温州みかんの樹勢回復の重要性と隔年結果対策について

はじめに

温州みかんの収穫最盛期を迎えています。着果が少なくなっている樹を見ると、改めて、収穫後の樹勢回復の重要性を実感された年になったのではないでしょうか。
今年、着果が少ない樹については、来年花が多くなることが予想されるため、花を減らし、新梢(しんしょう)を確保するよう今から対策しましょう。着果が多い樹については、収穫が済んだら早めにかん水や施肥等を行い、確実に樹勢回復に努め、隔年結果の負のスパイラルに陥らないようにしましょう。

樹勢回復の重要性

光合成によってつくられた養分は、主に果実や枝葉の生長に使われ、果実に蓄積された養分は収穫により収奪されるため、収穫後の樹体養分は少なくなります。また、昨年のように着果が多い状態や、フィガロン散布やシートマルチ栽培を行うことで、樹への負担はさらに大きくなります(写真1)。そのような状態で樹勢回復対策を行わなければ、貯蔵養分が足りず、翌年の花が少なくなります。そのため、収穫後にはできるだけ早く樹勢を回復させ、樹に貯蔵養分を蓄えて、翌年の着花確保や新梢の充実させる必要があります。

写真1 昨年10月の乾燥したシートマルチ園の樹の様子

樹勢回復の方法(着果が多い樹で実施)

(1)適期収穫
収穫が遅れると、本来樹体に蓄えられるはずの養分が果実に奪われるため、樹勢回復が遅れます。特に、着果量が多い早生以降の品種は影響が大きいため、遅れないように計画的に収穫しましょう。

 (2)かん水の実施
土壌が乾燥していると、施肥をしても、すぐに樹が養分を吸収できません。マルチ被覆園では収穫後、直ちにシートを除去し降雨を入れましょう。樹に水を与えることが一番の樹勢回復につながるため、昨年のように雨が少ない場合は、十分にかん水を実施しましょう。

(3)秋肥の施用(着果が少ない樹でも実施)
秋肥は、収穫後のなり疲れを回復させ、翌年の着花を確保することと、耐寒性強化、萌芽(ほうが)、春枝伸長に効果があります。秋肥は年間施用割合の40~60%を占める重要な施肥です(表1)。但し、施肥時期が遅くなると、地温の低下により細根の活性が低下し、樹体への吸収量が減少します。一時収穫を休止してでも11月上旬までに速効性肥料を施用しましょう。
また、着果が少ない樹については、通常の着果量の樹よりむしろやや多め(1~2割増)に施用しましょう。樹体内の炭水化物に対する窒素の割合を高めることで樹勢が強化され、翌年の新梢や有葉花の発生数が増加します。
施用後に降雨がない場合はかん水を実施し、樹体への吸収を促進しましょう。

 

(4)葉面散布の実施
秋肥の施用と併せて、窒素を主体とした葉面散布を実施すると樹勢回復効果が高まります。例えば、尿素300500倍液を、35日おきにできるだけ暖かい日を選び、3回程度実施します。特に秋肥の施用が遅れた園や、着果量が多く、樹勢が低下した園では実施をしましょう。

 

隔年結果対策(着果が少ない樹で実施)

(1)着果負担の利用
早生、中生、普通温州の着果が少ない樹は、極大果、傷果などを収穫せずに残すことにより、翌年、周辺の着花が減少し、新梢数が増加します(表2)。

(2)予備枝の設定(夏秋梢(かしゅうしょう)のせん除・摘葉)
着果量が少なく夏梢が発生している樹や園では、翌年の新梢発生を促すため、秋梢が発生しにくくなる10月下旬頃から予備枝を設定します。①太くて斜め~横向きの夏秋梢は、先端の葉を残し全摘葉、②中~やや弱めの夏秋梢は輪状芽の上でせん除し全摘葉することで、適度な新梢が発生し、隔年結果是正に繋がります(図1)。直立した強い枝からは、同じように強い枝が発生しやすいため、基部からせん除します。また、弱い夏梢には着花しやすく、新梢の発生が少なくなります。

図1 予備枝の設定方法について

(3)ジベレリンの散布
ジベレリンを散布することで、着花数を減少させ、新梢数を増やすことができます。春梢が出てほしい果梗枝や、夏梢せん除部分を中心に、枝が濡れる程度に散布しましょう。
散布方法としては、①ジベレリン2550ppm、②ジベレリン2.5ppm+マシン油乳剤6080倍(または、スカッシュ1000倍)のいずれかを、収穫直後~収穫約1カ月後に散布します。

 (4)せん定と予備枝の設定
今年の着果が少なかった樹では、厳寒期を過ぎた2月中旬頃から早めにせん定を行いましょう。適度に切り返しせん定を入れながらやや強めに実施することで翌年の新梢が増加します。
予備枝は、横向きの果梗枝や白筋がある23年生枝を用います。樹齢の23倍の本数を作成し、新梢発生を促します。

おわりに

今後も昨年のような気象になることが考えられますので、降雨がないときにかん水ができるような水源の確保とかん水施設の整備(自動かん水施肥装置など)を検討されてはいかがでしょうか。
これから早生以降の品種の収穫が続きますが、体調管理や農作業中の事故に十分気を付けて作業を行ってください。

県北広域本部 玉名地域振興局 農業普及・振興課

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