麦の中期管理について

はじめに

麦の品質・収量を確保するためには、適切な栽培管理が重要となります。麦栽培における中期(1月~2月)の管理時期の生育は、分げつ期~幼穂形成期にあたります。
この時期の管理は「麦踏み」、「中耕」、「培土」、「追肥」が大事な作業となりますので、これらの作業について説明します。

麦踏み

麦が3~4葉期頃に、1度目の麦踏みを行います。麦踏みを行うことで、分げつの促進や倒伏防止、下位節間伸長を抑制します。節間伸長が抑えられることで、穂揃いが良くなり、霜による根の立ち上がり防止や根張りを向上させる等の効果が期待されます。播種(はしゅ)時期の違い等により、生育が平年よりも早く進展する場合があります。生育が早く進展すると、幼穂の形成が早まり、春頃に遅霜が発生した場合、幼穂が凍霜害を受ける可能性が高まります。そのため、麦踏みにより幼穂形成を遅らせることが有効です。
麦踏みは、茎立ち期までに2、3度行うことで効果が更に高まりますが、茎立ち期以降に麦踏みを行うと、茎や幼穂を痛めてしまいます。それにより、茎数が減少し、減収に繋がる恐れがあります。また、降雨等により普段より土壌水分が高い時は避け、適期に行いましょう。

写真1 麦踏み作業の様子(管理機)
写真2 麦踏み作業の様子(トラクター)

中耕・培土

中耕は、条間の土を耕すことで、除草や雑草発生の抑制ができます。また、土が軟らかくなり、土壌内の通気や透水性が向上し新根の発生促進に繋がります。
培土は、中耕によって軟らかくなった土を麦の茎葉に振りかけ、株元に土を寄せることで、倒伏や防寒・防乾予防、無効分げつや雑草の発生抑制にも効果があります。
生育初期は多く土を寄せてしまうと、麦が土で覆われてしまい、分げつ抑制となる可能性があるため、3~4葉期頃(12月下旬~1月上旬)、の培土は土の量を少なく、その後の培土も生育に合わせて行うようにしましょう。
中耕と培土の管理作業は、それぞれ分けて行うよりも、併せて行うことが一般的です。3~4葉期頃、5~6葉期頃(1月下旬~2月上旬)、3月頃にも培土し、計3回行うことが適当ですので、3回実施しましょう。麦踏みと同様に土壌水分が高い時は避けて、土壌が乾いている時に実施してください。

写真3 中耕・培土作業の様子

雑草防除

雑草が多発すると、麦の生育に必要となる養分を雑草に吸収され、雑草の繁茂による生育阻害が起こります。また、収穫時に雑草があると雑草が収穫機に絡み収穫作業の効率低下や、雑草種子の混入による品質低下等の問題が起こります。
中耕・培土を行った際に残った雑草や、後発する雑草を抑えるためには、茎葉処理剤を使った薬剤による防除を行うことで除草効果が高まります。

追肥

麦の生育ステージが、1月下旬頃には幼穂形成期に入り、2月下旬頃には節間伸長期に入ります。これらの時期は麦の生育が旺盛であるため、肥料切れを起こしやすい時期にもなります。肥料切れになると、葉色が黄化し生育量が小さくなり、収量や品質に悪影響を及ぼす可能性が高まります。そのため、追肥が重要となります。この時期の追肥には、幼穂の栄養状態を良くする効果があるため、1穂当たりの粒数増加等の効果があります。
追肥には、1月下旬~2月上旬頃に行う追肥(穂肥)、4月上旬~中旬頃のタンパク質含有率向上の追肥(実肥)があります。これらの時期の追肥が麦の収量品質向上に繋がる重要な追肥となります。
特に小麦は、タンパク質含有率により、パンや麺、菓子等の加工品への適性が変わってきます。中でも、パン用の小麦はタンパク質高含有の小麦が求められるため、実肥が重要な作業となります。

写真4 追肥作業の様子

おわりに

担い手不足や農業者の高齢化もあり、農作業の効率化が求められる中で、麦栽培の中期管理は大変な作業ではありますが、需要に応じた麦の安定生産を行うためにも重要な管理作業となります。
麦の品質・収量向上を図るため、今一度基本技術を確認し、適切な管理作業に努めましょう。

県南広域本部 球磨地域振興局 農業普及・振興課

 

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