茶の施肥管理における液肥の活用

はじめに

茶は他作物と比べ施肥量が多い作物であるため、近年肥料価格高騰による生産コストの増加が経営への負担になっており、コスト削減のために、施肥効率を上げる必要があります。液肥の施用は茶樹に効率的に養分吸収を促すことができ、芽出し肥や夏・秋にかけての施肥として年間を通じて活用できる施肥方法の一つです。上手に活用して、生産コスト削減や生葉の品質向上、樹勢の回復に役立てましょう。

1 液肥の特徴

液肥は、液体の状態で茶園に施用する肥料の事で、硫安や尿素を水に溶かして作る方法や、市販されている原液を希釈して使用する方法があります。
固形肥料は土壌水分に溶けることで初めて植物体が利用できる状態になるため、施肥後に降雨が無いと茶樹が養分を吸収することができませんが、液肥を活用することで、天候に左右されることなく効果的に吸収させることができます。さらに、水分も同時に与えるため、少雨時の干ばつ対策も期待できます。
留意点として、排水不良の茶園では散布に注意が必要です。降雨後等で既に土壌中の水分が多い場合には、根を痛める恐れがあるため液肥での施肥は控えましょう。

2 硫安や尿素を用いた液肥の施用

10aあたりの目安〉
1回のN施肥料2㎏を目安として、水500Lに肥料(目安:硫安の場合は10kg、尿素の場合は5kg)を溶かし、雨落ち部に散布します。

【液肥の作り方】
①バケツに硫安などの固形肥料と水を入れ、よくかき混ぜて十分に溶かし、散布用のタンクに移します。
②最後に希釈したい倍率となるよう、タンクに水を足して良くかき混ぜて濃度を均一にします。

【液肥の施用方法】
液肥の施用にはいくつか方法がありますが、ご自身の園や労働力にあった、より省力的な施用方法を選択しましょう。

①防除機での散布
乗用型防除機では、クローラー部分から液肥がでるよう、クワシロ噴口や自作による散布口などで雨落ち部に散布します。面積当たりの液肥の量は、噴口からの排出量や走行速度で調整を行いましょう。

②動力噴霧機(動噴)での散布
動噴で散布を行う場合は、畝間ごとに雨落ち部分に液肥を散布します。葉に液肥がかかると葉やけを生じる恐れがありますので、注意しましょう。

⓷点滴施用(かん水チューブ)での施用
茶園内にかん水チューブを設置している園では、普段のかん水の代わりに液肥を施用することが可能です。施肥のために茶園内に入る必要が無いため、省力化が期待できます。

3 成木園及び幼木園での液肥の活用

⑴成木園での液肥の活用
【一番茶前(~2葉期ごろまで)】
液肥は速効性があるため、芽出し肥に向いています。特に一番茶前に雨が少ない年でも、液肥を施用することで天候に左右されず効果的に施肥を行うことができます。

【夏肥(5中旬・6月下旬施用)】
一番茶の摘採から二番茶の摘採まで45日程度の期間であるため、二番茶芽に対し、養分を速やかに吸収させる必要があります。液肥を活用することで養分吸収を促し、二番茶の品質向上を図ることが出来ます。
また、二番茶を摘採しない茶園でも、一番茶で消耗した樹勢を回復させることができ、少雨時の干ばつ防止効果があります。

⑵定植直後~幼木園1年目の液肥の活用
固形肥料は土壌中の水分や雨で溶け出し、濃度の濃い状態で土壌に浸透します。幼木園では定植の際にビニルマルチを張ることが多いため、土壌が乾燥すると肥料に含まれていた塩類が水の蒸発と共に植穴に集まり、濃度障害(肥料ヤケ)を起こす恐れがあります。液肥を活用することで、適切な濃度で施用できるので、健全な幼木の生育を促します。
また、幼木園では根の活着やその後の生育を充実させるためかん水が必要です。幼木は根量が少なく水分を吸収する力が弱いので、土壌中に適度な水分がある状態を保つ必要があります。かん水を兼ねて液肥を施用することで水分の補給も行うことができます。

おわりに

液肥は肥料を水に溶かすひと手間はありますが、肥料の吸収率や干ばつによる生育不良を抑えるという点では固形肥料より優れる施肥の方法です。年間を通じて利用できますので、それぞれの茶園の状況に合わせて液肥を活用し、低コスト化や茶の品質向上に努めましょう。

県南広域本部 芦北城地域振興局 農業普及・振興課

茶の施肥管理における液肥の活用(PDFファイル)