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麦わらの適正処理と有効利用に関する技術資料

1 麦わらの適正処理の必要性

収穫残さである麦わらの焼却は、法律()で、農業を営むためにやむを得ない場合を除き、禁止されています。
また、宅地開発等によって従来から住み続けてきた農業者と新たな住民の混在化が進んでおり、法的に認められている野焼きであっても、目や呼吸器への刺激、異臭、視界不良などが起こることで周辺住民が不快に感じるなど、生活環境に影響を与えることが懸念されています。
併せて、焼却により浮遊粒子状物質が増加することによる大気汚染の防止の視点からも、麦わらの適正処理及び有効利用を進めていく必要があります。
※廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称「廃掃法」)

2 麦わらの処理方法と有効利用

麦わらの処理方法は、焼却処分のほか、ほ場への鋤込みや収集・梱包後、ほ場外への持ち出しなどがあります。

(1) ほ場への鋤(すき)込み

ほ場に麦わらを鋤込むことは、土壌の物理性の改善(排水性・保水性の向上、団粒構造化の促進)と地力の維持に効果があります。
麦作後に野菜や大豆等の畑作物を作付けする場合は、通常の鋤込みで問題ありませんが、水稲の場合は、麦わらの急激な分解により水稲の初期生育を抑制する場合があります。
そのため、水稲作における麦わら鋤込みにおいては、次のような方法で鋤込み・代かき・水管理を行うことで、麦わらの浮き上がりを防止し、水稲の初期生育を確保することが必要です。

【水稲作における麦わら鋤込みのポイント】
〇切断長が短いと浮き上がりやすくなるので、できるだけ長めに切断できるようにコンバインを調整する。
〇麦わらの鋤込みを開始して3年目までは、麦わらの腐熟化を進めるために、麦わらの量に応じて元肥の窒素を通常の窒素成分より1.2~2.kg/10a程度増やす。
〇耕起の深さが浅いと土壌中の麦わらの密度が高くなり、田植え作業の妨げになるので、耕起深を深くして土壌中の麦わらの密度を下げる。
〇入水から代かきまでの期間を長くして、できるだけ麦わらに水を吸わせるようにする。
〇代かき前に落水し、水深をひたひたになるぐらい浅くして代かきを行う。(土壌の粘着力で麦わらが作土中に埋め込まれ、浮き上がりが防止できる。)
〇活着後は浅水で管理し、分げつの促進を図る。
〇初期生育期間は間断灌水で土壌への酸素供給と作土からのガス抜きを行い、還元障害を防止する。

(2)麦わらのほ場外利用

ほ場から持ち出した麦わらについては、家畜飼料、敷料、マルチ資材、堆肥の材料及び燃料等の有効活用法があります。
麦わらをほ場外へ持ち出して利用する場合は、細断せずそのまま刈り落としたものを利用するため、乾燥-収集-梱包-運搬の作業が必要になります。
なお、機械作業の場合は、飼料作の収穫調製用の機械が必要ですが、主な作業機と作業時間は、次の通りです。

ほ場から持ち出した麦わらの有効利用としては、具体的に次のような事例があります。

①家畜飼料
麦わらは稲わらと同等の飼料価値があります。稲わらと比べ家畜の嗜好性は劣りますが、飼料として利用されます

②敷料
細断した麦わらは、牛床で敷料として利用できます。

 ③堆肥化の副資材
家畜ふんを堆肥化する場合、副資材として利用すると、好気性発酵が促進され、良質な家畜ふん堆肥を製造することができます。

 ④マルチ資材
野菜等の栽培において、麦わらをマルチとして利用すると、高温期の地温抑制及び土壌の乾燥防止に効果があります。

⑤土壌への施用
生わらや堆肥化した麦わらは、土壌改良効果が高く、土壌の膨軟化、排水性及び保水性の向上に寄与します。
また、堆肥化した麦わらなど堆きゅう肥の土壌への投入は、土壌の物理性、化学性、生物性を改善する効果があるほか、堆きゅう肥中の養分(特にリン酸、カリ)を活用することができ、化学肥料の施肥量の削減及び施肥コストの低減につながります。
ただし、麦わら中にはカリが比較的多く含まれており、生わらを施設等で多量に連用すると、土壌中のカリ含量を高める恐れがあるので注意が必要です。

 

※家畜ふん尿堆肥のほ場での野積みは、悪臭の原因となり、堆肥が雨水に打たれることで周辺環境をが悪化するほか、養分が流失し地下水を汚染する恐れがあります。すぐに利用しない場合は堆肥のストックヤード(一時保管施設)を設け、屋根やシートによって雨を避けるなど適切な保管・管理が必要です。

◯やむを得ず麦わらを焼却処分される際は、くまもとグリーン農業ホームページ内、「農業を営むためのやむを得ない野外焼却について」を参考に、適正な処理をお願いします。

添付PDF:R4麦稈適正処理技術資料

※くまもとグリーン農業ホームページ(外部リンク): https://kumamoto-green.com/?page_id=43907

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