白一重袋を被袋したナシ「甘太」は収穫後にポリ個装することで日持ち性が向上する
研究のねらい
ナシ「甘太」は、満開後60日ころまでに白一重袋を掛けると高糖度果実を生産できますが、収穫後に果実がしなびやすく、棚持ちが短いことが販売上の問題です(農業研究成果情報№884)。そこで、白一重袋を被袋した果実の収穫後の日持ち性を向上させる技術を開発しましたので紹介します。
研究の成果
1.室温で貯蔵した場合の1果重は、裸果では収穫直後から徐々に減量し、14日後には約10%減量しますが、ポリ個装した果実では約1%の減量に抑制されます(図1)
2.収穫後の果実は、減量が進むと次第に張りがなくなり、更に進むと果皮表面にシワが発生し、しなびた果実となります。裸果では、収穫7日後にはしなび果が発生し始め、日数が経つと増加します。一方、ポリ個装した果実では、収穫14日後もしなび果の発生はみられません(図2)。
3.収穫14日後の糖度は、ポリ個装した果実は収穫時と変わりませんが、裸果では2度程度上昇します。また、いずれの場合も果皮色がやや黄化し、果実硬度が0.2~0.51lbs低下します(表1)。
4.収穫14日後の食味評価は、ポリ個装果実が裸果に比べ食感の評価は高く、甘味及び食味の評価に差はありません(表2)。
普及上の留意点等
1.本試験は、満開約20日後に予備摘果、満開約40日後に本摘果と、満開約50日後に白一重袋で袋掛けを行い、収穫適期(地色:2.5程度)に収穫した果実を用いた結果です。
2.ポリ資材は、厚さ0.03㎜のLDPE(低密度ポリエチレン)袋を使用しました。
お問い合わせ先
農業研究センター 果樹研究所 落葉果樹研究室
【TEL】0964(32)1723
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