カンキツの着果対策のポイント~花と芽のバランスを取り、連年安定生産の実現~

はじめに

近年は、極端な気象変動により、カンキツ類の樹勢低下が懸念されます。連年安定生産のためには、開花期前後に新梢と花芽のバランスがとれていることが重要です。発芽後2週間もすれば粟粒大の花が確認できますので、それぞれの樹の着花状況に応じて適切な管理を行いましょう。

着花が多い樹の対策

写真1のように極端に着花が多く新梢がない樹は、次年度の結果母枝確保が必要です。新梢発生を促進させるため、次の管理を確実に行いましょう。

①予備枝の追加設定と摘蕾
開花前に予備枝を中心に摘蕾を行います。また、それでも新梢の数が十分でない時は、写真2を参考に予備枝を追加設定し、新梢の発生を促します。

写真1 着花が多い様子
写真2 予備枝の追加設定例

着花が少ない樹の対策

着花が少なく、裏年だと予想される時は、その後の生理落果を防止し、花に養分を分配するため、花付近の新梢管理を行う必要があります。

①芽かき・被さり枝の除去
写真3のように新梢との養分競合を防ぎ、生理落果を防止するために、果実周辺の新梢を芽かきします。特に、着花部位の被さり枝は除くようにし、花に光があたるようにします。

写真3 芽かき前後の状況(左:芽かき前、右:芽かき後)

②ジベレリン散布
開花始めから満開10日後までに着花部位にジベレリン25ppmを散布すると、生理落果が減少します(特に満開3~5日後の散布効果が高い)。
さらに、図1のように芽かきと組み合わせることにより着果率が向上します。

図1 「熊本EC11」における芽かき、GA処理が着果率に及ぼす影響(2016、2017.2018年の3カ年平均)

③緑化促進対策
新梢の緑化が早いと生理落果の軽減、樹勢強化、果実肥大促進につながります。硫安の施用や、尿素500倍に硫酸マグネシウム500倍を加えた葉面散布を数回散布しましょう。また、この時期が少雨の場合はかん水により肥料効果を高めましょう。

 

開花期以降着果量が多い樹の対策

着花が極端に多い際は、先述した方法で予備枝の追加作成を行いますが、予備枝作成や摘蕾は、適期が短いことから、作業が間に合わなかった際には、摘果剤を使用します。
摘果剤は、ターム水溶剤(商品名)とフィガロン乳剤(商品名)の2通りがあります(表1)。
両薬剤ともに、気温が高い日の散布が効果的です。なお、間引き摘果を目的に散布する場合には、ターム水溶剤は、過摘果となる恐れがあるため、フィガロン乳剤を使用します。また、極端に高温な日(30℃以上の高温下)の散布や樹勢低下樹への散布は避けます。なお、薬剤を使用する際は必ず登録内容を確認した上で散布してください。
また、7月からの摘果では、着果の多い樹は、旧葉主体であることから、初期肥大は順調ですが、後半で肥大が鈍くなり、浮皮が発生しやすくなる傾向があります。このため、着果が多い場合は、初期肥大が良く見えても、粗摘果・仕上げ摘果ともに基準より多めに摘果をすることが重要です。

おわりに

今回は、開花期前後の着果対策について述べましたが、昨年(令和3年)秋期の過乾燥により、樹勢が極端に低下している樹も多いかと思います。樹勢が低下している樹で、着果が多いと、これを起点とし、隔年結果を助長します。隔年結果改善の方法は、樹勢を維持する方法とも一致します。今年だけではなく、毎年安定生産を行っていくためにも、今回の対策に加えて、肥料やかん水等の基本管理を適切に行い、樹勢の維持を図りましょう。

県央広域本部 宇城地域振興局 農業普及・振興課

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