トルコギキョウは花の色や形のバリエーションが豊富で花持ちもよく、冠婚葬祭から家庭での普段使いまで幅広い用途で使われています。
本県では平坦地と準高冷地の栽培リレーで周年出荷されており、全国2位の出荷量を誇ります。
中でも天草地域では、温暖な気候を利用して一番花の年内出荷の後、切り戻し株を仕立てて二番花まで出荷する「二度切り栽培」を基幹作型として、多くの生産者が取り組んでいます。本作型では二番花の出荷を母の日を含む高需要期の5月に合わせることが重要となります。そこで、今回は必要な初期管理のポイントをご紹介します。
トルコギキョウの二度切り栽培の初期管理について
はじめに
品種の選定
通常の二度切り栽培では収穫期が高冷地の出荷と重なって単価の低い6月以降になりやすい傾向があります。そのため、計画的に年内(11月下旬~1月中旬)に出荷した中早生品種及び中生品種の株を用いて早期の出荷を目指します。
天草地域では①年内出荷での十分な草丈や花数の確保が可能②二番花の開花までの期間が短く、目標とする5月出荷が可能、という点から、「中輪系品種」を用いた二度切り栽培を推進しています。
年内出荷後の株整理
一番花の収穫後、切り戻し株で過剰に伸びた側枝の除去や株周辺の落ち葉等の残渣(ざんさ)を取り除きます(図1)。
その後、殺菌剤や殺虫剤(ヨトウムシ、アザミウマ類等防除)を散布し、株への手灌水(かんすい)を行います。
(注意:マルチ下の灌水チューブでの灌水や農薬の灌注処理は行いません)
フラワーネットを活用した蒸し込み処理植
株整理後、畝ごとのフラワーネットに透明ビニールをかけて、トンネル蒸し込みを行います(写真2)。蒸し込み処理によって株周辺の気温や湿度、地温を確保して、抽台と発根を促します。処理中の加温設定は8℃以上の方が早期出荷が見込まれます。
また、トンネル内の気温や地温の確保には日射量が影響するため、処理期間は年次差や地域差があり、開始時期によっても異なります。天草地域では表1のように2~3週間程度を目安に蒸し込み処理を行います。
蒸し込み処理開始が早すぎる場合や、寡日照が続いて、処理期間が長くなる場合は菌核病等の発生によって、欠株が多くなるので注意します。
処理開始が1月下旬以降となる場合は出荷時期が5月上旬には間に合いませんが、生育揃いや品質向上に有効です。開始時期が遅くなるほど、処理期間は短くします。
蒸し込み後の順化処理
株の生育に合わせて、フラワーネットを徐々に上げていきます。抽だい後に主茎が2~4節程度になったら、ビニールを夕方に剥がします。翌日から3日間程度はハウス内の温度が上昇した午前中に頭上灌水で急激な乾燥を防ぎ、順化(環境に慣れさせる処理)を行います(写真3)。
順化後の株整理と防除
順化が完了したら、曲がりが無く生育良好な芽を残して1芽/株にする株整理を行います(写真4)。株整理後は殺菌剤と殺虫剤(アザミウマ類、コナジラミ類防除)を散布します。なお、トルコギキョウ斑点病とアザミウマ類等の防除は定期的に行います。
その後のハウス内管理
頂花の発蕾または側枝発生まではハウス内を蒸し込み、その後は日中のハウス内最高温度30℃を目安に換気します。開花期は、換気設定温度25℃以下でハウス内湿度を下げて仕上げます。
加温は、外気最低温度が5℃以上になるまでは10℃設定とし、その後は15℃設定とすることで燃油消費量を抑えかつ早期出荷に繋がります。
さいごに
二度切り栽培はうまく作れば、種苗費を抑え、小面積で収量を上げることが可能となります。そのため、枝芽整理や病害虫防除の徹底等、植物の生育に応じた適期管理を実践して、高品質で需要期の安定出荷実現に努めましょう。
※なお、紹介した管理は天草地域での事例になります。時期や期間は地域の環境や特性によって異なりますのでご留意ください。
天草広域本部 農林水産部 農業普及・振興課
添付PDF:トルコギキョウの二度切り栽培の初期管理について
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