新規就農道~ビギナーズファーマーのいろは~ 第1回 「新規就農者を応援する補助金があるって本当?」
ぼくは「就農した郎」。27歳。これまで県外の他産業で働いていたけど、「おいしい野菜を作って、地元を元気にする農家」になりたくて、熊本に帰ってきたんだ。兼業農家の祖父の手伝いをしながら農業のことを勉強しているよ。
両親は会社員だったから、農業のことはわからないことばかり。やる気だけはあるけど、経験・知識・技術が少ないことが悩みの種です。専門家のみなさん、教えてください!!
質問:新規就農者を応援する補助金があるって、本当ですか?
回答者:県庁農地担い手・支援課 竹下主幹
竹下:正確には、「新規就農して、次世代を担う農業者となることを目指す方を対象に、就農直後(5年以内)の経営確立を支援するための「★農業次世代人材投資事業(経営開始型)交付金」という補助金があるよ。最長5年間、年間150万円(所得に応じて変動)交付するという事業なんだ。
したろう:年間150万円ももらえるの??スゴイ!!でも、「次世代を担う農業者となる」って具体的にどういう人のことですか?僕でもあてはまるのかなあ。
竹下:いくつかのポイントを説明するね。
まずは独立・自営就農時の年齢が45歳未満である人であること。独立・自営就農というのは、自ら農地、営農に必要な資産(機械や設備など)を持ち、それらを使って作物を栽培・収穫・販売し、その収支を自分で管理する、すなわち「経営者」として農業経営を開始すること指しているんだ。
したろう:手伝いでなく、自分で経営を開始しないといけないんだね。
竹下:そう。新米の農業経営者を応援するための制度なんだよ。
次に経営に用いる農地の1/2以上を、自作地か親族以外の第三者からの貸借でまかなっていること。農地の過半を親族(3親等以内)から貸借している場合は、親族から貸借している農地を交付期間中に所有権移転、つまり自分の名義にしないと交付金を返還しなければならないという要件があるんだ。
したろう:機械や設備も自分で準備しなければいけないの?
竹下:機械なども、親族から貸借することは認められているよ。
したろう:僕の場合、おじいちゃんが米を作っているんだ。おじいちゃんの田んぼと機械を借りて、農業経営を開始すると対象になりますか?
竹下:農家子弟の場合は、非農家から農業経営を開始する「新規参入者」と同等の経営リスクを負うと、市町村に認められれば対象にるよ。
したろう:経営リスクってどんなことですか?
竹下:たとえば、新たな作目の導入や、経営の多角化かな。したろう君の場合おじいちゃんが米を作っている。となると、米以外の品目を生産したり、米を加工して販売するなどが考えられるね。たとえば野菜を作ろうと考えた場合、トラクターは使えるけど、播種機や動噴、ハウスなど新たに投資する必要が出てくる。それに、初めて作る品目であれば、技術・経験が少ない分リスクは高いと言える。
したろう:むむむ。なかなかハードルが高いぞ…
竹下:大事なことがまだあるよ。一つは「認定新規就農者」であること。「認定新規就農者」になるには、経営開始から5年間のうちに、どんな作物をどのくらいの面積作付し、どのように販売して利益を上げるのか、最終的に農業経営で生計を立てていけるのか、具体的な計画(=青年等就農計画)を作成し、その計画が実現可能かどうかなどを就農地の市町村に認定されなければならないんだ(ほかの要件含め、図2を参照)。
したろう:計画か~、考えたことないな…
竹下:それと大事なことをもう一つ。資金の交付終了後、交付期間と同期間以上営農を継続しなければならない。途中で農業をやめたら「資金の返還」となるんだ。
したろう:返還!!厳しいね!でも税金だから当然か、、。
竹下:補助金を活用するのも有効だけど、あくまで期間限定の支援。補助金が無くなった後も営農を続けられるよう基盤を固めることが最も重要だよ。「もうかる農業」をやっていくためにはどうしたらいいか、学んで、考えて、実践・改善することがとても大事だよ。(続く)
「農業次世代人材投資事業(経営開始型)交付金」の詳細は、最寄りの市町村農政主管課または農業普及・振興課までお問い合わせください。
ひとことアドバイス
農業経営を開始する前に、研修を受けて技術や知識を学ぶ制度もあるよ。
詳しくは「熊本県新規就農支援センター」へご相談を!!
主な交付要件
(1)独立・自営就農時の年齢が原則として45歳未満の認定新規就農者(注1)で次世代を担う農業者となることに強い意欲を有していること
(2)独立・自営就農であること(農地の所有権・利用権を対象者が有していること、交付対象者名義で生産物取引を実施すること等、その他要件あり。)
(3)経営を継承する方(農家子弟の方)は、農業従事後5年以内に経営継承して経営を開始し、かつ新規参入者と同等の経営リスク(新規作目の導入、経営の多角化等)を負って経営を開始すると市町村長に認められること。※1戸1法人以外の農業法人を継承する場合は対象外。
(4)就農する市町村の「人・農地プラン」に位置付けられていること(見込みも可)または、農地中間管理機構から農地を借り受けている方
(5)生活保護等、生活費を支給する国の他の事業を受給していない方。農の雇用事業による助成を受けたことがない農業法人等
注1:市町村において、農業経営基盤強化促進法に規定する青年等就農計画の認定を受けた者
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