茶の年間施肥体系について~茶園づくりは土づくりから~

はじめに

茶の栽培では、うま味等の品質向上や、樹勢の維持などの目的で、年間に複数回にわたって施肥を行います。
県内の施肥の状況をみると、一番茶前の春肥や芽出し肥の施肥が中心となる傾向にありますが、一番茶や二番茶摘採後の樹勢維持には夏肥以降の施用も重要です。
一方で、最近は肥料の価格が高騰しており、令和3年度春肥は前期(令和3年度秋肥)から3.917.7%程高くなっているものもあります。そのため、肥料の効果を最大限に活用できる方法での施肥が重要です。

施肥のポイント

年間の合計施肥量が同じでも、施肥の方法やタイミングで、効果を高められることがあります。施肥の際は以下のポイントを意識してみましょう。

①分けて施肥する
一番茶芽の窒素含量の由来は、前年の夏肥や秋肥、一年以上前の肥料が半分以上を占めています(図1参照)。茶樹が肥料分を効率よく吸収できるよう、夏肥や秋肥もバランスよく施用しましょう。

②水分に注意
肥料は水分が無いと、溶解せず茶樹が吸収できません。しかし、梅雨時期など雨が多すぎても流亡してしまいます。土壌の水分や天気予報から、施肥のタイミングを見計らいましょう。

③施肥後は耕耘する
施肥後に耕耘(浅耕)し土壌混和することで、肥料の流亡を防ぎ吸収を促します。また、肥料のガス化も防ぐ効果もあります。

施肥の目的と時期

茶葉(生葉)に含まれる要素は、窒素、リン酸、カリが主なものであり、それらを中心に年間の施肥設計を立てます。窒素・リン酸・カリの施用の割合は、521(年間投入成分量では、N:P:K=50:20:10(kg))を目安に行います。しかし、実際にはカリやリン酸が過剰に蓄積していたり、石灰や苦土が不足していたりする園もあります。過剰な要素は施用を抑え、不足する要素を補うために、土壌分析を行ったうえで園に合わせた年間の施肥を行いましょう。
間の施肥は主に春肥、芽出し肥、夏肥、秋肥に分けられ、それぞれに異なる役割があります。それぞれの目的や時期などをご紹介します。

⑴春肥
うま味の品質に関与するともいわれる肥料です。2回に分けて施用を行います。根の活動が始まるとされる、地温が10℃を超えるタイミング(3月中下旬)に肥料が効き始めるよう肥料を選びます。1回目は2月までに、2回目は3月中下旬に有機質配合のものを選択するとよいでしょう。

⑵芽出し肥
一番茶の品質を高めるために必要な肥料で、二番茶、三番茶ごろにも効果があります。萌芽期ごろに、吸収や移行の早い速効性肥料(硫安など)や、液肥を施用するとよいでしょう。窒素分を多めに施用する場合は、一度に施用するのではなく、1回に施用する窒素分を、10a当たり10㎏以下になるよう分けて施用を行うと、肥料の溶脱によるロスを抑えることが出来ます。

⑶夏肥
二番茶を摘採する園では収量と品質の向上のため、また、一番茶で摘採を終了する園でも樹勢の維持のために施用します。
夏期は他の季節と比較して雨が多く、各養分の溶脱が著しくなる時期であるため、一番茶直後(5月)と、二番茶後(6月)の2回に分けて化成肥料を施用します。pHが低い(pH4以下)茶園では、硫安よりpHの低下を抑えられる尿素を選ぶとよいでしょう。

⑷秋肥
摘採や整枝で消耗した樹勢を回復させ、翌年の一番茶に向け枝条の充実と養分の蓄積を促す役目があります。
8月上旬ごろと、9月下旬ごろに2回施用します。秋肥は土壌微生物を増加させる土づくりのための肥料でもあります。有機質を含む、緩効性の肥料での土づくりを行いましょう。ペレット堆肥を用いると、一般的な堆肥散布より省力で、有機質を補給することが出来るためおすすめです。

⑸酸度矯正
茶は酸性の土壌を好み、pH4.5前後での栽培が適しています。石灰や苦土、カリの溶脱や硫安の施用により、酸度矯正をしない場合、年々酸性に傾いていきます。そのため、pHが4未満の園ではもちろんのことpHが4.5の状態でも、適正な酸度を保つために酸度矯正を年間の施肥体系に組み込むことが大切です。
pHが適正(pH4.5)な場合は苦土石灰10a当たり100㎏を目安に施用します。また、pHが低い(pH4未満)場合は、苦土石灰の量を増やします。苦土石灰は、秋肥の1回目と2回目の間や、夏肥と秋肥の間に施用するのが一般的ですが、肥料との期間を前後2週間以上ずつあける必要があります。そのため、前後2週間以上ずつあけられない場合は、年間の施肥が終わってから(秋肥以降~春肥までの期間)に施用する方法もあります。
園に合わせた酸度矯正を行うためには、土壌分析が必要です。土壌肥料を行う場合は農業普及・振興課やJAなどにご相談ください。

⑹液肥の活用
液肥は雨を待たずに茶が肥料分を吸収できるため、効き目が早く、芽出し肥としても効果的です。希釈して使用する液肥の他、10a当たり10㎏の硫安(尿素の場合は5㎏)を水500Lに溶かし、畝間にかん注する方法があります。

おわりに

土壌の状態は少しずつ変化していくため、施肥を見直してすぐには変化が見えづらいかもしれません。しかし、毎年積み重ねていくことで、窒素、リン酸、カリのバランスが徐々に整い、地力も良くなっていきます。次の一番茶はもちろんのこと、次作以降の茶をより良くするために根気よく取り組んでいきましょう。

県南広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

添付PDF:茶の年間施肥体系について