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春の農作業安全確認運動特集 データで見る農作業負傷事故の状況

農作業のシーズンです!

春です。暖かくなり、農作業がいよいよ本格化する時期になりました。農作業が忙しくなると同時に、必然的に農作業中の事故が増えてきます。
平成31年(2019年)1月末に、平成29年の農作業死亡事故件数が発表されましたが、全国総計304件と減少傾向でした(図1)。
しかし、農業従事者10万人あたりの件数で比較すると、農業は依然として、他産業と比較して死亡事故が多い状況です(参考:P〇)。
農作業中の死亡事故が起こる背景には、数多くの負傷事故が存在しているとみられますが、その現状や事故の起こった状況を把握するのは困難でした。
しかし、今後の対策に役立てるため、JA共済の協力のもと、農林水産省から各県へ、過去5年間のJA共済加入者の負傷事故についてデータが提供されました。
今回、そのデータをもとに農作業負傷事故の状況を分析しましたのでご紹介します。
また、県では、市町村や農業団体の協力のもと、農業者自身へ農作業安全についてのアンケート調査を実施いたしましたので、その結果もご紹介します。

農作業負傷事故の状況

(1)年次別事故発生状況

図2は、年次別に農作業中事故負傷件数をまとめたものです。
2013年、2015年は150件を、2014年、2016年は200件を超えています。死亡や後遺障害の事故も数件ですが発生していることがわかります。

(2)年次別事故件数

図3は年代別の事故件数を表したグラフです。農作業死亡事故では、高齢者が占める割合が高い傾向にありますが、負傷事故については若い世代でも数多く発生していることがわかります(図3)。全体的な割合を見ても、65才未満が約7割を占めており(図4)、主な農作業を担う全ての年齢層が、農作業中の事故に関わっている事実が浮き彫りになりました。

図2
図3
図4

(3)男女別事故件数

男女別に見たところ、男性と女性の割合はそれぞれ6割と4割でした(図5)。
農作業死亡事故における女性の割合は毎年1割前後でしたが、負傷事故においては、女性の割合がかなり高いことがわかります。

図5

(4)月別事故発生件数

では、どのような時期に負傷事故が発生しているのでしょうか。月別に発生件数をまとめたところ、6、7月が最も多く、次いで9、10月の秋作業が多いという状況でした。
農作業死亡事故では「5月」「7月」が最も多く、次いで「9月」「8月」「4月」が多い結果であり、その内容は、農業機械による事故が全体の7割を占めていました(参考:P〇)。

(5)負傷事故の内容

負傷事故は死亡事故と同様に、農業機械による事故が多いのでしょうか?図7は、おおまかに事故内容を分類し、件数を整理したグラフです。
最も多い事故内容は「機械・ハウス・階段・ハシゴ等から降りる時バランスを崩して転落」でした。具体的には、果樹のせん定作業中、脚立からの転落や、ハウスのビニル張り作業中の転落、農舎の2階からハシゴで降りるときに足を滑らせ転倒、などでした。
次いで「カット作業中カマ・ハサミ等で指などを切る」が多い結果でした。具体的には、トマトの収穫作業での負傷から、いぐさの先刈り作業、カマでの草刈りまで幅広くあり、刃物を用いての作業は危険が伴うことがわかりました。

図6
図7

そのほか、段差でのつまづき、ぬかるみで滑る、溝にはまる、農舎等でちらばったものに引っかかるなどの転倒の事例も多く見られました。
これらの負傷事故により、通院5日以上が7割を占めています(図8)。日常の農作業の中には多くの危険が潜んでいて、ちょっとしたことで負傷につながることがデータを見てわかります。

農作業安全アンケート調査

次に、県で実施した、農業者の農作業安全に関するアンケート調査の結果をまとめました(総回答数1720)。
これまで県では、農作業事故が発生した後に、市町村からの報告などにより事故が起こった状況を把握していました。日常の農作業の中で、事故につながる要因があるのではないか。農作業安全に係る制度などについて、農業者にどの程度浸透しているのか。それらの実態を把握することと、農業者が、自らアンケートに記入することで、啓発につなげることが今回のアンケートの目的でした。

(1)日頃操作する農業機械

回答した農業者の年齢層は図9のとおりです。
日頃操作する農業機械については、図10のとおりトラクターが最も多く、次いで刈払機でした。

図9
図10

(2)トラクターの安全対策

トラクターの安全キャブや安全フレームは、平成9年以降装備を義務付けられていますが、装備されていないトラクター使用の実態を把握することができませんでした。アンケートの結果、図11のように、約9割が装備されていると回答しています。
しかし、安全キャブ・安全フレームが装備されていても、運転者がシートベルトで固定されていなければ、転倒したときに投げ出されてしまいます。そこで、ほ場で農作業をする時のシートベルトの着用状況についてたずねました。
その結果、図12のとおり約9割がシートベルトをしていないと回答しています。トラクターによる死亡事故(全国)の約6割は道路やほ場での転落・転倒が原因です(参照:〇)。移動中のみならず、ほ場での作業中もシートベルト着用を呼びかけることで重大事故を防止することにつながります。

図11
図12

(3)ヒヤリ・ハット体験

事故には至らずとも、もう少しで事故になっていた体験を「ヒヤリ・ハット体験」と言います。
全体の6割程度が「ヒヤリ有」と回答していますが、年代が上がるにつれ「ヒヤリ有」割合が少なくなることから(図13)、経験を積むほど作業に慣れ、危険を認識しづらくなっていることが考えられます。

ヒヤリ・ハット体験」で最も多かった回答は「小農具(カマなど)で切る」でした。次いで「機械からの転落・転倒」、「熱中症になりかけた」の回答も多く見られました(図14)。要因としては、足場が悪いなどの不安定な状況や、機械の操作ミス、気象条件などが多く見られました(図15)。

図13
図14
図15

事故を未然に防ぐには

JA共済の負傷事故データと農作業安全アンケートの分析結果から、事故が起こる要因としては次のことがあるようです。

【事故が起こる要因】
(1)作業環境(足場、障害物など)
(2)準備(作業に適した服装など)
(3)作業方法(慣れ、経験など)

たとえば、ほ場の段差や溝、農舎の物につまづく事故などは、作業環境を事前にチェックしたり、整理整頓することで未然に防ぐことができます。
刈払機等の作業時に石や木屑が飛んで目に入ったり、キックバックによる足元の負傷などはゴーグルや安全靴の着用で怪我を防ぐことができます。
エンジンを停止せずに機械を点検したり、安全フレームを倒したままシートベルトをせずにトラクターで作業することも、やり慣れた作業かもしれませんが、ワンアクションで大事故を防ぐことにつながります。

「経験者」としての安全対策を!

農業はまだまだ家族経営が中心で、家族農業従事者は労働者でもあり経営者でもあります。安全確保については自己責任となっています。
しかし、人を雇用する場合はそうはいきません。労働基本法や労働衛生法など各法令が適用され、労働条件や働く環境の整備など、雇用者に対して義務を負うことになります。労災保険加入は当然ですが、家族も雇用者も安全に働くため、作業環境を整えたり、作業に適した服装・装備を準備したり、経験が浅い人でも無理なく作業できる仕組みを確立することが必要です。
解決策の一つとして、GAPに取り組むことがあげられます。
GAPとは、農産物(食品)の安全を確保し、よりよい農業生産を実現する取組みのことです。まず整理整頓や生産履歴の記帳からはじめ、農場内や生産方法の点検、問題点の改善を繰り返していきます。関係者皆でGAPに取り組むことで、当たり前だと思っていた環境に危険が潜んでいることに気づき、改善することができるかもしれません。
これからの「経営」は「安全」と一体です。事故が起きた時のコストは最大の経営リスクになり得ます。農作業事故を未然に防ぎ、安心・安全な農業経営を実践していただきたいと思います。

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