麦の中間管理「麦踏み」「中耕・培土」について

はじめに

冬季(12月頃)は、麦の分げつ期、幼穂形成期にあたります。分げつ数や幼穂形成は、麦の収量・品質に直結するため、適正な管理を行うことが重要です。
今回は、麦の中間管理作業のうち、「麦踏み」と「中耕・培土」について紹介します。
いずれも、基本的な管理作業ではありますが、分げつ数や幼穂形成に大きく影響するため、作業ごとの注意点を再確認し、収量・品質の安定を目指しましょう。

 

麦踏み(踏圧)

トラクターに取り付けたローラー等を使用して、麦を鎮圧します。
(1)主な効果
①分げつの促進
②穂揃いの改善、成熟期のムラの緩和
③下位節間の伸長抑制や、土壌を固めることによる倒伏防止
④霜上害(厳冬期の霜柱発生による根の立ち上がり)の防止
⑤幼穂形成を遅らせることによる、春先の凍霜害の防止
(2)作業時期について
麦3葉期(12月下旬~1月上旬)から茎立ち期前(2月中~下旬)にかけて、2~3回程度行います。
茎立ち期以降の麦踏みは、茎や幼穂を痛めてしまい減収に繋がるため、避けましょう。
判断の目安として、「草丈20~25cm」「節間長2~3cm」を超える場合は行わないようにしましょう(図1参照)。
株を剥いて節間を確認することは、幼穂の長さから追肥の
適期も判断できるため、有用です。
また、2回目以降の麦踏みは、前回から10~14日程度間隔をあけて行いましょう。

図1 麦踏み作業実施の目安

(3)その他の注意点
①必ず土壌が乾燥した状態で実施しましょう。
逆に、排水不良や多雨の年などで土壌水分が多い条件下では、作業を控えましょう。土が締まりすぎてしまい、生育が阻害されます。
②湿害や播種の遅れ等により、生育不良や分げつの遅れが見られる場合は、作業は控えましょう。
③中期除草剤を散布した前後は、2~3日は間隔をあけましょう。薬害の発生に繋がります。
④早播き(まき)や暖冬の年は、麦の生育が早く、凍霜害や倒伏が発生しやすいため、麦踏みを徹底し、生育を抑制しましょう。
⑤黒ボク土等の軟らかい土壌では、根の浮き上がりや土の過乾燥が発生しやすく、麦踏みに
よって土を締めることが特に必要です。

写真1 麦踏みの様子

中耕

中耕は、中耕ローター等で条間を耕うんする作業です。表面の土壌を攪拌(かくはん)し、固まった土を軟らかくします。
(1)主な効果
①雑草防除(除去と発生抑制)
②明きょ(表面排水溝)の整備による排水対策
③土壌内の通気性や透水性の向上による新根の発生促進
④株間が開くことで、日当たりや風通しが良くなる
※中耕は、続けて紹介する培土(土入れ)と併せて行うのが、一般的です。

 

培土(土入れ)

培土は、土を麦の茎葉に振りかけて、株元に土を入れる作業です。
(1)主な効果
①無効分げつ(過繁茂)抑制
②雑草防除(除去と発生抑制)
③倒伏防止
④根際の乾燥防止、傷んだ根の機能回復
⑤株元に土を寄せることによる保温効果で幼穂の凍結を防止

(2)作業時期について
34葉期頃から2月中旬頃までに、23回行います。
また、培土は、追肥後に行いましょう。株元に肥料が集まることで、肥効が安定します。

(3)その他の注意点
①麦踏みと同様に土壌水分が高い条件下では、作業を控えましょう。土塊が大きくなり、効果が低減します。「乾燥(晴天)が続いている日」「霜が溶けた午後」に行うのが理想的です。
②生育初期に多く土を入れてしまうと、分げつの抑制が過剰になります。麦34葉期頃は土の量を少なく、その後は生育に合わせて増やすようにしましょう。生育不良のほ場では特に注意が必要です。
③麦踏みの直後は、麦が土に埋もれてしまい生育が阻害されるため、数日間は控えましょう。

 

写真2 中耕・培土の様子

おわりに

近年は、米価の低迷が続いており、水田作経営の安定のため、麦作の重要性はこれまで以上に高まっています。
今回紹介した「麦踏み」「中耕・培土」は、麦栽培における重要な管理作業です。しかし、麦の生育をあえて抑制する面もあるため、不適切な方法での実施は、減収や品質低下に直結します。注意点を理解し、ほ場や麦の生育状況をよく観察したうえで、適切な作業を行いましょう。

県北広域本部 鹿本地域振興局  農業普及・振興課

添付PDF:麦の中間管理「麦踏み」「中耕・培土」について