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新規就農道~ビギナーズファーマーのいろは 第2回 経営計画の作り方

ぼくは「就農した郎」。27歳。これまで県外の他産業で働いていたけど、「おいしい野菜を作って、地元を元気にする農家」になりたくて、熊本に帰ってきたんだ。兼業農家の祖父の手伝いをしながら農業のことを勉強しているよ。
前回は、農地・担い手支援課の竹下さんから「経営計画を作ってみたら」というアドバイスをもらいました。計画づくりって、どんなことから始めたらいいのかな?

松本:経営計画の作り方についてについて、一緒に考えていこう。したろう君は、これから、どこで、どのような農業を始めようとするのか、考えているかな?したろう:来年くらいに、じいちゃんの農業を引き継いで、「儲かる農業」をやっていきたいと思っているけど…。
松本:漠然としているね。まず、経営理念と経営ビジョンを描いてみよう。
したろう:経営ビジョン、経営理念?聞いたことはあるけど、考えたことなかったな。
松本:経営理念とは、「何のために農業経営を行うのか」など経営をする心構えや信念などを示したもの。経営ビジョンとは、将来あるべき姿、ありたい姿を表現したものだよ。明確な夢を持って、夢を実現させるための道筋が描けている経営は成功の可能性が高いと思うんだ。経営ビジョンを実現するための戦略的な発想をベースに、具体的にしたものが、「経営計画」だよ。
したろう:「自分がどんな経営をしたいのか」が計画のベースになるんだね。
松本:そうだよ!理念やビジョンを基盤として、売上や利益をいくらにするかなど、先行きの目標や計画を、数値を使って明確にし、それを経営の羅針盤とするんだ。
したろう:数値にすると具体的なイメージがわくね。
松本:計画を設定するのは、利益や売上だけではないよ。例えば、利益〇〇万円確保を目指すため、どれくらいの規模(面積)で経営を行うのか、ハウスを建てるための資金をどう確保するのか、農地や人材の確保なども検討、管理していかなければならない。農業経営は幅が広いからね。
したろう:経営者になるのも大変だな…。
松本:それぞれの項目ごとに計画を作ったら管理しやすくなると思うよ。次の表にまとめてみたから、参考にしてみて。

(1)利益計画…利益を確保するために、売上げ、経費がどれくらいかかるのかを試算
(2)作付計画…どんな品目をどれくらいの面積、いつ作付するのかを計画
(3)販売計画…生産したものをどこへ、どのような方法で販売するのかを検討
(4)設備投資計画…機械や施設などの導入と効果を検討
(5)資金繰計画…経営に必要な資金や生活に必要な資金を検討
(P.〇に参考資料掲載)

松本:家族経営を中心に経営を行っていこうと考えているならば、ライフサイクルも考慮した方がいいよ。ライフステージによって、農業経営に関わる労働者数が増減したり、子供の教育費など必要家計費も大きく変わってくるからね。
したろう:実際に経営計画を作ってみるよ!どうやって作ったらいいですか?
松本:どんな品目を作るのか決めたなら、同じ品目を栽培している農家の数値を参考にして計画を作成する方法(直接比較法)、農業経営に関する調査結果などから、平均的なモデルを想定したうえで標準にして、経営計画を作成する方法(標準比較法)などがあるよ。
熊本県で作成された農業経営指標を参考にしてつくる方法もある。農業経営指標は、128の作物について、10aあたりの労働時間、売上、経営費、所得などがまとまっているんだ。データを参考にすると、導入予定作目、栽培方法、労力、栽培面積などを整理しやすくなると思うよ。
したろう:既存のデータを、自分の経営計画にあてはめるんだね。
松本:自分が現在所有または確保しようとしている農地や労力などの経営資源の範囲内で、作目のデータを組み合わせて、大まかな収入見込みなどの計画を作りあげる。複数の作目を組み合わせて行う場合は、それぞれの作目ごとの計画内容を精査して、その後、全体計画に反映させてしていくんだ。農地面積や労力の範囲内で実行できるのか、実現可能かどうか、充分検討しないといけないよ。
したろう:計画を作るときのポイントは?
松本:農業経営を実際やってみると、自分が想い描いた展開と違う場面が生じたり、不測の事態にまきこまれることもある。余裕をもたせて無理のない計画=「実現可能な計画」を作ることがポイントだね!
特に、したろう君みたいに、あまり農業の知識や経験がなくて就農する場合は、実際に経営が成り立つまでに時間がかかると思う。
たとえば、熊本県農業経営指標は、優良農家レベルのデータだから、新規就農者の自分に置き換えるならば、10aあたりの収量などを割り引たり、労働時間を割り増して考えた方が、現実的な数字に近づくんだ。
それに、経営の柱となる品目を選ぶ際には、地域の振興作目、特産地として位置付けられている作目を選定すれば、技術が標準化されていたり、営農指導員、先輩農家からアドバイスを受けやすくなるなど、計画の実現性が高くなると思うよ。品目を選ぶ時は、知り合いの農家さんや最寄りの農業普及・振興課に相談してみて!
したろう:経営計画を作るとうまくいきそうな気がしますね!
松本:いやいや。経営計画は作成すれば終わりではないんだ。計画(Plan)を、実行(Do)し、検証(Check)、改善策立案(Action)、また計画(Planと、このサイクルを継続的に実行することで、経営力がアップしていくよ。
したろう:よし!自分なりの経営計画を作ってみるぞ!まずは経営の柱になる品目を考えないといけないな。

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