摘果の目的は、高品質果実の生産と隔年結果防止(樹勢調節)です。着果が少なすぎると大玉で低品質となり、多すぎると品質は上がりますが、小玉で隔年結果しやすくなります。そのため、摘果時期や摘果割合(表1)、時期ごとの果実肥大や品質(表2)を参考にし、それぞれの園地の樹の状態(樹勢、果実肥大・品質等)を確認しながら作業を行いましょう。
粗摘果は、通常、極早生温州では6月下~7月上中旬頃、早生温州で7月上~中旬頃を目安に行います(表1)。肥大や品質が悪い内なり・裾なり果を中心に行い、着果状況に応じて樹冠外周部の極小果や傷果等を落とします(写真1)。着果量が多く、新梢が少ない樹から早めに取り組み、そのような樹はやや強めに摘果しましょう。
早生、中生温州の特に着果が多い樹については、粗摘果時に内なり・裾なり果を除去後、2.0~2.5cmの枝径単位で早急に枝別全摘果を実施し、次年度の結果母枝を確保しましょう。
また、着果過多や高樹齢により樹勢が低下した早生温州では、粗摘果時に内なり、裾なりの全摘果と併せて樹冠上部摘果を実施し、夏梢を発生させ樹勢維持と翌年の着花確保を図ります。樹冠上部の摘果は30%とし、できるだけ早急に実施しましょう。
温州みかんの品質向上対策
1 はじめに
今年の温州みかんは、春季の気温が高かったことから、満開期が平年より5日程度早く、全体的に生育が早まっています。また、令和4年産が裏年傾向であったため、全ての品種で着花が多く、1次落果は多い状況でしたが、それでも現在の着果量は多い状況です。これからの管理では、高品質果実の生産と連年安定生産を図るために、適期に適正な着果量に調整する摘果が重要です。
今年は平年よりも生育が早いということを意識し、今後の天候や樹の状態をよく見ながら、適期管理を行いましょう。
2 適正着果による品質向上
仕上げ摘果は、「肥のあかり」では8月上~中旬、その他の極早生と早生温州は8月中~下旬に行い、小玉果、傷果を中心に落とします(表1)。収穫時に目標階級・品質になるように、気象状況や果実の肥大状況を考慮して摘果を行いましょう(表2)。
普通温州では、通常8月下旬ごろに摘果を行いますが、着果が多い樹では小玉になりやすいため、摘果の時期を早め、小玉果を中心に摘果を行いましょう。
樹上選果は、秋梢発生防止のため収穫直前に行います。見落としていた小玉果、傷果や新梢の発生を抑えるために残していた大玉果などを摘果します。
3 シートマルチ栽培による品質向上
温州みかんの糖度向上のためには、シートマルチにより降雨を遮断し土壌を乾燥させ、樹体に乾燥ストレスをかけることが重要です。シートマルチの敷設は、品種、樹勢、園地の土壌条件(土壌の深さ・保水性)などを考慮して表3を参考に適期に行いましょう。
近年は、集中豪雨などによりシートマルチ内に雨水が入り、糖度が低下する園が見られますので、シート内に雨水が入らないようにする必要があります。マルチの隙間が空いていると雨水が侵入してしまうため、根元までしっかりと被覆するとともに、破れている箇所があれば補修等行いましょう。
また、シートマルチの効果を高めるために、シートマルチの外側に根が分布していないか穴を掘って確認しましょう。特にシートマルチ栽培を長年続けている園や高樹齢の園では注意が必要です。もし、シートマルチの外側に根の分布が認められた場合には、園内道を廃ビニル等で覆う完全マルチとすることで効果が高まります。
なお、集中豪雨等によりシート下に雨水が流入した場合は、晴天日にシートを開け、土壌の乾燥を図りましょう。
S.マルチ栽培による品質向上
前述した部分マルチでは、雨水の根域への流入を完全に防げないことや完全マルチでは、通路部のシートが破損しやすく、機械管理が難しいことなどから、農研機構では、実用性が高くより安定して高品質果実を生産できる技術としてシールディング・マルチ栽培(NARO S.マルチ)を開発しました。
シールディング・マルチ栽培は、図1のように防根・防水シート(NARO.Sシート)を園内に埋設することで、雨水の根域への流入と、シートマルチ外への根の伸長を防ぎ、高糖度果実を安定して生産できる栽培方法です。改植時でなくとも作業用機械が入る園であれば導入が可能であるため(図2)、既存園のシートマルチの効果を高めるために有効です。また、園内の排水を促すため通路に傾斜があるとより高い効果が期待できます。注意点としては、乾燥ストレスが付与されやすいため、かん水チューブの導入が望ましいことや有効土層が深い園地や地下水位が高い園地では、十分な効果が得られない恐れがあることなどです。
品質が上がりにくく、上記の土壌条件やかん水設備が整えることができる園地での導入を検討してみてはいかがでしょうか。
4 フィガロン乳剤の散布
フィガロン乳剤の散布(表4)によって根からの養水分吸収が抑えられるため、果実生育初期の糖度上昇と収穫時の着色向上につながります。ただし、新梢や根の発生が少なく樹勢の弱い樹では、さらなる衰弱を招いてしまうため、散布を控えましょう。
また散布を行った場合には、特に10月から11月の礼肥、収穫後のかん水や葉面散布など、樹勢を回復させるための管理をしっかりと行いま しょう。
5 おわりに
高品質果実生産のため、これから夏秋期の管理で樹体へ乾燥ストレスをかけますが、負担が大きすぎると昨年のように花が少なくなってしまいます。そのため、摘果で適正な着果量にするとともに、収穫後のかん水や施肥及び葉面散布による樹勢回復対策を必ず実施しましょう。
これから暑い日が続きますので、熱中症には十分気をつけて作業を行ってください。
県北広域本部 玉名地域振興局 農業普及・振興課
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