ナシ「秋麗」の裂果は、裂果発生期前のかん水及びシートマルチにより軽減される

農業研究センター果樹研究所落葉果樹研究室

研究のねらい

良食味な早生の青ナシ「秋麗」は、現在15haが栽培されています。梨「秋麗」は年によって、6月中下旬の降雨が原因で裂果が助長されることが分かっています(農業研究成果情報№952)。そこで、かん水やシートマルチによる裂果軽減技術の研究結果を紹介します。
各試験区の処理は、図1のとおりです。「マルチ区」は裂果発生期にシートマルチ(図2)により果実への水分吸収を抑えました。「事前かん水区」は裂果発生期前にかん水を行い、果実への水分吸収の急な変化を抑えました。「無処理区」及び「裂果再現区」は、裂果発生期までは無かん水(2021年はマルチによる降雨侵入防止)で土壌を乾燥させた後、裂果発生期に樹上散水を行い、果実への水分吸収を促進させました。

図1 各試験区の処理
図2 樹冠下シートマルチ

研究の成果

1.試験を実施した年の6月中旬~6月末(裂果発生期)の降水量と樹上散水量の合計は、裂果が多発した2016年と比較して、2020年は同程度、2021年は3割少なくなります(表1)。

2.裂果の発生は、樹上散水量及び降水量が多かった2020年が、2021年と比べて多かったです。裂果は処理区全てで見られましたが、マルチ区は、両年とも他の区より発生が少なかったです。事前かん水区は、2020年は無処理区と同程度でしたが、2021年は裂果再現区より少なくなりました(図3)。

図3 土壌水分管理の違いがナシ「秋麗」の裂果に及ぼす影響

3.果実品質は、処理区間での差は見られないため、事前かん水及びシートマルチ施用による影響はありません(表2)。

成果の活用面・留意点

1.事前かん水区は、10日ほど降雨がなかった時を目安にかん水し、2020年は5月26日、6月1日、6月9日の3回、2021年は6月8日の1回、10mm/回で実施しました。
2.樹冠下に敷設するシートは、土壌への降雨侵入防止が目的ですので、廃ビニル等でも裂果軽減効果が期待できます。
3.2020年のような降水量が多い年は、事前かん水だけでは裂果軽減効果が不十分ですので、シートマルチの敷設を行うようにしてください。

 

No.999(令和4年(2022 年) 6月)分類コード 02-10
999_ナシ「秋麗」の裂果は、裂果発生期前のかん水及びシートマルチにより軽減される

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