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Vitamin Table 〜第37回 セロリのおはなし〜

おかげさまで「ビタミンテーブル」担当させていただき4年目を迎えました。県内各地に取材に伺い、その都度、生産者様、地域の方々にお世話になって連載を重ねてくることができました。改めてお礼申し上げます。
熊本は、豊かな自然と地下水に恵まれ、1年を通して、野菜に限らず、様々な農産物を収穫できる全国でも稀にみる豊饒な土地。同じ季節でも地域によって気候が異なり産地が移っていくことにお気づきいただいておりますでしょうか。地域ごとの旬をリレーしながら年間を通して県産の農産物を食せる本当に豊かで幸せなところですね。
今年度も、熊本の農のタカラを紐解き、野菜・果物に関わる方々、熱い取り組み、おいしい楽しみ方などご紹介していけたらと思います。引き続きお楽しみいただけたら幸いです。

原産地と歴史は?

地中海沿岸が原産ですが、ヨーロッパに広く自生していたようです。古代ギリシャ・ローマの時代には薬や香料、魔よけに利用されていたのだとか…。日本への伝来は、16世紀末、加藤清正が朝鮮出兵の折に持ち帰って植えたことから、「清正人参」とも呼ばれています。

日本へ持ち帰ったのが加藤清正ということは、日本初の栽培地は熊本?!

…ということで「清正」の名がつく、熊本市西区の清正農園・西孝弘さんを訪ねました。清正農園さんと言えば、伝統野菜「くまもと長にんじん」の生産者として県内外で有名な方なのですが、セロリ=清正人参について改めてお話を伺うと、セロリは代々栽培されて今年で51年目になるとか…。『調べてみると加藤清正はどうも朝鮮人参の種といわれて持ち帰って植えたら、生えてきたのはセロリだったという逸話もある…』と教えてくださいました。そもそもその朝鮮出兵の際に、藤崎八幡宮に戦勝祈願のお供えをしたのがこちらの農園がある上代(神代)の野菜だったと…。故に持ち帰った種も上代の地に植えられたのかな…と、清正公の時代に思いを馳せながら、ハウスの中に…。入った途端にツンとくる独特の香りと瑞々しいグリーンの葉っぱたちが目に飛び込んできました。そうです!こちらで栽培されているのは、「緑色種」。西さんが異業種から代々営まれる農業分野に入られて約10年…試行錯誤しながらブレンドしたオリジナルの肥料を与え始めたところ数年前からより甘さが加わったので「清正のフルーツセロリ」として売り出されたのだそうです。『どうぞ!』と、くださったセロリをいただくとまるで「梨」のような爽やかさ甘さが口の中に広がります。
デリケートで栽培しづらい野菜ながら、安心安全なものを届けたい信条のもとに栽培される確かな味は県内外のシェフやバイヤーに人気を博し、あちこちに多くのファンを持っておられるのです。余談ですが、実はセロリが苦手な私…ここのセロリだったらどれだけでも食べることができるので、「苦手克服記念畑」とひそかに名付けた畑を後にしました。

清正人参ゆかりの地から県内の主産地 植木地区へ…

西区から車を走らせること約30分…。日本一のスイカの産地と名高い北区植木町。この地では、すいかの裏作としてセロリ栽培が盛んに行われています。お邪魔したのは、JA鹿本セロリ部会の牧部会長さんのほ場。立ち並ぶハウスの横を歩いていく間中にも、セロリの香りが漂ってくるほど…。収穫最盛期で、ハウスに入ったときには一面グリーンに見えた畑が、数名で「刈り取る→袋に詰める→前に進む」収穫作業が絶妙なチームワークで瞬く間に畝の最前方まで進んでいき、次の畝に移るという光景に出逢いました。 こちらでは、もともとすいかとメロンを栽培されていたところ、油の高騰などもあり18年前からセロリを導入されたそうです。こちらの品種は「コーネル」茎が淡い緑色の中間種。品種は違えど、前述の西さんと異口同音…やはりデリケートな野菜でつくりづらく畑は連作障害を起こすこともあるとのこと。栽培期間のご苦労を訊ねると、できるだけ病気が出ないように、定植から40日くらいの頃に集中して行う「わき芽掻き」の作業のことをその一つに挙げられました。お邪魔したほ場は、11連棟で一万四千本が植えられていて、腰の低い位置でわき芽を掻ぐ作業を繰り返していかれているかと想像するだけで卒倒しそうでした。

セロリが終わったら、すぐに「すいか」を植える準備が始まるのよ…。お忙しそうなのにご夫妻の笑顔がとっても印象的でした。

知っておきたい効能

栄養素以上にその香り成分に薬用植物としての効能を持つ香新野菜・特有の香りのもと、アピオールは精神を安定させ、不眠やイライラ、不安感を取り除いてリラックス効果があるといわれています。強い香りが減塩に繋がるので含まれるカリウムの相乗効果でむくみの予防にもなります。

 

春は様々に環境の変化でストレスを感じがちな季節でもありますが、こんなときに「セロリ」を取り入れてリラックスしてはいかがでしょうか。

ぱぱっと簡単レシピ

セロリとソーセージのポトフ風

<材料2人分>
セロリ 1
にんじん 1/2
玉ねぎ 1/2
じゃがいも 1/2
ソーセージ 4
水 500ml
ブイヨンの素 1
塩・こしょう 各少々

<作り方>
⑴セロリはピーラー等で茎の筋をとって56㎝長さに切る。葉はざく切り、飾り用に少しだけみじん切りにしておく。にんじんは大きめに、玉ねぎはくし形に切る。
⑵鍋に水とブイヨンの素を入れて人参と玉ねぎを入れて煮立ったらセロリとソーセージを加えて弱火で10分ほど煮る。野菜がやわらかくなったら塩・こしょうで味をととのえる。
⑶器に盛ってセロリの葉のみじん切りを添える。

セロリと小エビのコロコロサラダ

<材料2人分>
セロリの茎 100g
小エビ 10
マヨネーズ 大さじ1
ヨーグルト 大さじ1
粒マスタード 小さじ1/2
塩 少々

<作り方>
⑴セロリの茎は、ピーラー等で筋をとって、約1㎝の角切りにし、塩少々をふっておく。
⑵小エビは背ワタをとって、少量の酒をふって器に入れてラップをし、電子レンジで約1分加熱する。冷めたら2つ切りにしておく。
⑶ボウルに粒マスタードとマヨネーズ、ヨーグルトを入れて混ぜ、水気をきったを加えて和え、器に盛る。

セロリのマフィン

<材料:マフィン型6個分>
卵 1
塩 小さじ1/5
砂糖 大さじ1
オリーブオイル 60ml
牛乳 50ml
粉チーズ 40g
セロリ(葉と茎) 80g
★(薄力粉 150g ・ ベーキングパウダー 小さじ2)

<作り方>
⑴セロリの葉はゆでて水分をよく絞りみじん切りにする。茎はピーラー等で筋を取ってみじん切りにする。
⑵ボウルに卵を入れてよくほぐし、塩と砂糖を加えてよく混ぜる。
⑶⑵にオリーブオイルを加えてよく混ぜ、牛乳も加えて混ぜる。
⑷⑶に粉チーズと⑴のセロリを混ぜ、ふるっておいた粉類★を2回に分けて加え、ゴムベラでさっくり混ぜる。
⑸マフインカップに生地を流し180℃に予熱したオーブンで約25分焼く。
(※オーブンの温度と時間は使用する機種によって調節する)

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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