不知火の貯蔵管理について

共通事項

近年は気象変動(暖冬や干ばつ)による影響で貯蔵中の柑橘の腐敗やこはん症の増加が問題となっており、より一層の貯蔵管理の徹底が必要となっています。本年は気温が平年より高く、夏秋期の降雨が少なかったことから、果皮が弱くなっていることが予想されます。そのため今回紹介する貯蔵管理のポイントをしっかりと押さえ、より多くの健全果の出荷を目指しましょう。

予措の実施

柑橘では貯蔵前に、果皮からの蒸散抑制による貯蔵性向上を目的として、果皮を乾燥させる「予措」を行います。予措は2~3週間かけて、3~5%の減量歩合を目安に果皮表面をほどよく乾かします。急激な予措はこはん症を助長しますので、果実を定期的に点検しながら行いましょう。予措の程度は収穫までの天候や果皮の強さによって異なり、乾燥気味の天候では3%、雨が多く果皮水分が多そうなときは5%の減量歩合を目安に予措しましょう(図1)。
予措中にこはん症が確認された場合は直ちに貯蔵に移りましょう(こはん症発生が多くみられる場合はポリ個装やPプラスで個装)。

図1 予措の具体的な方法

貯蔵

貯蔵中は新聞紙や透湿性シートでコンテナを覆ったり、ポリ個装やPプラスによる個装によって果皮を乾燥させないようにしましょう。
不知火類に適した貯蔵条件は、庫内温度5~10℃(15℃以下)、湿度8590%となっています。庫内の温湿度変化に注意し、換気や打ち水などで調整をしましょう。

こはん症対策

こはん症(写真1)の発生は、夏秋期の高温・少雨による果皮の老化促進や、肥料不足による樹勢低下などが要因となっています。そのため、これからできる対策としては、以下のとおりです。

①収穫時
収穫時や運搬時は果実を丁寧に取り扱いましょう。果実への衝撃はこはん症の発生を助長するとされています。

②予措時
収穫時の果実条件に応じて、予措の程度を加減しましょう。特に樹上でこはん症が発生した園地では予措の程度は軽く、早めにポリ個装を行いましょう(写真2)。

③貯蔵時
果実を点検し、乾燥ぎみであれば貯蔵庫に水をまいたり、バケツに水を張って加湿に努めましょう。また、タイベックや新聞紙で果実を覆うことでも乾燥を防ぐことができます(写真2)。

写真1 こはん症発生果 
写真2 こはん症対策
左:ポリ個装 右:透湿性シート(コンテナを覆っている)

腐敗果(水腐れ症)対策

腐敗果は、収穫時についたキズや果皮の老化によってできた微小な亀裂から水を介して病原菌が侵入することで水腐れ症が発生し(写真3)、腐敗果に進行します。果皮が長期間湿っていると腐敗しやすくなりますので注意が必要です。

①収穫時
雨の日の収穫や果実が結露している状態での収穫はやめましょう。また、果実にキズを付けないことも重要で、ハサミキズをつけないよう丁寧に収穫しましょう。軸長果の混入にも注意が必要です。デコポン用の収穫ばさみで2度切りを行い、丁寧な収穫を心がけましょう。

②貯蔵時
貯蔵中に雨が多く湿気気味の場合は、外気温と庫内の温度差が少ない朝方に換気したり、腐敗果が発生したら速やかに除去しましょう。
腐敗果に気づかず放っておくと、無事だったはずの果実が共腐れによってダメになってしまいます。果実は定期的に点検し(2週間に1回)、腐敗果は早めに除去しましょう。

写真3 水腐れ症発生果

さいごに

不知火類は他の中晩柑に比べて果皮がデリケートなので、最後まで気を抜かずに貯蔵管理を行い、青果率・秀品率のアップを目指し所得向上につなげましょう!

引用元
1、写真3:熊本県果樹生産振興対策本部からの情報を引用
写真2:温暖化による温州ミカンの着花性と「不知火」こはん症発生の影響と対策技術(不知火こはん症対策マニュアル)農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門、熊本県農業研究センター果樹研究所・天草農業研究所 2020より引用

天草広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

不知火の貯蔵管理について(PDFファイル)