3.育苗箱が深いことにより、1箱当たりの重量が播種時には約1㎏、移植時には約2㎏重くなります(図3)。
水稲における高密度播種(はしゅ)と育苗箱全量施肥栽培を組み合わせた省力技術
農業研究センター生産環境研究所土壌環境研究室
研究のねらい
地域農業の担い手不足が深刻化しており、稲作経営は規模拡大による集約化、さらに費用および労働時間の削減による経営改善が喫緊の課題となっています。水稲の高密度播種ならびに専用肥料による育苗箱全量施肥栽培は、それぞれ別個の技術として実用化されています。両技術の組み合わせが可能となれば大幅な省力化ならびにコスト低減に繋がると考え、この2つの技術を組み合わせた育苗技術を確立しましたので紹介します。
研究の成果
水稲育苗において、深さ40㎜の育苗箱を用い、播種量250g/箱(乾籾換算)の高密度播種と施肥量2,250g/箱の育苗箱全量施肥(箱底施肥。以下、高密播苗箱施肥)を組み合わせることで、慣行栽培(播種量100g/箱、育苗箱30mm深、本田における全量基肥施肥。以下、慣行)と比較して、以下の効果が得られます。
1.10a当たりの使用育苗箱数を8箱に減らすことができ、本田への施肥は不要となり、窒素施用量を1割減らすことができます(表1)。
2.苗質として、充実度は低い(図1)ものの、苗丈は13~19cmで機械移植に適した範囲(10~25cm)です(図2)。
4.移植後の本田における生育、収量ならびに外観品質は、同等以上です(表2,3)。
成果活用面・留意点
1.通常より深い40㎜深の育苗箱に播種機が適応可能であることを確認する必要があります。
2.苗の根への水と酸素の供給を両立するため、育苗場所は畑育苗を推奨します。慣行育苗よりも床土が乾燥しやすいため、苗が萎れない程度に1日の潅水回数を増やす必要があります。
3.苗の充実度が低く生育するため、出芽後の被覆シートを苗丈1cm程度で取り除くなど、充実した苗を育てる管理を行います。その他、水稲育苗箱全量施肥栽培の基本育苗管理を徹底し、初めての取り組みにおいては小規模の試作とすることが望ましいです。
4.育苗箱重量の増加により、苗のルートマット強度は移植の際の苗自身の重量に耐え得る必要強度を下回りますが、苗取板を用いれば移植作業に支障はありません。
5.面積当たりの使用箱数が本田施肥量と連動するため、高密度播種対応田植機を用いるとともに、横送り回数とかき取り量(高さ)による面積当たり使用箱数の正確な設定が必要です。
No.975(令和4年(2022 年)6月)分類コード 03-01
水稲における高密度播種と育苗箱全量施肥栽培を組み合わせた省力技術
主食用米
水稲「くまさんの輝き」の普通期栽培では栽植密度による収量・品質の変動は小さい
阿蘇「コシヒカリ」の黒ボク土における作付前土壌の可給態窒素量に応じた窒素施肥法
平坦地における水稲「くまさんの輝き」は6月中の移植で収量・品質・食味が安定する
平坦地域栽培で水稲品種「やまだわら」が多収となる㎡当たり籾数は40,000粒である
球磨地域における水稲「ヒノヒカリ」、「にこまる」の安定栽培のための好適出穂期
阿蘇地域における業務用水稲品種「やまだわら」の移植適期は5月中~下旬である
高冷地早植え水稲「ヒノヒカリ」における収量と6月の気温との関係
(No.856(令和元年(2019 年)5 月)分類コード 02-01)水稲の生育診断においてUAV搭載近赤外線改良カメラを用いて観測したNDVIの変動要因
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(No.715(平成28年1月)分類コード02-01)