温州みかんの品質向上対策

共通事項

今年の温州みかんは、春季が高温・多雨で推移したことから、平年より発芽期が4~5日、満開期が5~7日程度早い状況となりました。着果量については、園地でばらつきがあるものの、極早生で中、早生以降でやや少程度となっています。
今後の天候や樹の状態をよく見つつ、適期に摘果やシートマルチ等を実施し、高品質果実の生産に努めましょう。

摘果について

高品質果実生産と隔年結果防止を目的として、樹の着果量に応じた摘果作業を行っていきます(表1)。

【粗摘果】
品質が上がりにくい内成り果やスソ成り果を中心に、小玉果や奇形果の摘果を実施します。なお、着果が少ない園では、できるだけ着果負担をかけ品質向上を図るため粗摘果は最小限にとどめ、生育状況や肥大進度(表2)に合わせて8月以降の仕上げ摘果や樹上選果で対応しましょう。

【仕上げ摘果】
最終葉果比を意識しつつ、小玉果、傷果、変形果等を落とす仕上げ摘果を行います。上向きで果こう枝が太い果実は日焼けしやすく糖度も上がりにくいですが、摘果すると夏秋梢(かしゅうしょう)が発生し果実品質の低下を招くため、樹上選果時に取り除きましょう。

フィガロン乳剤の散布について

果実生育初期のフィガロン乳剤散布により、根の伸長を止め、養水分の吸収を抑制することで樹体に水分ストレスを与え、果実品質の向上を図ります。1回目は満開後6070日頃に発根を確認してから2,000倍~3,000倍で散布し、効果が低下する1回目散布後20日頃(満開後8090日頃)に3,000倍で2回目を実施します。ただし、樹勢が弱っている樹や高温乾燥が続いている場合には、散布を控えます。

シートマルチ栽培について

シートマルチは夏秋期の節水管理により樹体に適度な土壌水分ストレスを付与することで、果実の糖度を高めることを目的に行う作業です。特に異常気象が多い近年では、過剰な降雨による園地への水の流入を防ぎ高品質なみかんを生産するための重要な管理となります。シートマルチの実施時期目安は表3に示す通りですが、土壌排水性などの園地条件によって被覆開始時期を調節してください。
樹体に確実な水分ストレスを与えるためには、①経年劣化による破損等がないマルチを用い、②株元までしっかりと固定するとともに、③降雨を速やかに園外に排出する排水対策を講じておくことが重要です。また、台風接近時には強風対策として、杭、土のう袋やバンドを用い、マルチの補強を実施しましょう(図1)。
被覆完了園では、定期的にマルチの破れや雨水の滞留がないかなどの確認を行い、雨水がマルチ下へ流入しないよう必要に応じて修復や排水対策を行います。
なお、過度に乾燥させると樹勢の低下や酸高果・小玉果の発生が多くなる恐れがあります。葉が巻いたり、葉色の低下など、乾燥ストレスがかかり過ぎているときには、果実品質を確認しつつ(表4)、かん水を行うようにしましょう。かん水チューブ等のかん水施設の設置により、効率的なかん水を行うことができます。

図1 杭による直管の抑え、ひも、土のう等によるシートの押さえ 
(熊本県果樹対策指針別冊より抜粋)

シールディング・マルチ栽培について

園地の形状などにより、上記のシートマルチによっても、雨水が流入しやすく十分な乾燥ストレスがかかりにくい園地では、シールディング・マルチ栽培(S.マルチ)の導入が有効です(図2、表5)。
これは、防根・防水シート(NARO.Sシート)を植列と平行に50cm程度埋設し、根域への雨水流入とシートマルチ外への根の伸長を防ぎ、高糖度果実を安定して生産する栽培方法です。通路勾配2%、畝2040cm程度の排水に適した環境であれば、既存園でも導入できます。
なお、乾燥ストレスが付与されやすいため、かん水チューブの導入が望ましく、また地下水位が高い園地や有効土層が深い園地では十分な効果が得られない場合があります。興味がある方は最寄りの指導機関に相談ください。

図2 シールディング・マルチ栽培の模式図
(熊本県果樹対策指針より抜粋)

おわりに

フィガロンやマルチ等の果実品質向上対策は、いずれも樹体にストレスを与えます。次年度の生産量確保を意識し、収穫後にはかん水、秋肥の施用や葉面散布等により、確実な樹勢回復を図りましょう。
今年の夏季の気温は平年より高く推移する予報が出ています。熱中症には十分気を付けて作業を行ってください。

県央広域本部 農林部 農業普及・振興課

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