麦の播種(はしゅ)、初期管理について~安定した収量・品質を得るために~

はじめに

今年も麦類のシーズンが始まりました。
麦の播種時期は重要で、遅まきになると低温のため発芽が遅れ、その後の生育も悪く、出穂や成熟も遅れて減収に繋がります。
また、「稲は地力でとり、麦は肥料でとる」と言われるように、稲に比べると麦類は肥料の効果が大きく収量や品質は施肥量によって大きく左右されます。
そこで、今回は麦の播種から初期の管理までのポイントを項目別にお伝えします。

管理について

① 排水対策
麦は、温度格差があり、雨の少ない地域の原産で、特に湿害に弱いため、排水対策を必ず実施しましょう。
・地表面の排水→額縁明きょを必ず排水口につなげましょう。
・土壌中の排水→弾丸暗きょを施工しましょう。
排水効果を高めるため、土壌が乾いている時に施工するのがポイントです。
また、排水不良田では畝立て播種やアップカットロータリーによる播種も効果的です。

図1.明きょ、暗きょの模式図
図2.弾丸暗きょ施行の様子

② 土づくり
最近では、土壌改良資材や堆肥の施用が少ない傾向にあるため、地力の低下が懸念されています。
雨が降っても水が溜まらず、干ばつになっても、土に湿り気がある土(団粒構造をもつ土)を作るため、土づくりを行いましょう。
特に、牛ふん堆肥の秋施用は、小麦の穂数・籾数・タンパク増に効果が高いとされていますので、堆肥の選定にあたっては、完熟堆肥を用いるようにしましょう。

 

表1.土づくりの目安

③ 播種
播種時期は、11月20日~11月30日が目安です。降雨前後の播種は発芽不良の原因となるため、天候にも気を付けながら、ほ場条件の良いときに播種しましょう。播種量は適期に播種した場合で6~7kg/10aが目安です。
播種深度が深すぎると出芽の遅れ・不揃い、二段根、生育不良の原因となります。反対に、浅すぎると除草剤の薬害や鳥害の原因となるため、地表から3㎝程度の深さを目安に播種しましょう。

※浅耕播種による麦類の省力播種技術について
麦類における浅耕播種技術は、スズメノテッポウなどのイネ科雑草を総合防除できる播種法として開発されました。大豆後作では荒起こしを省略した浅耕一工程播種、水稲後作では、荒起こしと播種時の耕起ともに5㎝程度とする浅耕二工程播種を実施することで、作業の省力化や低負荷化が図られることが報告されています。

・大豆後作
大豆後作では、土塊が小さくなりやすいため、収穫後の耕起を省略して刈り株や残渣(ざんさ)を麦類の播種時期まで放置します。その後大豆の畝部分のみを耕起しつつ一工程で播種することで、降雨による播種遅れを回避しながら省力的に播種することができます。
・水稲後作
水稲後作では、大豆後作に比べて一工程では土塊が大きくなりやすいため、播種前に浅く荒起こし(事前浅耕)をして、播種時に5㎝程度の浅耕にすることでトラクターの負荷を小さくしつつ播種することができます。

 

図3.大豆及び水稲後作における浅耕播種工程の例
(農研機構 稲・麦・大豆輪作技術マニュアルより)

④ 雑草防除
雑草は、播種後の土壌処理剤のみでは十分に防除できない場合が多いため、必ず茎葉処理剤や土入れと組み合わせた体系防除を行うようにしましょう。同一除草剤の連続使用は避け、中期除草剤は適期を逃さないように散布しましょう。
また、近年問題となっている雑草としては、カラスノエンドウ、カラスムギ、ネズミムギ(イタリアンライグラス)が挙げられます。カラスノエンドウは、子実が麦に混入すると品質低下を招きます。初期除草剤と2~3葉期までのアクチノールの体系処理が効果的です。収穫期まで雑草が残ってしまった場合は、収穫前に必ず抜き取りを行いましょう。カラスムギ、ネズミムギについても、対応が遅れると急増するため、発見したら種子を落とす前にすぐに抜き取りましょう。

図4.カラスノエンドウ

おわりに

初期管理を中心に安定した品質、収量を得るための麦の栽培技術について述べました。小麦の生育期間中には、今後、病害虫防除等様々な管理があります。
これらの基本管理がうまく組み合わされてこそ安定した品質、収量の小麦が生産できます。
これらの基本管理技術を組み合わせて実需者のニーズにあった麦の生産に努めましょう。

県央広域本部 農林水産部  農業普及・振興課

 

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PDF:麦の播種(はしゅ)、初期管理について