来年の一番茶に向けた秋整枝のポイント

はじめに

「整枝」は樹冠面を揃え、摘採時に古葉や木茎の混入を避けること、遅れ芽や徒長枝を除き、その後に生育する新芽の生育を均一に揃えるために行う茶の基幹作業で、このうち、秋に行われるものを秋整枝といいます。近年は晩秋の気温が高く、早期の秋整枝実施による弊害が生じやすくなっていることから、今回は秋整枝のタイミング、整枝位置などの秋整枝のポイントについてご紹介します。一番茶の品質と収量アップに向けて、気象や茶樹の生育状況に合わせた栽培管理を行いましょう。

秋整枝を行う目的

秋整枝は「一番茶芽の芽数コントロール」、「摘採葉への古葉の混入防止」、「芽の均一化」などを目的に行います。特に、「一番茶芽の芽数コントロール」は秋整枝でのみ可能であるため、自らの経営戦略や、生産計画を考慮し秋整枝を実施することが重要になります。

秋整枝と春整枝

秋整枝は、冬季の寒さがそれほど厳しくない平坦地域等で主に行われ、寒さが厳しく凍霜害の危険性が高い山間地域では、一番茶が萌芽(ほうが)する約3040日前までに春整枝が行われる場合があります。春整枝は秋整枝に比べて一番茶の萌芽期や摘採期が3~4日遅く、芽揃いがやや悪くなるデメリットがありますが、冬季の低温による凍霜害を軽減することができます。

秋整枝の適切な時期や位置

(1)予備整枝
予備整枝とは、秋整枝の7~10日前ごろに本整枝位置よりも5cm前後高い位置で行う整枝のことです。予備整枝の目的は、深い整枝により下葉に急に陽が当たることで起こる葉焼けの予防、秋整枝時に多量の枝葉が機械に詰まることを防ぐなどがあります。特に樹勢が強い、秋芽の生育が良い茶園では予備整枝を必ず実施するようにしましょう。

(2)本整枝
①整枝時期
秋整枝は、早い時期に実施することで翌年の一番茶の芽揃いが優れ、新芽の生育も良い傾向にありますが、平均気温が20℃以上で行うと、遅れ芽や翌年の一番茶芽が秋に生育してしまう「再萌芽」が多量に発生し、翌年の収量・品質に影響を及ぼす恐れがあります。従って秋整枝は再萌芽の危険性が低くなる、日平均気温が19℃以下になる時期から行います。
また、早生品種は温度変化に敏感であるため、気温の変化が大きい時期には「おくみどり」などの晩生品種から整枝を始め、「やぶきた」などの中生品種を行った後、平均気温が18℃を下回る時期から「さえみどり」などの早生品種を行います。

②整枝位置
整枝位置は、作りたい園相を考慮して判断する必要があります。判断の際には、秋芽の生育や樹勢の良否、葉層の厚さ、翌年の一番茶を芽重型にするのか、芽数型にするのかなどがポイントになります。
一般に前回整枝位置からどの程度の高さで秋整枝を行うかによって、翌年一番茶の園層は異なります。前回整枝位置より5~6cm程度の高さで高めに整枝を行うと、切除される芽が少なくなり、芽重型に、前回整枝位置4~5cm程度の高さで低めに行うと、切除される芽が増加するため芽数型の茶園になります。芽数型に仕立てる際には、深く整枝を行うことになるため、整枝前に、樹勢が落ちていないか、葉層は確保されているかという点は確認するようにしましょう。

図1 芽重型と芽数型の整枝位置

再萌芽対策について

近年、地球温暖化の進行により、9月~10月の平均気温が著しく上昇しており、秋整枝後に気温が低下せず、再萌芽が発生しやすくなっています。再萌芽の割合が茶園全体の2割未満であれば、翌年の一番茶収量への影響は少ないとされていますが、茶園へのストレスや翌年一番茶の芽揃いなどを考慮すると、できるだけ再萌芽を予防する必要があります。
再萌芽の対策として、天気予報等の気温予想を考慮して秋整枝の時期を遅らせる、整枝位置を一芽分(3cm程度)高くし、再萌芽が起こった際に再整枝を行う余裕を作るなどが有効です。
これまでは地域で程度の差はありつつも、10月中旬には秋整枝を開始していましたが、昨年は日平均気温が2日間続けて18℃を下回ったのは、早い地域でも1030日、遅い地域だと11月6日と秋整枝の適期が遅くなっています。今年も気象庁の長期予報では、10月の気温は高いと予想されており、暦どおりに秋整枝を行うと再萌芽が発生するおそれがあるため、天気予報等で気温の推移を確認し、適切な時期に秋整枝を実施してください。

図2 令和6年10月29日~11月8日の日平均気温の推移
図3 再萌芽の様子  
図4 寒害にあった再萌芽芽

おわりに

秋整枝は翌年の一番茶の品質・収量を左右する重要な基幹作業ですが、晩秋の高温化により秋整枝を行う時期の判断が難しくなっています。これまで紹介した秋整枝のポイントを参考に、気象庁などの気温予想をしっかり確認して秋整枝を行いましょう。

県北広域本部 球磨地域振興局 農業普及・振興課

来年の一番茶に向けた秋整枝のポイント (PDFファイル)