水稲「くまさんの輝き」の普通期栽培では栽植密度による収量・品質の変動は小さい
農業研究センター農産園芸研究所作物研究室
研究のねらい
「くまさんの輝き」は熊本県が県産米リーディング品種として作付けを推進する極良食味品種であり、耐倒伏性、高温耐性等優れた特性を合わせ持ちます。今後、作付けを行う生産者の増加と県内全域における作付面積の拡大が見込まれていますが、現地では既存の品種が多様な栽植密度で栽培されている状況です。
しかし、当品種の普通期栽培条件下における栽植密度の違いによる生育、収量、品質および食味への影響は明らかになっていません。そこで、栽植密度の違いが生育・収量・品質(検査等級・外観品質)・食味に及ぼす影響を調べましたので紹介します。
研究の成果
「くまさんの輝き」について、6月下旬移植で化成肥料(以下:化成)または有機配合肥料(以下:有機配合)を用いて標準的施肥量(窒素成分8㎏/10a)で全量基肥栽培を行う条件のもと、栽植密度を11.0株/m2~18.5株/m2の範囲で変動させると、生育・収量・品質(検査等級・外観品質)・食味は化成、有機配合に関わらず以下のようになります。
1 出穂期、成熟期の変動は生じません(表1)。
2 栽植密度が高いほど最高茎数は多くなりますが、収量および収量構成要素(m2当たり籾数、登熟歩合、玄米千粒重)に明確な差はありません。(表1、表2)。
3 検査等級、外観品質およびタンパク質含有率に明確な差はありません(表3)。
4 食味の変動はありません(表3)。
以上のことから、水稲「くまさんの輝き」は6月下旬移植、全量基肥肥料を用いた標準的施肥量(窒素成分8㎏/10a)条件で栽培した場合、化成肥料、有機配合肥料のいずれにおいても栽植密度11.0株/m2~18.5株/m2の範囲では、標準(15.9株/m2)と同等の生育・収量・品質(検査等級・外観品質)・食味が得られます。
成果活用面・留意点
1 県内関係機関が実施した実証展示ほの成績では、標準的な施肥量より少ない条件、かつ11.0株/m2以下の疎植では、茎数、穂数が確保できず、収量が減少しました(表4)。
2 本試験は、農産園芸研究所内(合志市)灰色低地土水田における移植栽培(1株3本手植え)条件下で行いました。移植は、2020年は6月23日、2021年は6月22日に実施しました。
3 本試験で用いた化成肥料は、全窒素のうち速効性窒素を55%、シグモイド100日溶出型被覆尿素肥料を45%含みます。有機配合肥料は、全窒素のうち、速効性窒素を10%、有機態窒素を50%、シグモイド100日溶出型被覆尿素肥料を40%含みます。
4 2020年は生育初期に低温・寡照、出穂後は高温・寡照で推移しました。2021年は生育初期に高温・寡照、9月以降は高温・多照で推移しました。試験を実施した2か年の気象条件は異なったため、主要な項目については年次を分けて表に記載しています(表1、表2、表3)。
5 栽植密度については、11.0~18.5株の範囲内で、地域の耕種基準に基づき栽培してください。
No.959(令和4年(2022 年)6月)分類コード 02-01
959_水稲「くまさんの輝き」の普通期標肥栽培では栽植密度による収量・品質の変動は小さい (PDFファイル)
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