温州ミカン品質向上対策について~高品質果実生産に向けた効果の上がるシートマルチ栽培の実施~

はじめに

今年の温州みかんは、春季の気温が高かったことから、満開期が平年より10日程度早く、全体的に生育が早まっています。また、現在の着果量は、普通温州でやや少なく、その他の品種はやや多い状況です。
高品質果実生産のためには、適期の摘果だけでなく、シートマルチやフィガロン乳剤の散布を適期に行うことが重要です。今年は平年よりも生育が早いということを意識し、今後の天候や樹の状態をよく見ながら、適期管理を行いましょう。

品質向上対策

①シートマルチ栽培
温州みかんの糖度向上のためには、シートマルチにより降雨を遮断し土壌を乾燥させ、樹に水分ス
トレスをかけることが重要です。シートマルチの敷設は、品種、樹体条件、園地の土壌条件(土壌の深さ・保水性)などを考慮して表1を参考に適期に行いましょう。
近年は、集中豪雨などによりシートマルチ内に雨水が入り、糖度が低下する園が見られますので、シート内に雨水が入らないようにする必要があります。マルチの隙間が空いていると雨水が侵入してしまうため、根元までしっかりと被覆するとともに、破れている箇所があれば補修等行いましょう(図1)。

また、シートマルチの効果を高めるために、シートマルチの外側に根が分布していないか穴を掘って確認しましょう。特にシートマルチ栽培を長年続けている園や高樹齢の園では注意が必要です。もし、シートマルチの外側に根の分布が認められた場合には、園内道を廃ビニル等で覆う完全マルチとすることで効果が高まります(図2)。
また別の方法として、シートマルチ下に根域を収めるため、根が存在する地表面下50㎝程度を目処に断根する方法があります。実施時期は樹体や果実品質への影響を考えると冬季の実施が望ましいです。ただし、この場合効果が望めるのは実施後2年目までであり、長期間の効果を維持するためには、断根した箇所にゴムシート等を埋め込み、シートマルチの外に根が出ていかないような処理を行う必要があります(図3)。
さらに、今後、高品質果実の生産や作業の省力化を図っていくためには園地整備を併せて検討しましょう。SS防除体系の園では、作業道をコンクリート化することで余分な雨水を園外に排出することができます。また、図4のように、傾斜に沿って畝を作りシートマルチを行うことにより、糖度が高い高品質果実の生産が図れます。

図1 根元までしっかりと被覆
図2 完全マルチの実施方法
(左:平坦地、右:階段畑)
図3 防根シートを埋めて通路への根の侵入を防ぐ
図4 傾斜に沿って畝を立てている排水性の良い園地
(余分な雨水が畝に侵入せず園外に排出される)

②フィガロン乳剤の散布
フィガロン乳剤の散布(表2)によって根からの養水分吸収が抑
えられるため、果実生育初期の糖度上昇と収穫時の着色向上につながります。ただし、新梢や根の発生が少なく樹勢の弱い樹では、さらなる衰弱を招いてしまうため、散布を控えましょう。
10月から11月の礼肥、収穫後の葉面散布など、樹勢を回復させるための管理をしっかりと行いましょう。

おわりに

高品質果実の生産のためには、今後の夏秋季の管理が非常に重要となってきます。
今年は生育が早まっているため、適期の摘果やシートマルチ、フィガロン乳剤の散布など、早めに対策することを常に意識し、計画的な管理を行っていきましょう。
これから暑い日が続きますので、体には十分気をつけて作業を行ってください。

県北広域本部 玉名地域振興局 農業普及・振興課

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