【Sun】

新規就農道~ビギナーズファーマーのいろは 第4回 摘果するのに収量が増加するのはなぜか?

ぼくは「就農したろう」。27歳。
今トマト農家で研修をしています。それぞれの花房にある果数を4つくらい摘み取る、「摘果」作業をしています。
研修先の農家さんに、「なぜ、せっかく育っているトマト摘果するのか?」と聞いてみたところ、「収量を上げるためだよ」との答えでした。
トマトの摘果を続けていくと、収量が少なくなりそうに思うのですが、なぜ「収量が増加する」のでしょうか?教えてください!

トマトの生育特性

村上:摘果するとどうして収量が増えるのかを理解するためには、トマトの生育特性を知っておく必要があります。前回話した、「生殖成長と栄養成長のバランス」のことも思い出してください。
したろう:トマト栽培のポイントでしたね。
村上:トマトの生育は、管理温度や養分吸収で若干異なりますが、葉が9枚程度展開したのち、最初の花がつき(第1花房)、その後は葉が3枚出ると花となります。すなわち、「葉―葉―葉―花」―「葉―葉―葉―花」の繰り返しになるんだ(図1左)。一つの「葉―葉―葉―花」の区切りを「一段」と数えるよ。
一段の流れを説明するよ。
トマトは、根から吸収したり、光合成により作られたりした養分が、十分に体内に溜まると、生殖のために花になる芽を作ります(このことを「花芽分化」という)。
(1)トマトの花芽分化は成長点(生長点)で起こるんだ。先端部に栄養が溜まってくると、葉や茎にはならず全て花芽となり、そこで葉や茎の分化を止めます(栄養成長→生殖成長)。
(2)その花芽がある程度発育すると、花芽の両脇に新しく別の成長点(生長点)が二つ生じる。このうち新しい葉芽とのあいだに生じた成長点(生長点)は旺盛に発育して、主茎となります(生殖成長→栄養成長)。
(3)先に分化した葉との間に生じた成長点(生長点)も、やや遅れて茎葉が分化して花房のすぐ下のわき芽となります(図2)。
このように、トマトは、成長点が花芽になり、2つの新芽を茎や葉に分化し、三葉ごとに花を咲かせる「葉―葉―葉―花」のリズムを続けながら成長していきます。

トマトのシーズンは長い

村上:トマトの花が開花して、果実が肥大していくと、茎や葉に蓄えられた養分は果実へ移動(転流)していくんだ。
トマトは果実への養分転流を優先させ、茎や葉に大きな負担をかける性質があるので、ある段で、花(実)への養分転流の負担が大きすぎると、次の段の葉や樹体が弱ってしまい、花がつきにくくなる、という循環になってしまうんだ。
したろう:前回も、着果することで株に負担がかかるという話がありましたね。花(実)と株のバランスが大事そうだ。
村上:そうです。茎や葉の成長から実をつけ肥大するまで、一回の流れで終わって しまう品目ならいいんだけど、トマトは収穫期間が長い品目だからね。
夏秋トマトは1シーズンでだいたい15段、冬春トマトはだいたい20段というけど、このことは「葉―葉―葉―花」のリズムを15~20回繰り返していくということ。
シーズンを通じて、継続して果実をとっていくためには、生殖成長と栄養成長がバランスよく進み、各段の花房にムラなく確実に着果させ、肥大させることが重要です。
したろう:目の前の収量を見るのではなく、次の段、その次の段とか、先の収量を見ていくということだね。

摘果すると収量が上がる理由

村上:摘果することで樹体の負担が減り、シーズンを通じて、各段の花房にムラなく、確実に着果・肥大させることができ、結果として収量増につながる、ということが質問の答えになると思います。

県央(熊本)農業普及・振興課では、トマトの摘果が収量アップに及ぼす影響を調査しています。低段果房で摘果を徹底すると、その後の着果が安定し、トータル収量は増収する。という結果をまとめているから参考にしてみて!

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