇城市にある「熊本県農業研究センター果樹研究所」。「落葉果樹研究室」の北村室長にお話を伺ってきました。
熊本県が推奨されている「太秋」は、旧農林水産省果樹試験場安芸津支場において昭和52年に「富有」に「IIiG-16」(「次郎」×興津15号(「晩御所」×「花御所」))を交雑して育成された甘柿の品種です。平成元年より安芸津10号の系統名で第4回系統適応性検定試験に供試され、平成6年8月11日付で「かき農林7号」として登録・公表されたもの。熊本県では、平成7年より、現地適応試験を上益城、宇城、植木町で行い、徐々に試験導入されていったといわれます。

指導の中心は①大玉つくり(350g以上)②外観の向上(条紋と呼ばれる筋が果皮に生じやすい。条紋を生じたものは糖度が2~3度高いが、汚損果と混同され外観の劣る果実と評価される可能性があるため、露地栽培では雨よけと湿気を軽減し果実の表面をきれいに仕上げる袋かけもすすめられている。)の2点に特に力を入れられているそうです。
大玉づくりの基準として、摘(てき)蕾(らい)→摘果→摘花、葉25~30枚に1果が目標のひとつとか。高い木で作業するのは危険も伴い、効率も悪いため、樹高を低くする棚栽培が導入され、約2mのところに鉄パイプを格子状に張って棚を設置、枝を誘引して低い樹が作り上げられていました。この棚栽培の導入の結果、作業の省力化はもちろん、色付きの良い大玉の果実が収穫できるようになってきたのだそうです。
栽培導入して約20年、県も産地も様々な研鑽と努力を重ね、品質・食味共に主力品種として成長してきている、というお話でした。

古くから伝わる保存食「巻き柿」の里を訪ねて…

お邪魔したのは、山都町(旧矢部町)犬飼地区、中村豊光さん悦子さんご夫妻。
約700年前に阿蘇大明神が城下を見下ろしながら投げた烏帽子の下から芽生えた珍しい「柿」が「投烏帽子」となり「なやぼし」となまったと伝えられるそうです。明治の初頭に自生していた柿を白糸地域に植栽されたのが栽培のはじまりで、城山1里四方の粘土質に富んだ土地で、特に品質の良い果実が採れるそう。この柿を干して、丁寧に種をとり、平らにして13~15枚くらい重ねて、小さなラグビーボールのような形状に整えていくのだそうです。
固めた柿は殺菌作用がある真竹の皮で包み、60年以上前からある、米俵の縄をなう器具を使ってなった縄で力をこめて、空気を抜くように巻いていく。この密封状態と竹皮の殺菌成分により、2月末までは鮮度保存できるということです。

竹の皮は筍のシーズンにとって保管しておく、縄も青刈りした稲藁をとっておき、使うのだそうです。農閑期の仕事のひとつとおっしゃいますが、その準備には年中手間がかかる、作り手の愛情こもった地域の大切な宝の手仕事と感じました。以前、お茶席のお菓子としていただいた際、カットされた断面は干し柿の表面に析出した飴色の糖が層になり、薔薇の花のような切り口が美しく、自然の芸術品のようだったことを思い出しました。
笑顔が素敵なご夫妻のあうんの呼吸で紡がれる手仕事のお話をたくさん伺い、干し柿は福を「カキ」寄せ「カキ」集める…といういわれを実感しました。12月頃には出荷されるという今季ものを心待ちにしたいと思います。

写真提供:「山都町文化遺産保存活用事業実行委員会(山都町郷土史伝承会)」

柿は健康フルーツ!

昔から「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるように、柿はビタミン・ミネラルが豊富です。・ビタミンCは100g(約1/2個あたり)70㎎。・抗酸化作用が高いβカロテンやβクリプトキサンチンも豊富。・体内の余計な塩分を排出してむくみを防ぐカリウムが豊富。・渋味成分タンニンにはアルコール分解作用があり二日酔い解消に効果的です。

 

この秋は、形も食感も味も様々、種類豊富な柿を食べて毎日を健康に美しく過ごしましょう。

ぱぱっと簡単レシピ

柿と玉ねぎとしめじのさっと炒め

<材料2人分>
柿 1
豚切り落とし肉 160g
玉ねぎ 中1
しめじ 1/2パック
バルサミコ酢 大さじ1(酢大さじ1/2でも可)
薄口しょうゆ 大さじ1/2
オリーブオイル 大さじ1
塩、こしょう 少々

 

<作り方>
⑴柿はヘタをとり皮と種を除いていちょう切り。豚肉は食べやすい大きさに、玉ねぎは繊維に沿って薄切り、しめじは石づきをとってほぐしておく。
⑵フライパンにオリーブオイルを入れて、豚肉を炒め、玉ねぎ、しめじ、柿の順に加えて炒めバルサミコ酢、薄口しょうゆ、塩、こしょうで味をととのえて器に盛る。

柿としめじの白和え

<材料2人分>
柿 1
しめじ 1/4パック
絹ごし豆腐 150g
すりごま 大さじ1
塩 小さじ1/2

 

<作り方>
⑴ザルにリードペーパーを敷いて絹ごし豆腐をのせてラップをし、冷蔵庫で1時間ほど水切りする。
⑵柿はヘタをとり、皮と種をのぞいていちょう切りにする。しめじは石づきをとってほぐし、さっと茹でて冷ましておく。
⑶柿としめじをボウルに入れ、⑴の豆腐をほぐしながら加え、すりごまと塩を加えてよく混ぜて器に盛る。

柿とモッツアレラチーズのサラダ

<材料2人分>
柿 1個
モッツアレラチーズ 1/2
ピスタチオ 10
くるみ 6
オリーブオイル 大さじ1
塩 少々

 

<作り方>
⑴柿は皮をむき、ヘタと種をとりのぞき、くし形切りにする。
⑵ピスタチオは茹でて皮をむき、粗みじん切り、くるみも粗みじん切りにする。
⑶ボウルにモッツアレラチーズをちぎりながら入れ、⑴と⑵を加えてオリーブオイルを回しかけ塩で味をととのえ、器に盛る。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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