ニホンナシの幼果の果梗裂傷被害は2月下旬の水和硫黄剤散布で軽減できる

農業研究センター果樹研究所病虫化学研究室

研究のねらい

ニホンナシにおいてニセナシサビダニ(写真1)が原因と考えられる幼果の果梗裂傷(写真2)が発生しており、果実肥大の抑制や果梗の折損につながっています。ニセナシサビダニに対しては、越冬期にマシン油乳剤や石灰硫黄合剤を散布すると防除が可能ですが、樹体への影響や機械・棚資材の腐食が懸念されることから、他の防除効果の高い薬剤が求められてきました。そこで、果樹研究所内の露地栽培「あきづき」において、幼果の果梗裂傷被害に対する防除効果の高い薬剤や防除時期を検討したところ、越冬期(2月下旬)の水和硫黄剤散布により被害を軽減できることを明らかにしましたのでご紹介します。

写真1:ニセナシサビダニ
写真2:幼果の果梗裂傷

研究の成果

発芽前である2月下旬に水和硫黄剤(商品名:クムラス)300倍を散布することで、幼果の果梗裂傷および果そう葉の退緑斑点症状を軽減できます(図1)。クムラス(水和硫黄剤)はほぼ中性の薬剤であるため、動力噴霧器や棚資材などを傷めにくい薬剤です。

図1 ナシ幼果の果梗裂傷および果そう葉の退緑斑点病状に対する越冬期防除効果(2020年、2021年)

成果活用面・留意点

1.越冬期にマシン油乳剤や石灰硫黄合剤を散布できない園で本技術が活用できます。
2.ニセナシサビダニは、春に日中の気温が18℃を超え始めると、越冬場所を離れ、膨らんだ芽の中に侵入し始めるため、防除は発芽前まで(2月下旬)に実施します。
3.水和硫黄剤(クムラス)は、春期以降の散布で葉や花弁に薬害を生じるおそれがあるので、発芽前までの散布とします。
4.越冬期にカイガラムシ類を防除する場合は、水和硫黄剤にアプロード水和剤+アビオンEもしくはアプロードフロアブル+アビオンEを混用して散布することで、同時防除が可能です。

 

No. 743(令和4年(2022年)6月)分類コード 04-10
743_新しい技術_果樹_ニセナシ果梗裂傷被害軽減

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