カンキツ苗木の管理について~植え付けから3年目までの管理方法~

はじめに

3月は苗木の植え付け時期です。優良品種への更新のため、定植を予定している方も多いのではないでしょうか。カンキツでは定植後1~3年目の枝梢管理を怠ると、樹冠拡大が遅れ未収益期間が長くなるなど、のちの生産性に大きくかかわってきます。今回は、植え付け方法と植え付け後1~3年目までの枝梢管理について、温州みかんを例に紹介します。

植え付け方法

苗木の植え付けは、厳寒期を過ぎて発芽期までに行います。植栽方法は、作業効率と品質向上のため、畝立てした列植えを推奨しています。植栽間隔は、園地条件や品種、作業体系(SS防除など)によって異なりますが、温州みかんの場合、樹間2~3m×列間3~4mを目安にします。植え付け前には直径1m程度、深さ50㎝程度の植穴を掘り、掘り上げた土に堆肥と必要に応じてリン酸資材、苦土石灰を混ぜ植え付け用の土とします。
購入した苗は、根が乾燥しないように保管します。植え付け時は、接ぎ木部が5㎝以上地表面より上に出るように植え、根は四方に広げて土をかぶせます。植え付け後、苗木の株元を軽く踏み、同時にかん水を行い、土と根を密着させます。

1年目の管理

開心自然形の3本主枝仕立てを目標とし、長くて太い主枝を早期に育成するため、芽かき・摘心を行います。
① 1年生苗は、植え付け後に接ぎ木部から30㎝程度の高さでせん除します(写真1)。
② 発生した春梢が1~2㎝に伸びた頃、接ぎ木部から15㎝程度まで(下部)の春梢は全て芽かきします。上部の春梢は、1節当たり1本に芽かきし、4~5本(主枝候補枝)を残します(写真1)。
③ 春梢の充実を図るため、8葉程度展葉したら、外芽で摘心します(写真2)。
④ 春梢緑化後に発生する夏梢も、早めに先端1本残して他は芽かきし、10~12葉(節)程度展葉したら外芽で摘心します。秋梢も同様に先端1本残し、緑化しそうな箇所で摘心します。
⑤ 冬季のせん定は、翌春の発芽前までに、主枝先端の秋梢発生部の下の外芽で切り返します(図1、赤の点線部)。

写真1 1年生苗(植栽直後)
写真2 外芽での切り返し
図1 1年生樹の枝梢管理法

2年目の管理

亜主枝候補枝を育成するため、1年生樹と同様に芽かき・摘心を行い更なる樹冠拡大を図ります。
① 主枝候補枝の先端から発生した春梢は1本に芽かきします。亜主枝候補枝は主枝候補枝の地上部から50㎝程度の位置から発生している斜め上向きのものを1本残し、他は芽かきする(図2)。主枝・亜主枝候補枝ともに8葉(節)程度展葉したら外芽で摘心します。
② 夏梢、秋梢の管理は1年目の管理に準じます。
③ 主枝候補枝が長くなると、枝が倒れてくるため、先端部が下がらないように主枝候補枝3本を支柱に誘引します(写真3)。
④ 主枝・亜主枝の先端は、翌春の発芽前までに、夏梢の充実部まで切り返しを行います(図2)。

図2 2年生樹の枝梢管理法
写真3 支柱で誘引(夏梢緑化時)

3年目の管理

樹冠が拡大したら、翌年から着果させるために、枝数を増やす管理が重要となります。
① 春梢は、主枝先端・亜主枝候補枝と競合しそうなものや、上向きのものを芽かきし、横向きの春梢を中心に残します。
なお、主枝・亜主枝の先端の春梢は、樹冠拡大を図るため、8葉程度の外芽で摘心します。(写真4、写真5)
② 7月上旬頃から夏梢が発生してきますが、春梢の2~3割から夏梢が発生(7月中下旬)したら、翌年の結果母枝を確保するための夏季せん定を行います。春芽の先端1~2芽をせん除し、すでに発生している夏梢は発芽を揃えるため全て芽かきします。
③ 翌年の着果促進を図るため、着果させる亜主枝・側枝は30度以下の角度となるように下方向に誘引します。

写真4 春梢芽かき後                      写真5 春梢芽かき後(拡大)

最後に

植え付け後1年目~3年目までの枝梢管理は、早期成園化や未収益期間の短縮を図るうえで重要な管理です。適期に適切な管理ができるよう年間の作業計画に苗木管理を組み入れましょう。

 

県央広域本部 農林部 農業普及・振興課

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