【Thu】

Vitamin Table 〜第41回 すいかのおはなしパート2〜

夏本番を迎え本格的な暑さが続いています。
猛暑日や熱帯夜の連続で、夏バテや熱中症などで体調を崩されてはいませんか?
そんな暑い季節の体調管理に役立つのが、水分が豊富で夏の味覚を代表する果物「すいか」。今月は、夏の体に嬉しいすいかの歴史やパワーを改めて紐解きたいと思います

すいかの原産地

アフリカ中部の砂漠地帯や南部のカラハリ砂漠と考えられています。栽培の歴史は古く、約4000年前に栽培が行われていたと推定される壁画がエジプトに残されているといわれています。その後インドからシルクロードを経て中国へ。「西域から伝わった瓜」という意味から「西瓜」という字があてられたそうです。
日本へは17世紀に中国から渡来したといわれていますが、現在日本で栽培されているものは、明治初期にアメリカから導入された品種の流れをくむものです。

日本のすいかの歴史

日本でのすいかの歴史を探っていくと奈良に…。
奈良には、すいかの歴史を知る貴重な資料が存在しています。1842年(天保13年)に川西町糸井神社に奉納された絵馬の一端に、神社の境内に店を出し、樽で冷やしたすいかを切り売りしている様子が描かれているそうです。この絵馬は「なでも踊り」と呼ばれる雨乞い願いの踊りを描いたもの。近世末の村落の民衆の姿を伝える貴重な資料として、平成6年に、奈良県の指定有形民俗文化財に指定されています。
その奈良では明治の初めに、綿に変わる作物としてすいかの栽培が始まったといわれています。巽(たつみ)権治郎という人物が、紀州から持ち込まれた「紀州すいか」をもとに施策を重ね誕生した在来種「権治すいか」が大和盆地に広がったそうです。奈良の気候風土に適応して各地で栽培されていた権治すいかと、明治35年に奈良県がアメリカから導入した「アイスクリーム」という品種の自然交雑で「大和西瓜」が誕生。その味の良さが評判となり、大正12年、奈良県農業試験場が、より良いすいかの品種を生み出すために「すいか品種改良事業」が開始、本格的な育種が始まることとなりました。以来、奈良は現在に至るまですいか育種の中心地であり、種の多くが奈良県内の種苗会社から全国の産地へと供給されています

熊本では…

熊本では1735年の「肥後之国熊本領産物手帖」にすいかの名前を見つけることができます。以前は露地栽培で盛夏に出荷することが主流でしたが、昭和30年~40年代にかけて導入された施設栽培や生産技術の向上に伴い、早出しスイカの生産が開始されたそうです。その後、施設栽培が急速に普及し、鹿本地域や熊本、上益城、菊池、玉名地域を中心に栽培されていますが、その種の多くが前述の奈良からだと聞き及びます。

熊本産のすいかも春から初夏?!

2016年5月号で、夏の風物詩「すいか」も産地リレーをしていることをお伝えしました。熊本のスイカは2月下旬から出荷が始まり、鳥取、千葉、長野、そして山形、北海道へ「すいか前線」が日本列島を北上し、秋は高知や沖縄などで栽培され、概ね通年リレー出荷されているのです。
日本一を誇る植木町を中心とした熊本のすいかは4月~5月にかけて旬なのですが、今では品種を変えたり作付けを工夫して秋にも店頭に並ぶようになってきました。

熊本にも伝統的に夏に登場するすいかが!

熊本県が「熊本の人や風土との関わり合いが強い野菜の中から選定している」ふるさと野菜のなかにある、天草で7月~8月半ばに出荷される「上津深江(こうつふかえ)すいか」に会いに行ってきました。旧盆すいかとして天草地域では絶大な人気を誇っているすいかです。
1952年(昭和27年)頃から天草郡苓北町上津深江地区の畑地帯で栽培を続けられてきました。当初の出荷は船便で長崎市へ。天草五橋開通後は熊本市内に出荷されていた時期もあったそうですが現在は天草地域内のみで流通する希少な地域の味なのです。

村上勉さん
村上勉さんのほ場

6月末にお訪ねしたのは、2019年2月号「レタス」でお世話になった村上勉さんのほ場。
子どもイノシシの飛出しに出逢いながら傾斜地に向かってのぼっていくと、そのほ場はありました。「がら土って呼んどるとたいね」とおっしゃる小石交じりの水はけのよい土壌で、周囲でみかんもつくられる日当たりのよい傾斜地でした。お父さまの代から約80年作り続けられているという露地栽培のすいかは、深緑色の葉とツルがきれいに整えられ、元気に育っていました。「がら土」と寒暖の差でうまく育ち糖度が上がる!レタスを栽培している平坦地の志岐地区ですいかの苗を植えると枯れる…苓北の中でも、上津深江でしか、このすいかはつくれない…地域に根差した特産作物ゆえのお話でした。
栽培のご苦労を伺うと、「雨が多い年は葉にばかり栄養がいき、着果もしにくいし、小玉になったり病気も出る。今年は今のところ雨が少なく生育は良好だから糖度も上がっていくはず…」と。
愛情込めて作り続けられているすいかは、次第に大きくなってきています。収穫時期の目安を示す色つき棒ごとのすいかを眺めながら、ほ場をあとにしました。

 

天草地域のみでの流通ですが、海辺でのBBQやすいか割り、夏休みの思い出と結びつく「夏のすいか」に会いに天草に出かけてみませんか。
トマトの約1.5倍のリコピンを含み、疲労回復や利尿作用もあるすいかで水分チャージして、暑い夏を元気に乗り切りたいものです。

 

(参考文献:奈良県農業研究開発センター資料・取材協力:JAれいほく)

ぱぱっと簡単レシピ

すいかのガスパチョ

<材料2人分>
すいか 200g
トマト 大1
玉ねぎ 中1/8
オリーブオイル 大さじ1
塩 少々

<作り方>
⑴すいかは皮と種をのぞいて一口大に切る。トマトはヘタをとり一口大に切る。玉ねぎはみじん切りにする。
⑵⑴とオリーブオイルをミキサーに入れて、なめらかになるまで攪拌する。
⑶塩を加えて味をととのえ、冷やしておいた器に盛りつける。

すいかの冷製パスタ

<材料2人分>
すいか 小玉1/4個分
サラダ玉ねぎ 1/2
レモン汁 大さじ2
オリーブオイル 大さじ1
パスタ (細めのもの) 80g
ハーブ 適宜

<作り方>
⑴鍋に湯を沸かし、2%の塩【分量外】を加えて袋の表示より1分短くゆでる。茹で上がったパスタを氷水にとって手早く冷やしたあと、ザルにあげてキッチンペーパーで水気をしっかりとる。
⑵すいかは2cm角くらいに切る。玉ねぎは横の薄切りにする。
⑶ボウルに,すいか、玉ねぎ、レモン汁、オリーブオイルを入れて良く混ぜ、⑴を和える。
⑷器に盛り、ハーブを添える。

すいか糖

<材料:出来上がり約100g>

小玉すいか  1個分

 

<作り方>
⑴すいかは皮と種をのぞいて、ミキサーにかける。
⑵万能こし器にさらし布でかけてこす。
⑶⑵を厚手の鍋に入れて中火から弱火でじっくりと煮詰める(はちみつくらいの固さになるまで)
⑷煮沸消毒した瓶に熱い内に入れ冷まして保存する。

※ヨーグルトやパンケーキにかけたり、水や炭酸で割ってジュースにしたり…好みの用途に。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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